2015年

7月

01日

安全配慮義務について認識していますか

 

 全国安全週間(1日~7日)が始まりました。

 

 従業員の「安全」を守るための配慮をすることは企業の責任です。重要な事項ですのでこの時期にもう一度自社の姿勢を問い直しておきたいものです。

 

 以前も、企業の安全配慮義務違反について紹介したことがありますが、最近、従業員が交通事故被害にあった件で安全配慮義務を理由に企業に対して損害賠償を求めた裁判がありましたので、この事例や過去の判決例などをもとに考えてみましょう。

■整備不良車による事故を理由に、損害賠償請求

 さる平成23年7月、弁当製造販売会社(仙台市若林区)の従業員の運転するワゴン車が大型バスと正面衝突し、従業員が死亡しました。

 

 この事故をめぐって、衝突の直前にワゴン車のタイヤが破裂し、車体底部の金属部分が地面にこすっていたことから、死亡した従業員の両親は整備不良が原因で故障したとして、「会社が適正な車両を配備しなかった」と主張し、安全配慮を怠ったことを理由に約8,520万円の損害賠償を求める訴えを仙台地裁に起こしました(平成27年4月)。

 

 訴えによると、ワゴン車のタイヤは冬用のままで、亀裂が入っていた上、タイヤの片側が著しく減っており、溝もほとんど残っておらず、事故前1年間の走行距離は約3万7700キロと他の配送車の2~3倍で、総走行距離は約30万キロに達していました。


 会社側は、「事故は車両の欠陥とは関係ない」として争っています。

【安全配慮義務とは

 安全配慮義務とは、労働契約法第5条「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」がその主な根拠とされ、労働契約上の付随的義務として、使用者が従業員の安全を配慮する責任を負うことが判例で認められています。

 上記のような訴えでは、事故の発生に車などの整備不良との因果関係があると立証された場合、会社の責任が認められる可能性があります。

 タイヤがパンクする危険があるほど摩耗しているのを会社が放置していたのであれば、使用者には車を点検・整備する責任があるのですから、労働者の安全を守る配慮をしていなかったと解釈されるからです。

■過酷な長時間労働に対して「安全配慮義務違反」が成立

 このほか、最近は、貨物自動車運送事業など長距離運転・長時間労働の目立つ業種で、居眠りによる労働災害や過労死などに対して「安全配慮義務」違反が認められるケースが増えています。

●飲料配送会社 運転者

 過労死(自殺)例

 損害賠償額 6,000万円

 

 平成20年4月清涼飲料水配送会社に入社した従業員が、同年8月に自殺した(当時27歳)例では、翌年、労働基準監督署が労災認定したにもかかわらず会社側が責任を認めなかったため、平成23年9月、両親が大阪地裁に計約 8,200万円の損害賠償請求訴訟を提訴し、争いました。

 

 訴えでは、自殺前の7月は、猛暑の中での飲料運搬とトラックの運転という過酷な業務のなかで、残業時間が月104時間に達しました。同僚全員が疲労困憊する状態で新人への支援はなく、過労死に至ったとしています。

 

 係争の結果、平成25年に会社側が過労自殺と認めて謝罪し、解決金6,000万円を支払うことで和解しました。事実上、安全配慮義務違反を認めた形となっています。


●運送会社 運転者

 追突死亡事故例

 損害賠償額 約8,700万円

 平成19年1月、福島県の磐越自動車道でトラック運転者(当時27歳)が大型トラックに追突して死亡したのは過重労働が原因だとして、妻ら遺族が勤務先の運送会社に8,690万円の損害賠償を求めた訴訟で、仙台地裁は平成21年2月13日、請求通り全額の支払いを会社側に命じました。


 判決によると、死亡した運転者の1日の平均拘束時間は13時間を超え、1か月の時間外労働も140時間を超えていました。


 裁判長は、「配送中の事故死は雇用主が安全配慮義務を怠ったのが原因であり、重度の疲労のため注意力散漫、緊張低下に追い込まれたたために発生した」と結論づけました。


【平成21年2月13日 仙台地裁判決】

●物流会社 従業員

 過労+パワハラ自殺例

 損害賠償額 約7,000万円

 

 

 平成21年、宇都宮市の物流会社営業所で、男性社員(22歳)が配属半年後に適応障害を発症して自殺したのは、長時間労働と営業所長のパワーハラスメントが原因だとして宮城県の両親が提訴した裁判で、仙台高裁は平成26年6月27日一審判決を変更してパワハラがあったと認め、同社と営業所長に6,940万円の支払いを命じました(一審仙台地裁は会社の長時間労働責任のみを認定)。

 

 判決によると、男性社員は自殺5か月前から月100時間超の恒常的残業を行い肉体的・精神的負担を伴う業務に従事したことに加えて、所長が勤務時間を実際より短く申告するよう強要し、他の従業員の前で繰り返し「ばか野郎・辞めてしまえ」などと怒鳴りつけたと指摘。「新入社員にもかかわらず長時間労働を強いられ、執拗なパワハラを受けて自殺に至った」と認定しました。

 

 両親は、物流会社に対しては安全配慮義務違反と不法行為(パワハラ)、所長にも不法行為責任による損害賠償を求めていました。


一審【平成25年6月25日 仙台地裁判決】 二審【平成26年6月27日 仙台高裁判決】

■目立つ自動車運転従事者の長時間労働

 かつては「長時間残業が当たり前」という業界も、今は労働時間を削減することが求められています。

 長時間労働を放置していると、「ブラック企業」と認定され、過労死などの責任を厳しく問われることになります。

 

 厚生労働省による中小企業等の労働実態調査でも、とくに「自動車運転従事者」の時間外労働が突出していることは明らかであり、運送事業者や自動車運転業務の多い企業への警鐘をならしています。

 

 時間外労働が月60時間を超える労働者が存在する事業場の割合は、建設業が8.7%なのに対して自動車運転業務では42.2%に達し、さらに、月100時間を超える労働者のいる事業場の割合は、建設業が1.2%に対し自動車運転業務は9.8%となっています。

 

 このような実態を踏まえて。国土交通省と厚生労働省は共同で、平成27年9月よりトラック運送事業における長時間労働の実態調査に乗り出し、今後の削減策を探る方針です。

 事業所でも、こうした社会の流れを真剣に受け止めて、働く人の安全に配慮するため努力する必要があります。 

■安全配慮の方針

★ 運転者の環境のなかに、不安全な状態を放置しないように配慮する
★ 運転者自身が不安全な行動をしないように管理・指導する
★ 運転者の健康を阻害する要因を取り除くよう配慮する(アスベストなど)
★ 業務量や乗務時間を調整して、過度の負担にならないよう注意する
★ 過度の心理的負担・精神的重圧を負わせることのないよう配慮する

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