「自然発車」事故を防ごう

■停止措置を忘れて、車が動き出す事故が多発しています

コロナ対策で自転車通勤

 昨今、傾斜のある場所で駐停車したときに、駐車ブレーキ(サイドブレーキ)の引きが甘かったり、かけ忘れたりして車が動き出す「自然発車」の事故が多発しています。

 

 その多くは、電柱や建物に当たるなどの物損事故ですんではいますが、なかには車を止めようとした運転者がひかれてしまったり、歩道の歩行者などに衝突して死傷事故につながる場合があり注意が必要です。

 

  交通事故総合分析センターの調査によると、2009年から2018年までの10年間で2,352件の自然発車による人身事故が発生し、そのうち死亡事故は162件です。

 

 ここ数年の死亡事故率は7~16%と極めて高く、危険な事故類型であることがわかります(人身事故全体の死亡事故率は、約0.67%)。

 

 また、初心運転者のミスよりも、意外にベテラン運転者や中高年運転者の事故が多いことが指摘されています。

 

 運転者に、今一度、駐停車時の確実な停止措置について指導しておきましょう。

■こんな事故が発生しています

多発する自転車事故

■コンビニ駐車場でダンプが動き出し

 運転者が挟まれる

 2020年10月23日午後8時15分頃、三重県伊賀市のコンビニエンスストアの駐車場で、無人の大型ダンプ(10トン)が動き出し、車外にいた運転手の男性(50)が、車が動いていることに気づき、止めようとしてダンプと駐車場内の看板の支柱に挟まれて死亡しました。

 

 駐車場の路面に傾斜があり、サイドブレーキのかけ忘れか、レバーの引きが甘くて、車が動き出してしまったものと思われます。

 

 

■中古車販売店から無人のトラックが

 道路に出てきて運転者が轢かれる 

 2020年10月24日午後11時すぎ、東京都八王子市の柚木街道で、中古車販売店の敷地から無人の3トントラックが車道に出てきたところを、止めようとした男性が車道を走ってきたトラックにはねられ、2台のトラックの下敷きとなって死亡しました。

 死亡した男性は動き出したトラックの運転者とみられ、敷地内で3トントラックを停車させたものの、サイドブレーキの利きが甘く車が道路に出てきたものとみられています。 

 

■自宅に止めたワンボックス車が動き出し、運転者が塀とのあいだに挟まれる

 2020年9月18日午後5時50分頃、津島市の路上で会社員の女性(40)が自宅の駐車場にワンボックスカーを停めて荷物を降ろしていたところ急にバックで動き出し、車を止めようとした女性がブロック塀と鉄柵に頭を挟まれて、意識不明の重体となりました。

 駐車ブレーキのかけ忘れではないかとみられています。 

■死者の8割以上が運転当事者

 交通事故総合分析センターが自然発車による死亡・重傷事故を分析した資料によると、死亡事故では死者の82%が第一当事者、つまりその車の運転者でした。また重傷事故でも64%は運転者が被害者でした。

 

 このことから自然発車事故では、何らかの理由で車が動き始めたとき、運転者自身が気づかずにその車に轢かれてしまったり、車が動き出したことに気づいて止めようとして止められずにそのまま轢かれるか、電柱や壁などに挟まれてしまうという事故パターンが多いと考えられます。

 

 また事故を起こす車種は、乗用車と貨物車で差はありませんが、死亡事故では貨物車は乗用車の約1.5倍となっています。

※図はイタルダ・インフォメーション №134「自然発車による事故」(交通事故総合分析センター)より

■事故原因の9割以上が不適切なブレーキ操作等

自転車のながら運転事故

 自然発車事故の人的要因の分析では、実に92%が不適切なブレーキ操作等を含む「操作上の誤り」でした。

 

 駐車ブレーキやギア操作など、正しい停止措置をしていなかったケースがほとんどです。

 

 その他の中では、まれに整備不良等の車両的要因(1%)、強風大雨・凍結等の環境的要因(4%)で車が動き出すケースがあります。

 

 事故を起こした当事者の運転経験をみると、自然発車事故全体では83%が免許取得後10年以上の運転者となっていて、死亡事故では90%、重傷事故では89%が免許取得後10年以上のベテランとなっていることがわかりました。

 

 年齢的には、人身事故全体の構成率と比べると、20代、30代が比較的少なく、50代以上の割合が高いことが特徴で、とくに60歳代に目立っています。

 

 運転に習熟した運転者が油断から、つい駐車ブレーキを忘れるケースが多いと考えられます。ベテランドライバーこそ気をつけるべきだと強調しておきましょう。

■わずかな傾斜は気づきにくい。必ず駐車ブレーキをかけよう

車輪に輪止めをかける
駐車時に輪止めを付ける習慣を

■0.9%の傾斜で自然発車事故が発生

 同センターが調査したミクロ事故分析では、駐車場の路面が0.9%傾斜していた場所で、軽貨物車が動き出す事故が発生していました。

 

 事故を起こした運転者は、配達時間の遅れを取り戻そうと急ぐ気持ちがあり、車のギアをニュートラルにしてサイドブレーキを引き忘れて降車したため、車が動き出しました。

 

 車が身体に接触して怪我を負いましたが、なんとか運転席に飛び乗って、車道に出る寸前に車を止めています。

 

 この運転者(60代)は、届け先の駐車場に何度も来た経験があり、事故を起こすまではそこが平坦な駐車場と思い込んでいました。よく確認すると道路に向かって緩やかな下り坂になっていたことに気づいたそうです。

 

 実際に0.9%程度では傾斜に気づくことは難しいでしょう。そして施設の駐車場などで完全に平坦な場所は少ないと言われています。一見して平坦に見える場所でも、必ず駐車ブレーキをかけて、ギアをパーキングなどに入れることが必要です。

 

 また、念の為、傾斜に気づいたら車輪の1箇所に輪止めをする習慣を付ければ万全です。 

車が動き出したら

■軽自動車であっても、

 人の力で車は止められない 

 

 さらに、死亡事故を防ぐために重要なことは、動き出した車を自分で止めようと考えないことです。

 

 同センターが調査した上記の事例は奇跡的に負傷ですんでいますが、実際には止めようとして自車に轢かれる死亡事故が多いことを運転者に教えてください。

 

 責任感の強いベテラン運転者ほど、とっさに「止めなくては!」と考えて無理な行動をしがちですが、車の重さは軽自動車でも600kg以上あり、動き出すと人の力で止めることはできません。

 

 動き出しの速度が遅いので、なんとか止められるのではと勘違いしてしまいやすいのです。

 

 駐停車時の措置こそ最も重要ですが、万が一無人の車が動き出したら近づかずに、大声で周囲に注意を促し、二次事故を防ぐことが重要であると指導しましょう。

【参考】

 ・イタルダインフォメーションNo.134 自然発車による事故(交通事故総合分析センター)

 ・交通事故の損害の大きさを指導していますか/その6(危機管理意識を高めよう) 

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