2016年

7月

15日

インターネット上で会社に対する誹謗中傷を受けています

弊社は運送会社ですが、インターネット上で弊社がブラック企業であるといった内容の書き込みがなされ、ドライバーの確保に支障をきたしています。

しかしながら、誰が書き込みをしているかもわからないため(退職したドライバーの誰かだと思うのですが…)、対応に苦慮しています。このようなネット上の誹謗中傷に対して会社が取れる対策を教えて下さい。

■回答(清水伸賢弁護士──WILL法律事務所)

◆会社に対するインターネット上の誹謗中傷

 今日では誰もがインターネットを通じて、情報の迅速かつ自由なやり取りが行えるようになりました。どのような内容を発信するかという点は、表現の自由が保障されるべき部分でもあって、基本的に規制はなく利用者に任されています。

 

 インターネットはこのように大変便利なツールですが、特定の対象を誹謗中傷する内容などがインターネット上に現れることで、それが広がることにより、具体的な損害が生じることもあります。

 

 特定の会社に対するインターネット上の誹謗中傷は、その内容や程度にもよりますが、刑事事件の対象となることもあり、名誉毀損罪(外部的名誉を害する)、信用毀損罪(経済的信用を害する)、業務妨害罪(会社の業務を妨害する)などを構成する可能性があります。また内容や方法によっては、金融商品取引法第158条で禁じられている「風説の流布」として罰則が適用される可能性も考えられます。

 

 また、会社の名誉が毀損されたり、具体的な損害が生じたような場合には、民事的な手続により損害賠償請求を求めたりすることが考えられます。ただし、損害額の算定をどのようにすべきかについては検討が必要です。

 

 なお、特に掲示板等への書き込みなどは匿名で行われることも多いため、損害賠償請求などをする場合には、まず記載した者の身元を明らかにするための対応をしなければなりません。そのため、通常の場合に比べて一定の手間がかかります。なお、匿名掲示板であっても、通常の場合は、しかるべき手続を行えば記載した者は明らかになります。

◆プロバイダ責任制限法

 会社を誹謗中傷する文章が載せられたとしても、一方で表現の自由や個人情報保護の観点からは、インターネット接続事業者やサイト運営者は、記載した者本人の了承なくその文章を削除したり、文章を書いた者の発信者情報を明らかにしたりすることができないのではないか、削除等すると逆に記載した者から損害賠償等がされるのではないかとも考えられます。

 

 ただ一方で、明らかに不当な誹謗中傷を放置することもできないでしょう。

 

 この点については、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(いわゆるプロバイダ責任制限法)という法律が、2005年に施行されました。同法では、同法に定める一定の要件を満たし、所定の手続を経た場合には、プロバイダは削除要請に応じ、あるいは記載した者の発信者情報を開示しても責任を問われないとされています。

 

 なお、同法にいうプロバイダは、インターネット接続事業者だけではなく、掲示板などのサイトの運営者も含むとされています。同法では、基本的にプロバイダは損害を受けた者に対しての責任を負わないとされますが、

  1. 権利侵害を知っていたとき
  2. 権利侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき

には、権利侵害を受けた者に対する損害賠償責任を負うとされています(第3条1項)。

 

 また、情報送信防止措置(いわゆる削除)をした場合には、基本的には記載者に対して賠償責任が生じますが、

  1. 権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき
  2. 権利侵害を受けた者から、権利侵害の情報、理由等を示して送信防止措置をするよう申出があった場合

には、プロバイダが記載者に対して送信防止措置に同意するかどうかを照会し、7日経過しても記載者から同意しないとの申出がなかった場合には、削除をしても、記載者に対する損害賠償責任が生じないとされています(第3条2項)。

 

 発信者情報については、権利を侵害された者からの請求で、

  1. 権利侵害が明らかである
  2. 損害賠償請求権の行使のために必要である場合 

など、正当な理由がある場合に開示請求ができるとされています(第4条1項)。

◆会社に対する誹謗中傷に対する具体的措置

 では会社が誹謗中傷された場合、会社としては具体的にどのような措置を採れるでしょうか。

 

