2015年

6月

22日

日本交通心理学会第80回大会

  平成27年6月6日(土)~7日(日)にかけて、東京都の早稲田大学東伏見キャンパスにて日本交通心理学会第80回大会が開催されました。

 

 会期中は蓮花一己氏(帝塚山大学教授)による特別講演や、シンポジウム「交通心理学の今後の発展と事故防止への取り組み」のほか、2日間にわたり、30の研究発表が行われました。

 

今回は多彩な研究発表の中から

「交通弱者の歩行ニーズとドライバーへの要望」

を取り上げて紹介します。

日本交通心理学会とは…

 日本交通心理学会は1975年日本交通心理学研究会として創立しました。交通に関わる諸問題について心理学を中心とした研究を行うことにより、交通事故の抑止とよき交通環境の建設に寄与することを目的としています。学会の認定資格である交通心理士は、地域や企業の交通安全のリーダーとしての役割を担っており、今後ますますの活躍が期待されています。

【学会のWEBサイトへ】

◆交通弱者の歩行ニーズとドライバーへの要望

富山大学人間発達科学部の西館有沙准教授によって発表された「交通弱者の歩行ニーズとドライバーへの要望」の発表内容を紹介します。

 先行研究によって、全盲者の35%、弱視者の17%がケガを伴う交通事故にあった経験があることや、車いす使用者の86%が駐車車両を避けて車道を通行した経験があることが明らかになっている。

 

 また、歩道が整備されていたとしても、自動車の交通量が多く高齢者が危険を感じる道路は、高齢者の外出を狭めたり減らしたりする要因となりうるとされている。

 

 また、道路交通法を見てみると第71条2に、交通弱者がいた場合、ドライバーは「一時停止し、又は徐行して、その通行又は歩行を妨げないようにすること」と規定されている。

 

 しかしながら、目が見えない、耳が聞こえない、車いすを使用しているなど、それぞれの特性や状況によって、ドライバーに求める配慮は異なることが想定される。そこで、本研究では、交通弱者やその保護者がドライバーのどのような運転行動に危険を感じているか、どのような配慮を求めているのかを明らかにすることを目的とした。

 

 調査は、視覚障害者10名、車いす使用者10名、聴覚障害者5名、高齢者10名、ADHD衝動型傾向のある幼児の保護者5名と担当保育者5名を対象に面接を行い、「歩車道が分離されていない道を歩いている際に困ることは何か、ドライバーのどのような運転行動に危険を感じているか、事故に遭わないようにどんなことに気をつけているか、ドライバーにどう配慮して走行して欲しいか」などについて尋ねた。

 

 なお、本研究では走行している車両について扱っており、ドライバーの駐車行動については取り上げていない。

■「ドライバーに一時停止をして欲しくない」視覚障害者

 視覚障害者へのヒアリングでは、ドライバーに対し以下の様な要望があった。

  • 横を通るときに一時停止をしないで欲しい
  • 警笛を鳴らされると、驚いてしまい体の向きが変わるのでやめて欲しい
  • 道が屈曲している場合に、気付かずに車道に飛び出してしまうので、このような道では速度を落として欲しい

 視覚障害者の横を通るときに、一時停止をされると、車が右左折したいのか、バックしたいのか、配慮して止まってくれているのかがわからず混乱するので、やめて欲しいとの意見があった。

 

 また、危険と感じるドライバーの運転行動として、前方から来る車よりも背後から追い越される方が怖く、とくに自分が車に接触することはもちろん、白状(視覚障害者が歩行のために使用する白い杖)が巻き込まれて破損することにも恐怖を感じている。

 

 さらに、走行音の静かな車(ハイブリッド車など)の接近は、気が付きにくいために怖い思いをするとの回答もあった。

■「ドライバーに存在を気づいてもらいにくい」車いす使用者

 車いす使用者のヒアリングでは、以下のような場面で危険を感じている。

  • ドライバーに存在を気づいてもらいにくい
  • 夜間はライトに照らされるので、車の接近を感知できるが、昼間は自動車の接近に気づきにくい
  • 警笛を鳴らされると、驚く上に不快なのでやめて欲しい
  • 歩車道が分離している道路では、歩道に勾配がある場合があるので、車道側に転倒する可能性がある

 まず車いす使用者は、車いすの存在をドライバーに発見してもらいにくいと感じており、車いすの直前で急ブレーキで停止された経験のある人もいた。夜間はとくに発見され辛いので、反射材や蛍光塗料のついたアクセサリーを身につけるなどの対応をしている。

 

