交通事故の判例ファイル12(同乗者の飲酒責任)

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◆奄美市の飲酒ひき逃げ事故、同乗者の責任確定
──事故直前まで同乗していた男性に約5300万円の損害賠償命令/最高裁

 鹿児島県奄美市で2003年11月、当時24歳の男性が、飲酒した19歳少年の運転する車にひき逃げされ死亡した事故に関して、事故直前までこの車に同乗していた鹿児島県内の男性(25)に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁判所は2010年12月27日までに上告を棄却しました。


 このため、同乗者に運転者と共同で約5,300万円の賠償請求全額を支払うよう命じた一審、二審判決が確定しました。

 同乗者は2003年11月15日夕方から、運転者の男らと一緒に酒を飲み、翌16日未明、飲酒量が約6リットルに達した男の車に同乗、運転者は車内でさらに発泡酒1缶を飲んでいます。 その後、同乗者が知人を見つけて下車した直後、運転者は横断中の被害者をひき、死亡させました。


 鹿児島地裁の一審判決(2008年10月15日判決)は「同乗していた男性は、運転を制止すべき注意義務を怠ったので、事故に責任がある」として同乗者の責任を認定、二審の福岡高裁宮崎支部判決も一審判決を支持して控訴を棄却しています(2009年2月25日判決)。


 同乗者は、車を降りた後の運転者の過失による事故であり、共同飲酒と事故には関係がない、として控訴・上告していたものですが、最高裁でも否定されました。

 

類似の判例はこちら

【同乗者が「危険運転致死傷罪」幇助罪で、実刑判決!】


◆同乗者の安易かつ無責任な態度が飲酒運転に結びついたと判定/さいたま地裁 2011年2月14日判決


 民事の損害賠償請求ではなく、これは刑事訴訟ですが、埼玉県熊谷市で2008年に起きた飲酒運転死傷事故に関して、同乗者が危険運転の幇助罪で起訴された裁判員裁判の判決がさいたま地裁で2月14日にあり、同乗者2人が懲役2年(求刑は懲役8年)の実刑判決を受けました。


 裁判長は、「両被告は運転者より10歳年長で、了解を与えたことで飲酒運転の意思をより強固にした」と幇助罪が成立する要件を認め、「飲酒運転をやめるよう説得することが可能だった」として「安易で無責任な態度が悲惨な結果を招いた」と述べ、「被害者への言葉もなく反省の態度が見られない」と指摘しています。


 同乗者に対して危険運転致死傷の幇助罪を適用したのは極めて異例の判決で、裁判員裁判としては初めてです。 従来の酒酔い運転に対する幇助罪でも、罰金刑の判決が主で、同乗しただけで懲役刑は初めてと見られます。

 飲酒運転など悪質・危険性の高い違反を過失犯ではなく「故意犯」として裁く考え方から、最近は量刑が重くなり、同乗者に対しても同様の判断をする方向が示されたといえますが、一方で、同乗者に対して懲役は重すぎるという見方もあります。


 同乗者2名は「アルコールの影響で運転者の正常な運転が困難だったとは認識していなかった」として「飲酒運転の了解もしていない」と無罪を主張していました。

 この判決に対して、被告側はいずれも控訴する方針です。

(2011年2月14日更新)

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