2014年

1月

15日

事故に結びつく健康リスクを意識しよう③──薬の服用忘れの危険

 交通事故の原因として運転中の発作や急激な体調変化によるものが増加しています。

 

 前回は薬の副作用による交通事故を取り上げましたが、今回は「飲み忘れ」など、病気の治療薬を正しく服用しなかったために自動車運転に影響を与える恐れについて考えます。

■薬を飲み忘れたため発作を起こし大事故が発生!

●抗てんかん薬を飲むのが遅れて意識喪失発作

 平成23年4月18日、てんかんの持病がある26歳の男性運転者が、栃木県鹿沼市でクレーン車を運転中、発作が原因で交通事故を起こしました。

 

 その日は前の晩に、てんかん発作を抑える薬を飲むのを忘れて、朝になってから薬を服用して運転を始めました。母親は息子の病気を知っていて薬を飲み遅れたのも知っていながら運転を止めませんでした。

 運転者は、仕事の現場に向かう途中で意識を喪失、クレーン車は斜行して対向車線側の歩道に乗り上げ、折り悪く朝の登校児童の列に突っ込んで小学4年から6年生の子ども6人が死亡する大事故となりました。

 

 運転者は、医師から再三運転を控えるように指導されていましたが、大型のクレーン車を運転する業務に携わっていました。

 この事故は社会的な大問題となり、事故の裁判は社会的な注目を集めたので、皆さんもよくご存知だと思います。

【裁判結果】──健康問題による事故でも大きな責任を負う

■自動車運転過失致死傷罪で懲役7年の実刑

 本人の刑事裁判では、薬の服用を怠ったことや過去にも事故を起こしていることを踏まえ、てんかん発作を予兆していたと認定し、「自動車運転過失致死傷罪」により懲役7年の実刑が確定しました。

(宇都宮地裁 平成23年年12月19日 判決)

 

■母親にも損害賠償命令(1億2,500万円)

 また、被害者の遺族より民事訴訟が起こされ、成人の交通事故には珍しく、母親の責任が問われました。

 判決では、「母親は、本人の病気や薬の飲み忘れの事実を知っていて重大事故を予見できた。会社に通報などすれば事故を回避できたのにしなかった責任がある」と認められ、本人や雇用主であった重機リース会社()と共同して、1億2,500万円の損害賠償を支払うよう命じられました。

 (宇都宮地裁 平成25年4月24日 判決)

 

※雇用主には、病気の事実を知らなくても民法715条の「使用者責任」が発生します。

■薬の服用ミスによるリスクを意識しよう

 鹿沼事故の運転者は、てんかんを申告せずに免許を取得していたので、免許の不正取得に当たります。過去の人身事故でも病気の事実を隠しており、本来、運転してはいけない人だったのです(※)

 しかし事例とは違って、運転免許を正当に取得している人でも、服薬を忘れることにより、疾病コントロールができない危険がないとは言えませんので、事故の教訓として意識してください。

 

 薬の服用を怠ることで、運転中に影響がでるおそれがある疾病としては、

 ・クモ膜下出血の術後のけいれん予防薬

 ・高血圧症の降圧剤

 ・脳梗塞の治療薬

 ・喘息の吸入治療薬

 ──など、いろいろなケースが考えられます。どんな病気でも、症状が悪化すれば運転に影響が出ると考えた方が得策です。

 

 また、アレルギー性結膜炎の点眼薬などは、点眼して眠気を起こす心配はほとんどありませんが、逆に点眼や携帯を忘れると、花粉症が発症した場合は運転に支障をきたすおそれもあります。長期出張時などは注意しましょう。

 

※不正な免許取得を防ぐため道路交通法の規定が改正され、免許更新時に一定の病気症状について申告が義務づけられ、違反者には罰則が適用されます。

※また、自動車運転死傷行為処罰法が公布され、一定の病気の症状が原因の事故にも、危険運転致死傷罪が適用されることになりました。

■一度に2回分飲むこと等も、場合によっては危険

 なお、薬は決められた容量を、決められた時間をあけて飲むように調剤されていますので、飲み忘れたからといって、慌てて空腹時に飲んだり、2回分を一度に飲んだりすると、重い副作用が現われる危険もあります。

 また、寝る前に飲むために投与された抗けいれん薬などを、覚醒しなければいけない時に飲んでしまうと眠気を起こす危険もあります。

 

 飲み忘れてしまったことを医師や薬剤師に相談してから運転する習慣をつけましょう。

 症状のコントロールができない恐れがあるときには、運転しないことが大切です。

【薬を飲む人のチェックポイント】

 病気の治療で薬を処方されている方は、以下のチェックポイントに当てはまることがないか、リスクのチェックをしておきましょう。

 また、運転中でなくても意識喪失などの発作を起こした経験のある人は、自動車等の運転をしてもよいか専門医に相談する必要があります。

 □ 決められた量の薬を忘れずに飲んでいるか

 □ 薬を飲み忘れて、めまいや失神などしたことはないか

 □ 薬が飲めないため、体調不良に陥っていないか

 □ 業務の都合で、決められた服薬ができないことはないか

 □ 深夜の業務を医師が知らないため、深夜用の薬の服用を

       指導されていないということはないか

 □ 泊り勤務で薬が足らなくなっても大丈夫なように、処方

   箋を持ち歩いているか

 

【事故防止策──運転前には心がけよう】

投薬を受けた人は

出張時など必要数を持ったか確認する


服薬を忘れたら

運転しても良いか、医師に確認する


服薬が遅れたら

薬の効用と運転可能なタイミングを聞く


服薬を忘れても

素人判断で一度に2倍飲むなどしない


【関連記事】

事故に結びつく健康リスクを意識しよう①──高血圧の危険

事故に結びつく健康リスクを意識しよう②──薬の副作用による危険

事故に結びつく健康リスクを意識しよう④──糖尿病の危険

事故に結びつく健康リスクを意識しよう⑤──SASの危険

事故に結びつく健康リスクを意識しよう⑥──健診を軽視する危険

事故に結びつく健康リスクを意識しよう⑦──睡眠の重要性

 

運転者の健康管理マニュアルを改訂(国土交通省)

 

(シンク出版(株) 平成26年1月15日更新)

■マンガでわかる──交通事故に結びつく健康リスク

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