2016年

2月

01日

確実ですか? 朝礼・点呼・健康観察

軽井沢スキーバス転落事故

 さる2016年1月15日、長野県軽井沢町でスキーバスが国道バイパスから転落し、15人が死亡、26人が重軽傷を負うという悲惨な事故が発生しました。 

 死亡者の多くが20歳前後の若者であり、遺族の悲しみは深く、非常に痛ましい事態となりました。

 自動車の運行を管理する立場の皆さんは、この事故を他山の石として、背因として指摘されている点などを参考に、自社の安全運転管理や運行の管理に問題点がないか、今一度、チェックしてください。

■点呼・朝礼を確実に実施する

運転者の点呼

 事故の報道で目立ったのは、事故を起こした貸切バス会社で「点呼の未実施」などがあり、運行管理の基本が守られていなかったことです。


 事業用自動車における点呼は法的な義務ですが、自家用自動車の事業所でも、安全管理上は朝礼やグループミーティングなどの機会に、出発前の運転者とコミュニケーションを深めることが極めて重要です。

 点呼や朝礼をしないということは、その日の運転で注意してほしいことがあっても、伝える手段がないということです。また、運転者の体調や健康状態をチェックし、日常点検整備の結果などを聞く機会が失われます。


 厳冬期のように道路状況や気象状況の変化が激しいときは、とくに出発時の指示が重要であり、迂回路などを知らせるときも地図を見せて具体的に指導する必要が生じます。

■経路の確認を徹底する

点呼時に経路を確認

 この事故では、運転者が高速道路から坂の多い一般道路に降りるなど予定にないルートを走行していたことも、事故の一因ではないかと指摘されています。


 旅行会社の配布した経路図どおりに走行していれば転落事故は発生しなかった可能性があり、経路の選択は非常に重要であることがわかります。点呼や朝礼でその日の経路を確認することで、運転者が勝手にルート変更をする危険が防げます。


 また、ミーティングの機会に経路を話題にすることで、他の運転者から「道路の工事」や「道路改変による混雑・危険の発生」などの情報を得ることがあります。

 

 こうした情報を活かして混雑による遅延の可能性を指摘したり、事前に安全な経路への迂回を検討することなどができます。

経路を明記した運行指示書でなければ法的要件を満たさない

 なお、貸切バスなどの場合、運行管理者が走行経路を明記した運行指示書を作成して運転者に指示することが法律で定められていますが、事故のバス会社では旅行会社の行程表だけで法的要件を満たす運行指示書を作成しておらず、この点でも管理のミスが指摘されています。

■運転者の技能に応じた指示をする

点呼時の個別指導

 転落事故の原因の一つとして、運転者がアップダウンやカーブの多い山道における大型自動車の運転操作に習熟していなかったのではないかという疑問点も指摘されています。


 その正否はともかく、経験の浅い運転者には山道などの通行を避け、なるべく平坦な道を走行させることが管理者の役割です。

 点呼・朝礼の機会があれば、その日の天候・道路状況と運転者の技量などを勘案して、「今日は路面状況が悪い。君はあの峠は慣れていないので、少し時間がかかってもよいから、平坦な国道◯号で行きなさい」など的確な指示をすることができます。

■運転者1人ひとりの健康チェックが安全管理の基本

運転者の健康管理

 バス転落事故では、事業者が運転者の健康診断を実施していなかった問題点も指摘されています。


 バス運転者の健康状態が事故に関係していたかは不明ですが、健康診断などの情報がないと、管理者は点呼をしていても運転者への的確な健康指導ができません。


 最近、運転者の健康リスクによる交通事故が多発しています。健康起因の事故は運転操作に大きな影響が生じて大惨事につながる恐れが大きく、安全管理の基本的義務として、事業者の責任が厳しく問われます。

 

【こんな事故も起こっています】

●健康診断の結果を軽視し、「狭心症」発作から

 観光バスの追突事故が発生
 平成26年9月26日16時5分頃、貸切バスが乗客13名と添乗員1名を乗せて神奈川県平塚市の国道を走行中、車両故障により停止していた高所作業車に追突し、運転者(56歳)と添乗員の2名が重傷を負い、14名が軽傷を負う事故が発生しました。

 国土交通省事故調査委員会の分析により、運転者が運転中に冠攣縮性(かんれんしゅくせい)狭心症の発作を起こし、左胸の苦しさから前屈みとなって前方から目を離し、その後視線を上げたところ停止していた作業車両が目前に迫っていて、急ブレーキを踏んだものの間に合わず追突したものと判明しました。


●精密検査・治療を受けず、「点呼」も未実施
 この運転者は事故の2か月ほど前から起床時、左胸が苦しく締め付けられる感じが続いたことが2回ありましたが、病院へ行くほどではないと思い会社にも報告していませんでした。さらに8月の健康診断で心電図に異常があり「要精密検査」と診断されていたにもかかわらず、再検査や治療を受けていなかったことがわかりました。
 
