交通事故といえば、ドライバーの見落としなど「ヒューマンエラー」により起こると考えられますが、意外に軽くみられているのは体調異変からくる事故ではないでしょうか。
フィンランドなど交通事故の医科学的分析が進む国では、交通死亡事故の約10%(10件に1件)はドライバーの健康起因による事故だという統計もありますが、日本で確実に実証されているのは1,000件に1件程度とされ、開きがあります。しかし、事故の調査方法に問題があるのであって、実態は北欧に近いのかも知れません。
さる2月4日午後にも、東京・大田区でトラックドライバー(58歳)が運転中に意識を失い、JR駅前にある貴金属店に車体が頭から突っ込み、搬送後の病院で死亡する事故がありました。
幸い歩行者や店員にけがはありませんでしたが、トラックの助手席同乗者の証言では、ドライバーが右折するはずの交差点を右折せずに直進し、店に突っ込む直前には意識を喪失していたということです。死因は何らかの発作によるものと見られています。
国土交通省の調査では、トラックやバス・タクシーなど職業ドライバーの発作事故は増加傾向にあり、最も目立つのは「脳神経系」の発作と心筋梗塞など「心臓血管系」の発作で、命に関わるこの2つの疾患で半数以上を占めています。
一方で、鼻炎、腹痛、てんかん、感冒、めまい、湿疹、糖尿病などによって運転に支障が出たケースも多数あり、「どんな病気でも運転に影響を及ぼす恐れがある」と考えるべきでしょう。
まだ寒さが厳しく、インフルエンザなどが流行していますので、皆さんも健康には十分注意するとともに、体調が悪いときは無理に運転をしないでください。早めに申告して運転席から降りる勇気を持つことも、事故防止には大切なことです。
(2013.2.7更新 シンク出版株式会社)
小冊子「健康管理と安全運転」は、健康管理を徹底していなかったために発生したと思われる、重大事故等の6つの事例をマンガで紹介しています。
各事例の右頁では、垰田和史滋賀医科大学准教授(医学博士)の監修のもと、運転者が日々気をつけなければならない健康管理のポイントをわかりやすく解説しています。