2016年

11月

10日

医学と工学からみた高齢者、プロ運転者の安全運転対策

■日本交通医学工学研究会学術総会(2016.9.22)

 さる平成28年9月22日(木)、名古屋市の名古屋大学・野依記念学術交流館において、第25回の日本交通医学工学研究会 学術総会が開催されました。

 今回は「2025年の社会と車」をメインテーマに取り上げ、プログラムAでは「超高齢化社会と車」、プログラムBでは「職業運転者の健康管理と支援」を題材として、交通工学の研究者、医学者、交通安全に関わる実務担当者など、約180名が参加し、講演に熱心に耳を傾けるとともに、パネルディスカッション等でも活発な意見の交換を行いました。

 

 学術総会として専門性の高い講演会でしたが、健康起因事故や高齢化が進む職業運転者の問題点にも焦点があたり、トラック・バス・タクシーなどの自動車運送事業者はもちろん、安全運転管理者などにとっても、非常に参考になる知見や研究成果が報告されました。

 

 以下、今回の学術総会の概要をご紹介します。 

日本交通医学工学研究会とは…

 日本交通医学工学研究会は平成4年(1992年)に創設された学際的な研究組織です。このたび創立25周年を迎えられました。交通災害の原因としての人的条件(疲労、居眠り、高齢、疾病、飲酒、交通マナーなど)を主として医学の面から、また環境条件(車、道路など)を主として工学の面から検討することにより、人と車が有機的に一体化して、相互補完的にコントロールされるようなシステム作りの達成を志向しています。例年、夏から秋にかけて名古屋市内で学術総会を開催しています。

【同研究会のWEBサイトへ】

◆「高齢運転者の特性」と「職業運転者の健康問題」

 今総会も午前・午後で2つのシンポジウムに分かれて行われました。

 シンポジウムに先立ち、25回学術総会会長を務める、橋本正一氏(豊田合成株式会社専務執行役員)が開会の挨拶を行いました。

 

 我が国は2025年には65歳以上の高齢化率が30%という超高齢社会に突入します。

 2015年に国内交通死亡事故が15年ぶりに増加した原因は高齢者の死亡事故の増加にあると言われています。高齢者が安全・安心に車を運転できるための取り組みは、喫緊の課題と言えます。

 

 工学的な側面からは運転者を援助する機能を搭載した車の普及が進み自動運転の実用化も予測されています。医学面からは高齢者の健康管理が進み、現役年齢が進んで元気に活躍できる取り組みが進むと期待されています。

 そこで、本学会では「2025年の社会と車」をメインテーマに取り上げ、高齢者の社会活動・行動特性の研究成果、加齢から来る運転の問題点についてご講演いただくとともに、高齢化が進むと予想される職業運転者の安全運転を支援する取り組みなどについても、医学・工学の両面からご講演をいただきます。

 また、特別講演では加齢に伴う課題として「サルコペニアの成因と予防」についてご講演いただきます。

 

 ご参加の皆様には活発な情報交換を頂き、豊かで元気な高齢社会の実現を目指した有意義な学術総会となることを願っています。

 

■シンポジウムA──超高齢社会と車

 午前のシンポジウムAは「超高齢社会と車」と題して、3人の講師が高齢者の社会活動や運転行動の特性について、また加齢が及ぼす運転上の安全問題などについて解説しました。

 運転特性データや臨床的な知見から、高齢者の認知機能を把握することで安全運転を支援するために何ができるかという面での議論も行われました。

 

1 「活き活き高齢者のための運転特性研究」

  金森 等(名古屋大学 未来社会創造機構 特任教授)

 

2 「高齢ドライバ運転特性とビッグデータ解析」

  小栗 宏次(愛知県立大学 情報科学部 教授)

 

3 「高齢者医療と運転の諸問題  ~認知機能と運転に着目する~ 

  岩本 邦弘 (名古屋大学大学院 医学系研究科 発達老年精神医学分野 講師)

 

■特別講演──「サルコペニアの成因と予防」

 植木 浩二郎 (国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター センター長)

 お昼休憩の後に、著名な糖尿病研究者であり臨床経験も厚い植木浩二郎氏が、「サルコペニアの成因と予防」と題して「特別講演」を行いました。

 