 貸切バス会社は、健診結果を知りながら精密検査と運転乗務の可否に関する医師からの意見聴取を先延ばしにして、運転者に乗務を続けさせていました。
 
 また、乗務前の点呼を実施しておらず、体調が悪化するおそれの有無についても把握できていませんでした。事故調査委員会は「これらの点が今回の運転中の発症と事故につながった可能性が考えられる」として「運行管理が適切に実施されていなかった」と指摘しています。

  ※上記の事故は特別重要調査対象事故として、平成27年11月11日に国土交通省から

   「事業用自動車事故調査報告書」 が公表されています。

 

●祇園7人死亡事故の勤め先会社が自己破産

 自家用自動車の事業所の事故例ですが、平成24年に京都・祇園で運転者の持病発作により暴走事故が発生して、7人が死亡・12人が負傷しました。勤め先の藍染め販売会社社長の管理責任が問われ、業務上過失致死傷容疑で書類送検(※)されたことなどから、信用が大きく後退して業績が低迷、この会社は2016年に自己破産に追い込まれました(※送検後不起訴処分に)。

 まさに「健康起因事故の社会的責任」による倒産といえます。

 祇園事故の運転者の疾病は、通常の健康診断ではチェックできない脳神経系の病気でしたが、運転者と事業者が健康問題について真摯に情報交換をしていれば、事故を防ぐことができたかもしれません。いずれにせよ、運転に従事する従業員と健康問題を話し合う環境をつくることの大切さを示唆した事例です。

■健康管理については、専門家に相談しましょう


運転者の健康管理を支援する組織・団体
 
 

 運転者などが健康診断で「不整脈」などの異常所見診断を受けた場合は、産業医に相談しましょう。また、従業員が50人未満で産業医を選任していない事業所は「地域産業保健センター」を利用できます(厚生労働省が所管)。


 同センターでは、医師等が原則として無料で異常所見に関する健康相談や個別訪問による面接指導サービスに応じています。

( ※ 最寄りの地域産業保健センターを探すには、各都道府県「産業保健総合支援センター」に問い合わせてください)

 このほか、最近、主に自動車運送事業者を対象に運転者の健康管理を援助する団体なども発足し、セミナーや支援活動を展開しています。

 上記の地域産業保健センターと違って有料のサービスですが、こうした団体に相談してみるのも一つの対策になるのではないでしょうか。


 →  安全運行サポート協議会(事務局:公益財団法人 労働科学研究所)
 →  一般社団法人 運転従事者脳MRI健診支援機構
 →  一般社団法人 健康マネジメント協会
 →  特定非営利活動法人 ヘルスケアネットワーク

【関連記事】

 ■ バスドライバーの健康管理をテーマに講習会を開催 (2016年3月18日)

 貸切バスの安全確保の徹底について国土交通省が通達 (2016年1月16日)

 ■ 健康管理を徹底していますか?           (2015年10月1日)

 ■ 運転者の健康管理マニュアルを改訂      (国土交通省─2014年4月)

■朝礼や点呼時に使える「運行管理者のためのドライバー教育ツール」のご案内

安全運転指導資料

ワンー・ツー・スリーで意識づける
 朝礼・点呼時には、安全運転に役立つ情報を与えることが必要ですが、口頭で注意されてもドライバーの印象には残りにくいのが実情です。

 点呼簿などに教育内容をメモして口頭で説明する管理者が多いと思いますが、それだけではインパクトに欠け、ドライバーの意識にも残りません。

 シンク出版発行の「運行管理者のためのドライバー教育ツール」(貨物自動車運送事業者向け)は、イラストやキーワードを中心にした教育教材です。

点呼時の安全運転指導

 ドライバーに「ワンー・ツー・スリー」のわかりやすいキーワードで印象づけて、安全運転ポイントを印象づける内容です。

 

 「これなら、短時間で効果的な指導ができる」と現場の管理者にも好評です。

 

【詳しくはこちら】

 


■今日の安全スローガン──

交通安全スローガン

■今日の朝礼話題──

12月9日(金

■サイト内検索──

運行管理者 ドライバー教育ツール 指導・監督の指針に沿った安全教育に最適
SSD研究所 交通安全 事故防止 安全運転管理 運行管理
安全運転管理.COM 交通安全 事故防止 安全運転管理 運行管理 教育資料 ドライバー教育 運転管理
物流技術研究会 トラック 研修
事故防止 メルマガ 交通安全 メールマガジン 安全運転管理 運行管理 飲酒運転 飲酒習慣 教育

当WEBサイトのコンテンツの利用、転載、引用については「当サイトのご利用について」をご覧ください。