 ドライバーとしては、車いす使用者の早期発見に努め、万が一車いすが転倒してきても対応出来るだけの側方感覚を開けておく必要がある。

■交通弱者の特性に合わせた運転行動が必要

 聴覚障害者は、警笛を鳴らされても気づくことができないし、背後から来る車を察知して道の端に寄ったり、通りすぎるのを待ったりすることができない。

 

 また、高齢者は急な回避行動を取りにくいので、車が接近してくると危険を感じている。また、歩行補助車(シルバーカー)の車輪が道路の凸凹に引っ掛かりつまづきそうになったときに、後方から車が接近してきて怖い思いをしたとの回答もあった。

 

 さらに、ADHD衝動型傾向のある幼児は、母親が手を握っていても、それを振りほどいて走りだし、車道に飛び出すといったこともあるので、子供のそばを通過するときには、止まれるくらいの速度で通過してほしいとの要望があった。

 

 今回の研究では、視覚障害者が車の一時停止を望んでいないといった新しい気づきもあったが、常に徐行すればよいかと言えば、ADHD衝動型の子供の保護者などは、いつでも停車できるぐらいの速度での走行を望んでおり、それぞれの特性に合わせた丁寧な運転が求められると言える。

 

 今後は、ドライバーがどのようにして交通弱者の存在に気づくことができるかが課題である。

日本交通心理学会第80回大会データ 

 

・日時 平成27年6月6日(土)~7日(日)
・会場 早稲田大学東伏見キャンパス
・主催 日本交通心理学会
・共催 日本交通心理士会
・後援 一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会
・プログラム

<特別講演>

交通場面での高齢者の行動と教育

──蓮花一己(帝塚山大学教授)

<シンポジウム>
「交通心理学の今後の発展と事故防止への取り組み」
大谷亮(一般財団法人日本自動車研究所主任研究員)
岡村和子(科学警察研究所交通科学部交通科学第二研究室長)

島崎敢(防災科学技術研究所特別研究員)

中居宏(東海学院大学人間関係学部心理学科講師)
<研究発表>

・スポーツサイクル乗車時の姿勢と前方視野との関連性

・一時停止交差点の通過行動の自己評価バイアスー自転車と自動車の場合ー

・小学生の自転車運転行動に関する調査ー中高生との比較検討等ー

・自己概念の形成を促す自転車安全教育と生徒の学習過程の分析

・免許停止処分講習の効果(4)ー違反に関する意識の変化ー

・免許停止処分講習の効果(5)ー講習種ごとの違反に関する意識の比較ー

・免許停止処分講習の効果(6)ーパーソナリティ特性に関する検討ー

・最近の交通事故減少傾向についてーその心理学的解釈ー

・拡張現実提示による自動走行ストレス軽減の試み

・生理指標を用いた自動走行車の搭乗者のストレスに関する検討

・見通しの悪い経路における歩行者との衝突予測によるストレスを考慮した車椅子ロボット制御

・交通弱者の歩行ニーズとドライバーへの要望

・幼稚園年長児の共感性が交通場面における危険回避に及ぼす影響

・タブレット端末を用いた交通安全教育教材の開発

・交通安全の学習状況下における低学年児童の横断行動(2)ー見るべき方向の数が確認行動に及ぼす影響ー

・小学校高学年児のドライバー視点取得の実証的研究

・運転支援システムの支援内容とそれに対する一般の人のイメージの違い

・運転適性検査のためのドライビングシミュレータの試作(2)

・シミュレータ運転中の有効視野と歩行者検出時間の関係

・全方位映像と平面映像に対するタクシー乗務員の主観的な速度知覚の比較

・高齢者における運転回避の安全性への影響

・高齢者講習の効果的な方向性を探る~高齢ドライバーの認知機能と自己評価力~

・高齢免許所持者における運転適性検査の成績・警察庁方式K型を用いて

・高齢運転者の交通事故リスクー特にブレーキとアクセルの踏み間違い事故に関する考察ー

・車両外側位置及びタイヤの空間位置感覚の精度向上支援法の研究(2)訓練効果の一般化について

・バス運転者を対象とした安全教育の実施

・バス乗務員に対する感情コントロール教育の効果測定

・エコドライブに関する意識や行動について

・飲酒後の時間経過に伴う主観的酔いと生理的指標及び運転行動指標の変容~呼気及び尿中エタノール濃度と運転操作検査に着目して~

・飲酒後の時間経過に伴う主観的酔いと呼気中のエタノール濃度の測定~「酒気残り」運転のリスク実験を通して~

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