過重な運転労働をさせていませんか

 11月は過労死等防止啓発月間です。過労死防止法が施行されて3年が経過しましたが、依然として過労死・過労自殺のニュースが絶えません。

 厚生労働省は毎年、11月1日から30日まで「過重労働解消キャンペーン」を行っています

 主なポイントは、著しい過重労働、長時間残業はないか、36協定の違反はないか、悪質な賃金不払残業はないか、といった点です。

 たとえ、法律に抵触するまではいかなくても、長時間労働や長時間運転を放置すると、心身の健康被害だけでなく交通事故の要因ともなります。

 

 運送事業者はもちろん、一般の企業でもこの機会に働き方を見直し、運転者の労働時間削減に向けて努力しましょう。

 

 マイカー通勤者の事故がたびたび発生している事業所では、残業などによる疲労と事故が関係している可能性があります。労働の実態を調査して真剣に対策をねってください。

■こんな責任を追及されています

■マイカーの居眠運転による死亡事故は、長時間労働が原因と勤務先を提訴

 パンの製造販売会社に勤める男性が通勤時に居眠運転に陥ったのは、長時間労働が原因だとして、平成28年9月に男性の遺族が勤め先の会社に対して損害賠償を求め神戸地裁に提訴しました。

 

 訴えによりますと、28歳の男性は、深夜に宝塚市にある店舗から車で自宅に帰宅する途中、ガードレールに衝突する事故を起こし死亡しました。

 男性の時間外労働は、毎月130時間を超えていて、最も多い月では186時間に達していたということです。遺族は、会社側が長時間労働を放置し安全配慮義務を怠ったために事故が起こったとして、1億1,700万円の損害賠償を請求しています。

 

 男性は「忙しすぎる」「疲れた」と家族や周囲に漏らし、約70キロあった体重が事故直前には53キロまで減ってしました。  

■過労死した運送会社従業員の遺族が会社を提訴

 長野県内の運送会社に勤務していた配車担当の男性が自殺したのは「長時間労働による過労やパワハラが原因」として、平成29年10月4日、男性の両親が勤務先の運送会社に対して、計7,784万円の損害賠償を求める訴えを長野地裁に起こしました。

 

 訴えによりますと男性は平成21年に松本市に本社を置く運送会社S社に入社し、長野支店で運行管理や貨物の発送業務などを担当していましたが、平成27年2月に自宅のアパートで自殺しました(享年28歳)。

 男性の労働時間は自殺までの10か月間に残業が月平均で100~175時間に上りました。

 

 このほか、上司から日常的に罵声を浴びせられたり同僚の前で頭を強く叩かれるなど、暴行とパワハラを受けていたことも自殺のつながったとし、両親は「裁判を通じて息子のような悲劇を防ぎたい」と延べています。

 

 なお、労働基準監督署は今年2月、男性の死亡を「過労死」として労災認定を行い、6月には、運送会社の支店と男性支店長を労働基準法違反の疑いで長野地検に書類送検しています。

■高速道路の路肩仮眠で過労運転が発覚し、運送会社社長らを逮捕

 兵庫県警は過労運転事故の未然防止のため、高速道路の路肩で仮眠するトラックの指導に力を入れ、過労運転の実態を追及して運送会社の経営者や運行管理者などの逮捕にも結びつけています。

 

事例1──仮眠のため第二神明道路の路肩上で違法駐車していたトラック運転者の事情聴取を端緒に、平成27年10月15日、兵庫県警交通捜査課などは道交法違反(過労運転などの下命・容認)容疑で兵庫県加古川市の運送会社社長(67歳)を逮捕しました。

 

事例2──阪神高速道路神戸線で路肩にトラックを止めて仮眠していた運転者への事情聴取から、平成27年11月9日に、兵庫県警は長崎市の運送会社の運行管理者(61歳)を道交法違反(過労運転の下命)の疑いで逮捕しました。

 

 路肩での仮眠は後続車の追突事故を誘発する危険があるため、高速警察隊として当然の指導ですが、サービスエリアに行く前に我慢できずに仮眠せざるを得ない運転者と対面するなかで、過労運転の悲惨な実態をつかみ、事業者の摘発に活かした事例です。

■年末にかけての深夜労働・休日労働の増加がとくに顕著

自動車運転従事者の休日勤務が多い月
自動車運転従事者の休日勤務が多い月

 厚生労働省は2017年版過労死等防止対策白書をまとめ、過労死が多発している5つの業種のうち、「自動車運転従事者」「外食産業従事者」を掘り下げて、過重な労働実態の調査分析を行っています。

 

 自動車運転従事者のなかで、休日出勤回数が多かった月は、「トラック運転者」、「タクシー運転者」では「12月」の割合がそれぞれ38.6%、58.9%と最も高い値を示しました。

 また、「バス運転者」では「11月」の割合が21.1%で最も高く、次いで「10月」が16.3%、「12月」が14.5%の順でした。

 

 また、最も深夜勤務回数が多かった月について調査によると、バス・タクシー・トラックいずれの職種も「12月」が最も多く、職種別にみると、「タクシー運転者」で「12月」の割合が75.7%と特に多くみられました。

 また、バス運転者では、他の職種に比べ「8月」の割合が15.2%と高いのが特徴的です。  

 

■過重労働を防ぐ管理・指導に努めよう

■「過重労働は健康を害する」ことを管理者が強く自覚しよう

 過重な残業、長時間の運転労働は、下図のように確実に運転者の健康を蝕みます。

 労働時間を減らす責任が管理者にあることを自覚し、以下の点に努力しましょう。

 

■36協定は限度基準に違反しない

 トラック運送事業など特別な事業でも、改善基準告示を超えないこと。

 

■残業は「月45時間以下」を目指す

 特別条項つきの協定により月45時間以上の時間外労働等が可能な事業所でも、健康障害を防ぐため、時間外は45時間以下を目指す。

 

■年次有給の取得を促進する

 有給休暇の取りやすい環境をつくる。

 

■休日労働の削減に努める

■自動車運送事業の労働時間削減のための取り組み

政府が対策を明示しているが……

 政府は8月に「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」を開催し、運転者の労働時間削減のため「直ちに取り組む施策」として63項目をまとめました。新たな施策は2018年度予算に反映し、来年春をメドに行動計画を策定することになっています。

 

 63項目のうちトラックにかかわる施策が49項目と8割近くを占めます。「たくさん運んで、しっかり稼ぐ」ことを促すなど、運送事業者の努力を求める内容が主であることに、変わりはありません。

 宅配車両などの駐車待ち時間削減のため、貨物集配中の車両関連の駐車規制の見直しなど(警察庁)も盛り込まれていますが、物流パレットの共有可やトラックの予約受付システム、バース予約調整システムの構築などは、荷主や荷受け人の協力が欠かせないでしょう。

 

 運行管理者の皆さんは、荷待ち時間の記録などをもとに、こうした課題を荷主と共有して対策をすすめることができるように努力してください。

  ↑クリックすると拡大されます(内閣府資料より)


 

【参考ページ】

 「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」の資料は以下のサイトでダウンロードすることができます。 

 

  → 「自動車運送事業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」 

 

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