体調悪化時の措置を指導していますか

 近年、運転者の体調不良が交通事故のリスク要因の一つと言われていることは、管理者の皆さんもよくご存知で意識されていると思います。

 

 しかし、工場のラインなどと違って運転者の場合、健康状態を常時観察できるわけではないので、管理者が早期発見するのは難しい面があります。

 

 点呼や朝礼における健康観察は当然のことですが、点呼で異常がなくても、健康状態が悪化して事故に至ったケースがあります。

 

 日頃から健康管理の指導を徹底するとともに、本人が体調変化を自覚的にチェックして、早めに対処することが重要となっています。

 

 事業所の運転者が自分の体調をチェックし、体調が悪いときは運転を中断したりすぐに申告する仕組みができているか、考えてみましょう。

■死傷事故は横ばいだが、運転中断事故は顕著に増加

 右図は事業用自動車の運転者における健康起因事故の統計ですが、これを見て気づくことは、近年、急速に事故件数が増えていることです。

 

 ただし、増加しているのは自動車事故報告規則が改訂され事業者の意識も高まって、国土交通省に対する報告が増えたことと関係があります。

 

 右下図(内訳)をみると、運転を中断した件数が増加していて、死傷者が出た事故件数はそれほど増えていません。


 2017年6月に滋賀県で開催された日本交通科学学会においても、運転中断事故が増えていることが注目され、なかでも、バス運転者に中断件数が多いということが指摘されていました。

 

 バスの場合、乗客が運転者の体調変化に気づいて車を停止させた事例もあります。

 また、路線バス事業者では体調不良時の指導が比較的徹底していること、運行中も営業所などが近く運転者が連絡しやすい状況にあること等が関係しているのではないかということです。

 

 不幸にして体調不良となっても運転の中断が早ければ、死傷事故や重大事故を回避できる可能性が高まります。

 ※図は国土交通省自動車局「事業用自動車の運転者

  の健康管理の取り組み」より


■普段から報告しやすい雰囲気づくりをする

 運転者に身体症状があるとき、運行管理者や安全運転管理者に「体調が悪い」と率直に言うことができる職場環境をつくることが大切です。  

■業務のバックアップがあることを明示する

 茨城県に本社を置く物流会社のベテラン運行管理者は、運転者たちを点呼する時、必ず健康状態を観察しヒアリングしています。

 

 このとき運転者の様子に不安を感じたら、「別の者に再配車は可能だから」とハッキリ言って状態を聞くことにしているそうです。

 

 その管理者は、自分の組んだ配車プランが予定通りにいかないことも想定して、すぐ再手配ができるよう常にBプラン、Cプランを用意していて、運転者にはそれを見せて説明しています。

 

 実際にバックアッププランを使うのは、体調不良よりも荷主都合などによる予定変更の場合が多いのですが、代替プランがあるという姿勢を示すことで信頼度が高まり運転者の態度も変化してきました。

 「少し体調が不安なので、明日は午前中休んで医者に行きたい」と事前に相談にくる運転者も表れてきたという話です。

■無理をしない社員を褒める

 岐阜県に本社を置くバス会社の運行管理者は「万一の場合は俺が行くから」が口癖です。

 

 実際に、貸切運行の運転者が帰路に気分が悪くなり、本社から50キロ以上離れたサービスエリアから休憩時に連絡してきたとき、「乗客にお詫びして事情を説明し、そこで待っていなさい」と指示してすぐに交替運転者と一緒に乗用車で救援に向かい、SAで交替して事なきを得ました。

 

 このとき、体調不良を申告してきた運転者を叱らないで褒めてねぎらい、社内報でも「運転不能になる前にすぐ連絡してきて、最小限の措置で済んだ」と評価しました。

 

 ともすれば、管理者は無理をして戻ってきた運転者の方を「お前はよく頑張った」と褒めてしまいがちです。しかし、無理をして仕事をやり遂げた社員を褒めると、それが誤った成功体験として社内で共有され、「休まない者がえらい」「少しぐらい辛くても運転を続けるべき」といった風潮が生まれます。

 

 そして、「自分がここで抜けると迷惑をかける」という責任感のある運転者ほど、体調不良を訴えにくくなることにもなります。

■「身体の異常を感じた場合の対応策」を指導しておこう

 実際には体調が急変してしまうと何もできない場合が多いでしょうが、急変する前に何らかの兆候が現れることもあります。

 

 運転者の自覚を高めて安全に対処するために、車を止める措置のポイントを予め指導しておくことが重要です。

 

 下の資料は、国土交通省の事故報告書※に掲載された内容で、東京のある乗合バス会社が実際に運転者に配布していた「健康管理ハンドブック(東京バス協会作成)」から抜粋したものです。 

   健康管理ハンドブック(抜粋)

 

1.運転中身体に異常を感じた場合の処置

 運転中に「めまいがする」「気分が悪い」などの自覚症状があった時は、迷わず車を止めてしまうことが先決です。「お客さんや会社に迷惑をかけては」と考える事はプロ意識として立派なものですが、無理をして事故につなげてしまうことは禁物です。(途中略)

 

 バス運転者は「めまい」や「頭痛」などが起こり運転が無理だと思ったときは、「無理せず止める」「安全な場所へ止める」「安全な方法で止める」の三つの止め方を普段から心得ておかなければなりません。

 

 (1)まず停車

  1.  運転者が運転中に身体に変調を来したときは、その程度により対応が異なるのはやむを得ないが、最低限まず停車の処置を講ずること。
  2.  停車する場合、判断の余裕があるときは、できる限り安全で他の交通を阻害しない場所をえらび、道路の左側に寄せて停車すること。
  • 少なくとも踏切、交差点、トンネル、急勾配等は避ける。
  • 高速道路では、できる限り緊急待避場所を利用する。

 

 (2)停車後、なお余裕があるときは

         停車後なお余裕があるときはできる限り、次の処置を行うこと。

  • サイドブレーキをかける。
  • ハザードランプを点滅する。
  • エンジンをとめる。
  • 乗客に状況を伝え了解を得る。
  • 営業所等に連絡する。
  • 救急車を呼ぶ。

 

 (3)停車後、余裕がないときは

         体調の変化が著しく、緊急停止はできたが、安全な場所・方法で停車できない場合は、

    次の処置を行うこと。

  • 乗客等に事情を伝え、営業所ならびに救急機関への連絡を依頼する。
  • それもできない状態のときは、クラクションを連続吹鳴する等の方法で異常の発生を知らせる。

 

 ──以下省略──

※事業用自動車事故調査報告書 №1641102 /乗合バスの衝突事故(国土交通省2017.5.17)より 

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