リスク強度に応じた事故防止対策をとっていますか?

 昨年は大きな災害が相次いで、企業でも危機管理意識が高まりました。もうすぐ大震災から1周年ということもあり、特に地震対策には大きな注目が集まっていると思います。帰宅困難者対策を策定する企業や、地震発生時の安否確認マニュアルなどを見直した企業も多くあることでしょう。

 従業員への安全配慮義務があるので、必要な対策です。

 

 しかし、交通安全対策に関してはどうでしょう?死者数漸減などの影響もあり、意外に軽視されてはいないでしょうか。
 リスクの頻度、強度という観点からみて、危機管理の方向性が偏っていないか、年度末に再検討してみることも大切です。

交通事故のリスク強度は地震災害の25倍!?

 東日本大震災では、津波などで2万人近い方が亡くなりました。私たち全員にとって本当に悲しくショックな出来事です。

 しかし、2万人もの人が亡くなる大地震の起こる頻度はどの程度でしょうか?東北地方だけでみると1000年に1回?日本全体でも100年に1回程度ではないでしょうか。


 リスクの強度は、被害の大きさと頻度の両方から考える必要があります。
 2万人を仮に100年で割ると、1年当たりのリスク頻度は200人/年です。一方で交通事故はどうでしょうか。30日内交通事故死者数は毎年約5000人を超えていますから、地震災害の25倍以上という計算になります。
 私たちにとって「今ここにある危機」は、依然として交通事故であることがわかります。

事故の後遺障害が大きな社会の損失に

 日本損害保険協会の調査(※)によると、ここ数年、交通事故の社会的損失額は3兆2千億円程度(年間)で、横ばい傾向が続いています。交通死亡事故は年々減少傾向にあるにもかかわらず損失額が減らないのは、近年、後遺障害損失が増加していることが一つの原因と考えられています。

 

 後遺障害者は年間6万人程度で被害者全体の約5%にすぎないのですが、損失額全体のおよそ40%(6,150億円)を占めていて、後遺障害による損失は非常に大きいものがあります。交通事故はそのときだけでなく、被害者、加害者に一生ついてまわるものということがわかります。

 (※日本損害保険協会/自動車保険データにみる交通事故の実態:2011年6月公表)

交通事故リスクはどこに隠れているか

 交通事故のリスク強度は非常に高いので、事故が起こっていないから大丈夫という意識では危ないのです。

 ★運転業務について「無理が通る」体制ではないか

 ★現場の危機感が伝わっていないのではないか

 ★交通違反が増えていないか

──といった観点で交通事故発生のリスクを想定し、事業所の業務のなかに隠れている要因をチェックしましょう。

★無理が通る体制はないか
◯忙しい時、無理を聞いてくれるドライバーがいるので、よく臨時の仕事を頼む
◯下請け会社で、急な仕事も文句を言わずに何でも引き受けてくれるところがある
◯人件費が増やせないので、一人ベテラン社員がいれば、あとはアルバイトと派遣社員でこなしている

 

「あのドライバーならなんとかしてくれる」

「あの会社なら引き受けてくれる」

「あの営業所なら、文句は言わない」

という甘えはないでしょうか?

 

 現場のドライバーや下請け会社が、「かなり無理な状況だ」と思いながらも、我慢して頑張っていることがよくあります。
 無理を通す体制では、居眠運転事故などがいつ発生しても不思議ではありません。

★危険に気づいても相談する方法がない?
◯「あのドライバーはうっかりミスが多い」と皆感じているが管理者は知らない
◯倉庫のレイアウトはリフト担当者に任せきりでドライバーの意見は聞かない
◯冬用タイヤがかなりすり減ってプラットフォームが出ているが、法令に抵触するレベルではないので言い出せない

 工場など製造の現場では、リスク・アセスメントとして、
 「この機械の設置位置は腕が挟まれやすく危ない」
 「床が滑りやすい」

などのリスク要因を働く人から聞き取って改善するシステムがあり、事前にリスク強度を下げることが日常的に行われています。

 

 一方、運転の現場では、危険要因が広範囲にわたるので「ドライバー自身の安全意識を高めるしか方法はない」と思い込みがちです。

 

 しかし、ドライバー自身が危険に気づいていて、「改善してほしい」と願っている要素があるかも知れません。
 これらのリスク要因については、管理者の側からドライバーに近づいて調べていかないとなかなか発見できません。
 ドライバーから管理側に相談できる体制をつくることが、リスク強度を下げることにつながります。現場に行って、直接ドライバーとコミュケーションをとりましょう。

★違反が増えていないか?
◯交通違反が増えていないか
◯構内通行のルール違反で指導される機会が多くないか

 ルール違反なども事故の潜在的な危険を示しています。事故ゼロなのでうまく行っているように見えて、違反が増えている場合は要注意です。

 違反はドライバーの交通ルールに対する意識、交通法規の理解度などにも原因がありますので、交通知識や違反意識をテストすることも重要です。

 

 違反が多い理由など問題点が見えていない場合は、交通事故が発生してからネジを巻き直しても間に合わなくなりますので、とくに問題のあるドライバーがいれば、個別指導の対策をとりましょう。

(2012.2.14更新)

 

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