上向きライトの重要性に気づかせよう

 暗くなったらライトをつけるのは当然のことですが、多くのドライバーがまだ下向きライトを基本に考えているためにライトの選択を誤り、夜間の歩行者事故が多発しています。
 走行用ライトの基本は上向きであり、下向きにするのはあくまですれ違い時などの臨時措置であることを管理者からもう一度徹底しておきましょう。

歩行者事故のほとんどは下向きライトの事故

 各地の警察では、下向きライトの照射距離が短いため死亡事故の危険が大きいと訴えています。
 たとえば富山県警察本部の調査では、県内の過去4年間の夜間歩行者死亡事故のうち、車のライトが下向き時に94%が発生し、そのうち74%は上向きにすることが可能な状況だったということです。


 また、茨城県警察本部における2011年1月~5月の調査でも、夜間の歩行者死亡事故の95%が「ライト下向き」であり、残りの5%は「ライト点灯なし」、上向きライトの死亡事故は1件もありませんでした。下向きライトの死亡事故のうち、ライトが上向きであれば事故が回避できた可能性のある事故が45%もありました。

夜間死亡事故のライト

ドライバーへの啓蒙が重要

ライトの照射距離

 警察ではこのような実態に気づき、すれ違い時など以外ではライトを上向き(走行用前照灯)に戻すよう、指導を行っていますが、ドライバーにはなかなか危機感が届いていないようです。


 対向車や後続車のライトが「眩しい」という実感があるため、ドライバーは対向車がいる場合等は相手への配慮から意識的に下向きに減光して走行します。

 しかし、すれ違い後も減光したまま、暗いところを走行してしまう傾向があるのではないでしょうか。

 対向車通過後に右側から横断してきた歩行者に衝突する事故例が多いので、特にすれ違い後はすぐに上向きに戻す癖をつけることが重要です。


 車同士の場合は下向きライトでも存在を確認できることがありますが、歩行者や自転車の発見は確実に遅れます。
 上向きライトへの切替えも意識的に行うよう、ドライバーに対して繰り返し指導しましょう。

下向きライトのままだと過失責任が重くなる

下向きライト

 夜間上向きライトで走行しなかったために、加害者としての賠償責任を認定され、多額の損害賠償の支払いを命じられた判例があります。
 
 平成13年3月、福岡県若宮町(現宮若市)の九州自動車道で酒気帯び運転の車(男性58歳)が脇見運転で追突事故を起こしましたが、追突された車に乗っていた母子2名が外に出たところに、3台目の後続車がライト下向きのまま高速で衝突し、この母子2名はともに生涯介護の重度後遺障害となりました。


 後続車の運転者(女性37歳)は業務上過失傷害罪で起訴されましたが、1、2審とも「街灯のない高速道路でライトの消えた事故車に気づくのは不可能だった」として過失を否定し、無罪が確定しました。


 しかし、被害者側が総額6億5,600万円を求めた民事訴訟では、裁判官は「暗い高速道路を走る際、制限速度を守って前照灯を上向きに走行していれば、事故を回避できた可能性がある」と指摘しました。

 ライト下向きでスピード超過をしていた過失責任を重く見て、酒気帯びの運転者との共同不法行為と認定され、連帯して3億4,100万円の損害賠償金の支払いを命じる判決が言い渡されました。

(福岡地裁 平成18年9月28日判決/判例時報1964号127p)。

 

※道路交通法第52条第2項──「灯火の制限」
 「自動車等が、夜間、他の車両等と行き違う場合または他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずるなど、灯火を操作しなければならない」

※1 "他の車両等の交通を妨げるおそれがあるとき" とは、眩惑が起こるような状況をさしてます。中央分離帯の立木などで光が遮られている場所や 前車との車間距離が十分にある場合は、減光の必要はありません。

※2 政令で定めるところにより……道路交通法施行令20条
  「他の車両等と行き違う場合等の燈火の操作」
第1号 走行用前照灯をつけ、すれ違い用前照灯または前部霧灯を備える自動車は、すれ違い用前照灯、前部霧灯のいずれかを点けて、走行用前照灯を消すこと。
第2号、第3号 これ以外の自動車は前照燈の光度を減じ、またはその照射方向を下向きとすること。

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