交通事故の損害の大きさを指導していますか──その4

■起こってからでは遅すぎる──車が汚染源となる危険を軽視しない!

事故の社会的損害

 車の事故では、積載物が飛散したり、燃料が流出して環境を汚染することもあります。

 

 今回は、社会的影響の大きかった事故事例のなかで、油が流出した事例を紹介しますので、指導の参考にしてください。

事例1■タンクローリーが水田に落ち、廃油1,800リットルが流出!

鉄板15枚が落下し2名死亡
     

■田畑などを汚すと休耕の恐れもある

 
 平成24年(2012年)5月15日午後2時40分頃、福岡県筑後市の道路を走行中の産廃会社のタンクローリー(約4トン)が対向車を避けようと左に寄せ過ぎて道路をはみ出し、道路脇約1m下の水田に転落しました。
 この事故で積んでいた廃油約1,800リットル(廃油エンジンオイル)の大半が水田(約 720平方メートル)に流出し、田を汚染しました。

 

 現場では、産廃会社の社員が廃油を吸った土の除去作業をしましたが、水田を所有する農家では「6月に田に水を入れて田植えの準備をする予定だった。土を入れ替えても油が浮いてきたら休耕せざるを得ない」と困惑していました。

鉄板15枚が落下し2名死亡
     

■耕作者の損害を賠償する義務がある

 

 この事故の損害賠償額はわかりませんが、一般に1反(約1000平方メートル)の農作物の標準売上高は、「新規就農ガイドブック(全国農業会議所・発行)」によれば、以下の通りです。休耕なら損害賠償を支払う必要があります。


 稲作1反当たり 売上 14.2万円
 ナス1反当たり 売上 312万円
 トマト1反当たり 売上 173万円

 

 さらに、休耕田の汚染が永続的で水田を買い取る必要が生じ財物賠償する場合、福島原発事故での賠償額が参考になります。

 政府と東京電力が平成25年5月に発表した賠償基準単価は、1平方メートル当たり350円~1,200円ですから、1反当たり35万円~120万円となっています。

(田畑の性格によって賠償額に差があります)

 

事例2■給油中であることを忘れて車を発進、軽油870リットルが河川に漏洩

鉄板15枚が落下し2名死亡
     

■点検後に給油中であることを失念

 
 平成26年(2014年)5月10日、神奈川県厚木市の運送会社内の自家用給油所で、男性が給油中に点検を実施し、点検終了後に給油中であることを忘れて車を発進させ、外れた給油ホースから20分間ほど軽油が漏れ続けました。

 漏れ出した軽油のうち約630リットルは側溝等を通じておよそ1km先の玉川に流出しました。

 約4km離れた相模川との合流点手前まで軽油が確認され、農業用水路への流入も確認されたため、市と地元水利組合が水質事故として対応しました。

【参考 水質事故の責任について】

 水質事故(河川に有害物質が流出する事故)を誤って発生させた場合、無過失責任が適用されます。無過失責任とは原因者の故意・過失の程度を問わず、法的責任を追及できるという意味です。

 水質事故が発生した後、河川管理者や関係機関が行った対策・処理について、原因者に費用負担を求めることができるとしています(河川法第67条) 。

 実際に静岡県で、個人が油を流出させてしまい、その委託作業費と資材費として200万円を越す金額を請求された事例がありました。

【事故の教訓】
固縛が不十分な場合
■田畑などのそばで、無理な走行はしない
 
水田や畑など人の姿がなく、民家とも離れた場所では、運転者は油断しがちです。
 しかし、すれ違い時などに少しでも危険を感じたら、無理をしないで止まって相手に道をゆずり、安全を確保するように心がけましょう。
固縛が不十分な場合
■車自体が危険物・汚染源で
 あることを自覚しよう
 
乗用車など危険物や汚染物を搭載していない車でも、車が田畑・川などに転落した場合、車の燃料やオイルが流出して、環境を汚染するということを自覚しましょう。
 河川などの水質汚濁事故を起こしてしまった場合、対策や処置に要した自治体の費用が原因者に請求されることもあります。

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■交通事故が社会に大きな損害を与えることを指導しましょう

ドライバーのうっかり事故であっても、交通事故の態様によっては鉄道をストップさせたり、大規模な停電を誘発するなど、社会に大きな損害を与える事故が発生することがあります。

 

小冊子「こんなに大きい!事故の社会的損害」は、わずかなミスや、低い安全意識による交通事故が、事故の当事者以外の人にも大きな損害を与え、取り返しの付かない事態に発展することを理解していただくことのできる教育教材です。

 

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