 生活習慣病の病態基盤として最近注目されているサルコペニアは、加齢により筋肉量が低下し、筋力または身体能力が低下した状態をさし、原因は必ずしも明らかではありませんが、骨格筋におけるインスリン作用の低下はサルコペニアの促進要因と考えられます。

 骨格筋では、食事をとると、インスリン作用によってタンパク質合成などが促進されます。高齢者が低タンパク食などを摂取している場合はタンパク合成が低下して、サルコペニアが進行すると考えられます。

 

 また、サルコペニアが進行することで、糖の処理能力が低下し、糖尿病の発症や悪化要因ともなり、糖尿病予防上も注目すべき問題です。

  

 サルコペニアの防止には、高齢者ではタンパク質の摂取を十分に維持していくこと、また糖尿病患者では、骨格筋のインシュリン感受性を増すような治療法が必要です。

 骨格筋の質的・量的な維持は、サルコペニアの防止だけでなく、全身の老化を防止する効果もあると想定されます。 

■シンポジウムB── 職業運転者の健康管理と支援

 後半のシンポジウムBは「職業運転者の健康管理と支援」と題して、労働医学の最前線で活躍する研究者や航空医学の研究者、安全運転支援装置を開発する技術者など様々な立場から、職業ドライバーの過労運転防止や健康管理、パイロットの乗務可否基準、ドライバーの漫然運転状態検知メカニズムなどについて解説しました。

 

1 「事業用自動車運転者の健康管理と支援する

  技術動向」 

   酒井 一博 (公益財団法人大原記念労働科学研究所

        常務理事・所長

2 「パイロットの健康管理 ~健康管理と身体基準 

   五味 秀穂 (一般財団法人航空医学研究センター 専務理事・所長)

3 「安全運転を支援するドライバ状態検知技術」 

   田中 裕章 (株式会社デンソー ADAS推進部 担当部長・技師)

 

  また、それぞれシンポジウムの最後に講演者が会場の参加者と一緒にパネルディスカッションを行いました。

 

第25回 日本交通医学工学研究会 学術総会データ 

 

・日時 平成28年9月22日(祝)10:00 ~ 17:30 (懇親会 17:40~19:00)
・会場 名古屋大学 野依記念学術交流館
・主催 日本交通医学工学研究会
・会長 橋本 正一(豊田合成株式会社 専務執行役員)


・プログラム

 <シンポジウムA──超高齢社会と車>

   司会:奥地 弘章(トヨタ自動車(株)先進技術開発カンパニー 常務役員)/

               吉田 純(名古屋大学 名誉教授)

 

 1  「活き活き高齢者のための運転特性研究」

   金森 等  (名古屋大学 未来社会創造機構 特任教授)

 2  「高齢ドライバ運転特性とビッグデータ解析」

   小栗 宏次 (愛知県立大学 情報科学部 教授)
 3  「高齢者医療と運転の諸問題 ~認知機能と運転に着目する~」 

   岩本 邦弘 (名古屋大学大学院 医学系研究科 発達老年精神医学分野 講師)

 

 ★パネルディスカッションA (司会者二名及び講演者三名による)

 

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 < 特別講演 >
   司会:橋本 正一(豊田合成株式会社 専務執行役員)

 

 「サルコペニアの成因と予防」

   植木 浩二郎 (国立国際医療研究センター 糖尿病研究センター センター長)

 

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 <シンポジウムB  職業運転者の健康管理と支援>

   司会:間瀬 光人(名古屋市立大学大学院 教授)/小松 秀樹((株)ブリヂストン 常務執行役員)

 

1  「事業用自動車運転者の健康管理と支援する技術動向」 

      酒井 一博 (公益財団法人大原記念労働科学研究所  常務理事・所長)

2  「パイロットの健康管理 ~健康管理と身体基準~」 

      五味 秀穂 (一般財団法人航空医学研究センター 専務理事・所長)
3  「安全運転を支援するドライバ状態検知技術」

      田中 裕章 (株式会社デンソー ADAS推進部 担当部長・技師)

 

 ★パネルディスカッションB (司会者二名及び講演者三名による)

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