居眠り事故防止策をテーマに講演

■日本交通医学工学研究会学術総会(2015.7.20)

 平成27年7月20日(月)、名古屋市の名古屋大学豊田講堂内シンポジオンホールにおいて、第24回の日本交通医学工学研究会の学術総会が開催されました。

 今回は「居眠り事故防止策」をメインテーマに取り上げ、交通医学・睡眠学の専門医や自動車工学の研究者、交通安全に関わる実務担当者など、150名近くが参加し、講演に熱心に耳を傾けるとともに、パネルディスカッション等でも活発な意見の交換を行いました。

 

 学術総会という専門的な講演会ではありましたが、トラック・バス・タクシーなどの自動車運送事業者はもちろん、安全運転管理者などにとっても、大変、参考になる知見や研究成果がありました。

 

 以下、今回の学術総会の概要をご紹介します。 

日本交通医学工学研究会とは…

 日本交通医学工学研究会は平成4年(1992年)に創設された学際的な研究組織です。交通災害の原因としての人的条件(疲労、居眠り、高齢、疾病、飲酒、交通マナーなど)を主として医学の面から、また環境条件(車、道路など)を主として工学の面から検討することにより、人と車が有機的に一体化して、相互補完的にコントロールされるようなシステム作りの達成を志向しています。毎年夏から秋にかけて名古屋市内で学術総会を開催しています。

【同研究会のWEBサイトへ】



◆医学と工学からみた「居眠り事故の防止策」

 今回のプログラムは、午前・午後で2つのシンポジウムに分かれて行われました。

 シンポジウムに先立ち、24回学術総会会長を務める、塩見利明愛知医科大学教授が開催の挨拶を行いました。

 

塩見 今から12年前の平成15年に起こったJR山陽新幹

 線の居眠り運転騒動以来、重度の睡眠時無呼吸症候群(SAS)が引き起こす居眠り事故が関心を呼ぶようにな

 りました。

  SAS患者の10.9%が自動車の居眠り事故を起こし

 ています。CPAP治療等の浸透により、事故防止は進ん

 でいますが、未だゼロにすることはできません。

  一方、工学的な側面からの自動ブレーキなどの開発

 と普及により、居眠り運転事故の撲滅ができないかと

 期待されています。

  そこで、本学会では居眠り事故防止策をメインテーマに取り上げました。学際的な取り組みを進

 めることで、安全・安心な交通社会づくりに資する学術総会となることを期待しています。 

■シンポジウムA──眠気の科学

 午前のシンポジウムAは「眠気の科学」と題して、3人の講師が睡眠学の専門医の立場からドライバーの眠気がいかに睡眠不足や生体リズムとの関わりが高いかなどを解説しました。

 また、専門的な研究分野である「過眠症=睡眠障害」に言及し、ナルコレプシー・睡眠時無呼吸症候群など病的眠気を呈する運転者の診断方法などについても紹介しました。

 

1 「睡眠不足と眠気」

 碓氷 章(睡眠総合ケアクリニック代々木第二 院長)

 2 「眠気の日内変動

 林 光緒 (広島大学 大学院総合科学研究科 教授)

 3 「病的眠気の診断」 

 田ヶ谷 浩邦 (北里大学 医療衛生学部 健康科学科 精神保健学 教授)

 

■特別講演──「睡眠問題と居眠り事故」

 井上 雄一 (東京医科大学 睡眠学講座 教授)

 お昼休憩の後には「特別講演」があり、睡眠治療のエキスパートとして知られる井上雄一東京医科大学教授が、「睡眠問題と居眠り事故」と題して、居眠り事故の原因には「睡眠不足(疲労)の蓄積」と「睡眠障害」の関与が大きいことを明示しました。

 

 井上教授は、睡眠不足による事故と重症睡眠障害による事故の判別は難しく、両者が重責しているケースもあること、職業運転者では、非職業運転者が休養をとるような運転疲労を感じても居眠り事故の経験がない限り休養をとらない傾向が高いなど、運転者自身への教育・啓発だけでなく、雇用者への働きかけが重要と示唆しました。

 

 また、井上教授は、SAS患者でも多数回の居眠り事故を起こしている運転者は、睡眠中の無呼吸低呼吸指数などは重症を示す傾向が強い一方、エプワース眠気尺度の自覚症状得点が事故未経験の運転者より低くなる傾向が見られる点に着目し、重症や慢性化した患者は「眠気の自覚」が鈍化している危険性があることを指摘、「重症SASスクリーニングが非常に重要です」と強調しました。

 

■シンポジウムB── 居眠り検知と事故防止策

 後半のシンポジウムBは「居眠り検知と事故防止策」と題して、工学や労働医学の最前線で活躍する研究者の立場からドライバーの眠気や覚醒度を予測・観測するシステムや居眠り事故を防止するための制御メカニズム、また、道路環境整備、労働環境改善を含めた総合的な居眠り対策などについて解説しました。


1 「宇宙探査に向けた新規覚醒度評価法の開発」 

  阿部 高志 (宇宙航空研究開発機構 宇宙医学生物学研究室

       宇宙航空プロジェクト 研究員)

2 「居眠り運転防止への取り組み」 

  山田 一二 (アイシン精機(株)走行安全システム部 部長)

3 「運転疲労・眠気に対する多角的な対策」 

  北島 洋樹 (公益財団法人 労働科学研究所 副所長)


  また、それぞれシンポジウムの最後に講演者が会場の参加者と一緒にパネルディスカッションを行いました。

日本交通医学工学研究会 第24回学術総会データ 

 

・日時 平成27年7月20日(月)10:00 ~ 17:30
・会場 名古屋大学 豊田講堂内 シンポジオンホール
・主催 日本交通医学工学研究会
・会長 塩見 利明(愛知医科大学 睡眠科 教授)


・プログラム

 <シンポジウムA  眠気の科学>

   司会:吉田  純(名古屋大学 名誉教授)/橋本 正一(豊田合成株式会社 常務執行役員)

 

 1 「睡眠不足と眠気」 碓氷 章 (睡眠総合ケアクリニック代々木第二 院長)

 2 「眠気の日内変動」 林 光緒 (広島大学 大学院総合科学研究科 教授)
 3 「病的眠気の診断」 田ヶ谷 浩邦 (北里大学 医療衛生学部 健康科学科 精神保健学 教授)

 ★パネルディスカッションA (司会者二名及び講演者三名による)

 

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 < 特別講演 >
   司会:塩見 利明(愛知医科大学 睡眠科 教授)

 

 「睡眠問題と居眠り事故」 井上 雄一 (東京医科大学 睡眠学講座 教授)

 

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 <シンポジウムB  居眠り検知と事故防止策>

   司会:野田 明子(中部大学大学院 生命健康科学研究科 教授)/長田 昇(矢崎総業株式会社

                取締役)

 

 1 「宇宙探査に向けた新規覚醒度評価法の開発」 阿部 高志

         (宇宙航空研究開発機構 宇宙医学生物学研究室 宇宙航空プロジェクト研究員)

 2 「居眠り運転防止への取り組み」 山田 一二

                   (アイシン精機株式会社 走行安全システム開発部 部長)
 3 「運転疲労・眠気に対する多角的な対策」 北島 洋樹

                        (公益財団法人 労働科学研究所 副所長)

 

 ★パネルディスカッションB (司会者二名及び講演者三名による)

 

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