 各種のソーシャルネットワークサービスやブログ、掲示板等、それぞれの種類によって、それぞれ採るべき対応が異なる場合もありますが、ここでは主に比較的匿名性が高い(一見しただけでは誰が記載したか分からない)掲示板に誹謗中傷の記載をされた場合を念頭に、会社として具体的に採りうる措置を検討します。

1・誹謗中傷記事を削除するための措置

 まずは単純に、会社からサイトの運営者に対し、誹謗中傷の記事を削除するよう(送信防止措置を)求めることが考えられます。実際にも、削除要請についての手続や方法を定めているサイトは多いです。

 

 ただし、削除はプロバイダの判断によりますし、また記載者が同意しなければ削除されませんので、申し入れをすれば必ず削除されるわけではありません。

 

 その場合は、プロバイダに対して記載者の情報を求め、記載者を特定し、記載者に対して削除自体を求めて仮処分や訴訟提起を行うことになります。また、プロバイダ自体に直接削除等を求める仮処分や訴訟を行うこともあります。


 なお、削除要請と同時に刑事告訴等をしていることを伝えた場合、後日証拠とされる可能性があることから、あえて削除はしないという方針を採るプロバイダもあるようです。

2・損害賠償請求を行うための措置

 誹謗中傷によって、会社が損害を被った場合には、その損害を賠償するように請求することになります。

 

 記載者に対して損害賠償請求を行うためには、まず相手が誰かを特定しなければなりません。記載者が誰であるかを特定出来れば、通常の損害賠償請求と同様、会社が被った損害を請求し、応じなければ訴訟を提起するという方法を採ることになります。

 

 記載者の特定には、まず掲示板の運営者に対して発信者情報(IPアドレス)の開示を求めます。開示に応じない場合は、運営者に対して開示を求める仮処分や訴訟を検討することになります。

 

 IPアドレスから、それを管理する電気通信事業者等を特定し、同事業者等から記載者の発信者情報(特に氏名又は名称、住所等)の開示を請求します。開示に応じない場合には、同様に同事業者等に対して開示を求める仮処分や訴訟を検討することになります。

 

 そして、誹謗中傷の記載者が特定されれば、同人に対して損害賠償請求を行っていくことになります。

 

 なお、プロバイダが、記載による権利侵害が明らかであり、それを知っているにもかかわらず、会社からの要請を受けても削除もせず、発信者情報を開示しない対応を採るような場合は、会社は同プロバイダに対して損害賠償請求をすることも考えられます。

3・刑事処罰を求めるための措置

 誹謗中傷の記載自体が、名誉毀損や信用毀損等の犯罪を構成するような場合には、警察に対して相談し、刑事告訴を行うという方法もあります。ただし実際には、誹謗中傷が明らかに犯罪を構成する程度に至っていないような場合が多く、そのような場合には警察も簡単には動きません。

 

 ただ、警察が実際に動くような場合には、記載者の特定等は全て警察が捜査してくれることにはなります。なお、名誉毀損の場合は、公共性、公益目的、真実性が認められるような場合には、刑事処罰はされず、民事上の損害賠償についても認められない場合があります。

4・その他の対応

 以上、会社に対する誹謗中傷の対応について述べましたが、記載されている内容が、単なる誹謗中傷に止まらず、客観的にはもっともな内容であることもあります。

 

 いわれのない誹謗中傷であれば、断固たる対応を取るべきですが、様々な情報が氾濫するインターネット上では、例えば会社側が改善しなければいけないような一消費者のクレームが記載されることも考えられますし、質問のような場合も、会社が実際に労働基準法を遵守していないというような場合もあります。

 

 もちろんそのような場合でも、名誉毀損等に当たるような内容であれば、削除や損害賠償を求めることはできます。

 

 しかし、削除や損害賠償ではなく、同記載を契機とし、会社として具体的に勤務体制等、従前までの違法・不当な点を修正し、修正したことを例えば自社のホームページ等でアピールするというような対応も考えられるかもしれません。

◆終わりに

 いわれのない誹謗中傷には断固たる措置が必要な場合もありますが、会社としては、批判に正当な理由があるようなことを載せられないよう、業務体制等を確認しておくことが必要です。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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