類似の判例14(過労運転事故)

◆京滋バイパス・タンクローリー事故で懲役4年6月

──事故前3か月の休日は、わずかに6日間!

 

 2006年2月、京都府宇治市の京滋バイパス上り線で、渋滞の列にタンクローリーが突っ込み、3人が死亡、6人が重軽傷を負った事故で、業務上過失致傷に問われた運転者に対して、京都地裁は2006年8月10日、懲役4年6か月(求刑同6年)の実刑判決を言い渡しました。

 

 判決理由の中で、「(同社では)2005年夏以降、運転者が次々に辞職する一方、冬季の繁忙期が例年以上の忙しさで過密勤務状態となり、眠気を紛らわせながらの勤務が常態化してい た」としながらも、「被告は運行管理者の資格もあり、運転手の中ではリーダー格。状況を是正すべく努めることも必要であった」と指摘しました。

 その上で、「事故前3カ月の休日が6日間だけで、1カ月の拘束時間は労使協定の限度を大幅に超え、最大約500時間に上った」と言及。「被告人のみに帰せるのは実情にそわない面がある」と述べ、勤務先の石油運送会社=法人と社長、運行管理者ら2人の責任にも言及しました。

 

──運送会社の社長にも懲役の実刑判決

 この事故に関しては、上記の運送会社社長(63)と当時の運輸課長(49)も、労働基準法違反と道交法違反(過労運転容認)の罪に問われました。その判決公判が、2006年11月15日に京都地裁で開かれ、裁判長は同社に罰金60万円(求刑通り)、社長に対して懲役1年2か月(同懲役1年4カ月)、運輸課長に対して懲役1年(執行猶予3年)を言い渡しました。

 判決理由で裁判長は、「運転者の過労を明確に認識しながら取引量を減らさず、利益だけを追求した会社の体質が事故の主な原因と言っても過言ではない」と指摘、会社側の責任を厳しく糾弾しています。

 

 判決によると、社長と運輸課長は「事故を起こした運転手に2005年12月~2006年1月の間、労使協定で定める 1か月130時間を38時間15分上回る時間外労働をさせ、また事故前日の2月12日、運転手が過労で正常な運転ができないことを知りながら、運転を認めた」としています。

 裁判長は、事故以前には近畿運輸局が勤務条件の改善を求めて警告していたことにも触れ、事故後は「居眠り運転を隠すよう」指示していたことが伺われ、社長は「とりわけ責任が重い」と述べました。

 

【参考──懲役の減刑と36協定違反の違法性について】

 ※その後、運送会社社長は量刑が重すぎると控訴、大阪高裁は平成19年9月12日、「被害者との示談、反省の態度」などを勘案し、量刑を懲役1年に減刑しましたが、「重大事故の原因をつくった経営責任者として、執行猶予を付するのは適当でない」と判決を言い渡しました。

※さらに、大阪高裁判決では、労働基準法は週単位の時間外労働を規制するものであって、月単位の時間外労働には直接の規制は設けられておらず、また、いわゆる36協定違反については罰則が設けられていないから、月130時間を超える労動を指示した部分については無罪(一部無罪)との判決文がありました。

 しかし、この上告審で最高裁は平成21年07月16日、「月130時間までの時間外労働を認める労使協定がある場合は、協定を超えた部分は違法になる」との新判断を示し、高裁判決の一部無罪部分を破棄しました。

 

(※最高裁判所ホームページ、最高裁判例集/事件番号 平成19(あ)1951[道路交通法違反,労働基準法違反被告事件]判決文を参照しました)

ブラジル人7人死亡 居眠運転事故
現場図は判決文を参考に作図

◆名神高速外国人7人死亡事故で、禁錮2年6月

──SASの影響ではなく「過労運転」としたが、事業所の責任にも言及


 名神高速道で2005年11月13日、ブラジル人7人が死亡した居眠運転による多重衝突事故で、業務上過失致死傷罪に問われた運転者(41)に対し、大津地裁は 2007年1月26日、禁錮3年(求刑禁錮4年)の判決を言い渡しました。この判決に対して運転者側は控訴しましたが、大阪高裁も禁錮2年6月の実刑判決(2007年7月12日)を言い渡しています。

 

 大型トラックがその前に発生した追突事故で停止中の車の群れにつっこみ、路肩に横転していたワゴン車などに次々と衝突したものです。

 運転者については医師より重症の睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断され、弁護側は「事故直前に、予兆なく眠るマイクロスリープ状態に陥り、事故を回避する責任はなかった」と無罪を主張しました。

 しかし、地裁判決では「睡眠に陥ったことにSASが影響した可能性は否定できない」としつつも、事故直前の6日間は休みがなく、車内で不規則な仮眠を取る生活が続いていたことを挙げ、居眠りの大きな原因は「極度の過労状態で運転したこと」としました。

  ただし、「運転者が過労状態に陥ったのは、勤務先の指示に従った結果によるものであって、この点は個人の責任というよりも会社の責任によるところが大きいなど、酌むべき事情も認められる」として、量刑を判断しています。

(※最高裁判所ホームページ、下級裁判所判例集/事件番号 平成17(わ)875[業務上過失致死傷]の判決文を参照しました)

 

──7日間の事業停止と243日車の使用停止処分

 なお、京都南労働基準監督署は2006年7月、事故を起こした運転者に違法な時間外勤務をさせていたとして、勤め先だった京都府宇治市の運送会社と同社の配車係長を労働基準法違反の疑いで書類送検しました。

 その後、国土交通省・近畿運輸局も運送会社に対し監査を実施、2007年2月に、貨物自動車運送事業法輸送安全規則違反に関わる行政処分として、7日間の事業停止と、以後81日間は営業用の大型トラック3台を使用停止にする処分を命じました。

 

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