2012年

11月

15日

交通事故の判例ファイル21(ひき逃げ事故)

 ひき逃げは特殊な事故であり、自分とは無縁と考えるドライバーが多いと思われますが、日常的に発生しています。


 平成23年中のひき逃げ事件は1,651件発生し、一日平均4.5件起こっている計算になります(このうち軽傷ひき逃げが1,572件と全体の95%を占める)。

 無免許運転や飲酒運転の発覚を恐れて逃げるケースもありますが、自分が人をはねたという自覚が少ないまま「ひき逃げ」として検挙されるケースもあります。
 今回は、最近言い渡されたひき逃げ事故の判決をいくつか紹介しましょう。 

■死亡「ひき逃げ」で懲役9年

埼玉県和光市/女子大生死亡事故(さいたま地裁 2012年11月8日判決)

和光市信号無視ひき逃げ事故

 これは、悪質なひき逃げ事件の判決です。


 2011年12月和光市で自転車の女子大学生が乗用車にはねられ死亡した事故により危険運転致死罪と道交法違反(ひき逃げ)に問われた被告(22)の裁判員裁判の判決公判が、11月8日さいたま地裁で開かれ、懲役9年(求刑・懲役12年)の刑が言い渡されました。


 判決によると、被告は赤信号を無視して交差点に進入、右から自転車で横断していた同市の女子大生(20)をはねて死亡させ、救護や警察への通報をしないで逃走しました。


 被告側は赤信号を「意図的に無視したのではない」と主張し、危険運転致死罪を免れようとしましたが、裁判長は「赤信号を認識しながら無視したか、信号を意に介さないで進行したかのいずれか。被害者の死亡は、被告の赤信号無視で生じた」と指摘し、「逮捕を免れるために逃走し続け、ひき逃げの中でも悪質。ルールを守り、他人に迷惑を掛けてはならないとの意識がない」と述べたました。


 信号無視だけでなく、ひき逃げが量刑に大きな影響を与えている判決です。

■軽傷のひき逃げ事故でも有罪判決

栃木県宇都宮市/元医大教授衝突事故(宇都宮地裁 2012年10月17日判決)

宇都宮市医大教授ひき逃げ事故

 執行猶予がつきましたが、軽傷で懲役1年という厳しい判決です。
 2012年6月、宇都宮市の県道で酒気帯び運転のため対向乗用車に衝突した元医大外科教授の医師(50)が、自動車運転過失傷害と道交法違反(ひき逃げ、酒気帯び運転)の罪に問われた判決公判が10月17日、宇都宮地裁でありました。

 裁判官は「動機に酌むべき理由はないが、大学を退職処分になるなど社会的制裁を受けている」と懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)の判決を言い渡しました。

 

 元医大教授は、衝突のため対向車に乗っていた美容師女性(29)の首に約2週間のけがを負わせました。軽傷のためおそらく罰金刑ですむ事故ですが、酒気帯びの発覚を恐れて逃走したため、大きな制裁を受けることになったのです。

■「ひき逃げの自覚はない」と主張したが実刑判決

滋賀県大津市/高齢歩行者ひき逃げ事故(大阪高裁 2011年07月19日判決)

草津市高齢者ひき逃げ事故

 本人は「ひき逃げ」の自覚を否定し、一審では無罪となったものの、控訴審で実刑有罪判決を受けた例です。

 

 2009年11月6日夕方に滋賀県草津市内で高齢歩行者2人が死傷し、車がそのまま逃走する事故が発生しました。運転者の女性は、すぐ逮捕されましたが、「前をよく見ていなかった。人に当たったという認識が無い」と強く主張し続けたため、自動車運転過失致死傷罪のみで起訴され、ひき逃げについては不起訴処分でした。


 しかし、「ひき逃げでの不起訴は不当」と考えた遺族は検察審査会に申立てを行い、検察が再捜査を進めて「ひき逃げが構成される」と判断、自動車運転過失致死傷とは別に道交法違反(ひき逃げ)の罪でも公判が行われました。

 

 ひき逃げ公判の一審(大津地裁)では、「衝突後に被害者は道路脇の側溝に落ちており、現場にブレーキ痕が無く被告が被害者を認識していたとは言えない」として無罪としていました。

 ところが、控訴審では(大阪高裁)、「2回の衝突でクルマは前のめりになり、フロントガラスもくもの巣状に大きく割れ大きく破損した」と指摘し、「こうした状況から、被告も何か大きなものに衝突したことは理解していた」と認定しました。
 裁判長は「未必的とはいえ、人をはねた後に逃走したことは悪質」として、一審の大津地裁判決を破棄し被告に対して懲役6か月の実刑判決を言い渡しています。

 

事故例・判決例が示唆すること
●「おかしい」と思ったら必ず止まって確認する
 たとえ、人をひいたという確信がなくても、「何かに当たった」と感じたら、絶対にその場から去らないで、車を止めて確認しましょう。すぐ止まることによって、引きずりなど重大事故につながる事態も防止できます。
 判例にも見る通り、ひき逃げの自覚はなかったと主張しても、受け入れられるかどうかは状況によります。事故現場から立ち去るのは厳に慎みましょう。

●「怖くなって逃げる」心理を抑えよう
 酒気帯び運転をしていたり、社会的地位があり「職場や世間に事故がばれるのが怖い」という心理が「ひき逃げ」につながります。
 多くの交通事故は過失で起こっており、過失事故に対して不当に高い刑罰が科せられることはありませんので怖がらないことです。被害者への救護義務を果たさないことは過失ではなく、人の道に外れた犯罪であることを自覚しましょう。

●「ひき逃げ=負傷者救護義務違反(道路交通法第72条の違反)
 罰則────5年以下の懲役又は100万円以下の罰金
        ※自動車運転過失致死傷罪などとは、両者いずれかの
         重い方の罪との併合罪となる
 違反点数──35点(即免許取消し/前歴0回でも欠格期間最低3年)

(シンク出版 2012.11.15更新)

交通事故の判例ファイル

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