交通事故の判例ファイル10

◆裁判員裁判による危険運転致死罪の判決相次ぐ

 

 昨年5月に裁判員制度が導入されて1年半が経過しようとしていますが、交通事故の裁判にも危険運転致死など重大な刑事事件に関して、裁判員裁判が行われています。

 最近、相次いで重要な危険運転致死罪の判決がありました。

 ・事例① 速度超過とひき逃げの加害者に懲役23年

      ──名古屋地裁2010年10月22日

 

 名古屋市熱田区で2010年2月1日の深夜に3人が死亡した事故で、危険運転致死罪と道路交通法違反(ひき逃げ)等で起訴されたブラジル国籍の被告(27歳)の判決です。懲役27年の求刑に対し懲役23年の判決が言い渡されました。


 起訴状によると、仲間と窃盗事件を起こした後にパトカーを見かけ、逮捕を恐れ赤信号を無視して時速約120キロで交差点に進入、歩道上の男女3人を跳ね飛ばし死亡させた後、けが人がいたかもしれないと認識しながら、救護せず逃げたものです。


 裁判員と裁判官は、「遺族に謝罪文を送るなど反省を深めているが、無謀で危険な運転をして3人の将来を奪い去った結果は極めて重大。長期の懲役刑は免れないと判断した」と述べています。

・事例② 速度超過と赤信号無視に懲役11年

      ──岐阜地裁2010年10月28日判決

 

 岐阜県瑞浪市の国道交差点で2010年4月、赤信号を無視して速度超過で進入、対向車の男性(当時40歳)を死亡させたとして、危険運転致死罪等に問われた被告(42歳)に対する裁判員裁判の判決です。

 

 懲役12年の求刑に対し11年の判決が言い渡されました。被害者参加制度が適用され被害者の弟が出廷、「法定刑の上限20年の懲役」を求めました。

 

 判決では、「危険かつ無謀な運転で何の落ち度もない被害者を死亡させた結果は重大」と指摘され、「事故後、同乗者に身代わりを依頼し虚偽の申告をさせた自己中心的な行動は厳しく批判されるべきだ」と述べました。

 

 また、裁判員を務めた男性(30)は判決後、「被害者遺族の要望は、量刑には大きく影響はしていないが、参考にしました」と述べています。

 

類似の判例はこちら

※【参考──裁判員裁判

 

 平成16年5月21日「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立。平成21年5月21日から裁判官3人以外に6人の裁判員が参加する「裁判員制度」による裁判がスタートしました。司法制度改革の柱の一つとして、刑事裁判や司法制度への国民の理解を深め、迅速な裁判を実施しようというのが大きな目的です。


 対象となる事件は、殺人罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、危険運転致死傷罪、身代金目的誘拐罪など一定の重大な犯罪で、控訴審・上告審、民事事件は裁判員制度の対象になりません。 事前に公判前整理手続がとられ、裁判員にわかりやすいように、メリハリのある裁判を行うように様々な工夫がなされると言われています。


 制度開始から2010年7月末までの速報では、危険運転致死に関して12件の判決が下っています(いずれも有罪・有期懲役)。

※追記:制度開始から2011年3月末までの速報では、危険運転致死に関して27件の判決が下り、いずれも有罪・実刑です(懲役25年以下1件、15年以下2件、10年以下9件、7年以下9件、5年以下2件、3年以下4件)。

 


 詳しくは、最高裁判所のWEBサイトを参照してください。

(2010年11月1日掲載/2011年9月28日更新)

裁判員裁判イラスト

 ※重大刑事事件のみ──数多い軽罪の刑事事件や民事事件は対象とならない。

 ※裁判の迅速化──裁判員が参加するため、判決公判は連日行われ、数日で結審する。

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