片側1車線の自動車専用道路(暫定供用区間)では、速い車が追い抜けるように、「ゆずり車線」などの2車線区間を設けている場所があります。しかし、この区間は意外に短いので、何台かの車はゆずってくれた車を追い抜くことができないことがあります。
このとき、なんとかゆずり車線の車が戻る前に追い抜きたいと焦って速度を出しても、結局戻る車に進路を塞がれますし、悪くすると衝突事故に結びつくことがありますので注意しましょう。
さる3月30日午後3時50分ごろ、鳥取県岩美町の山陰近畿自動車道の大谷インターチェンジ付近で、ゆずり車線を走っていたトラックが走行車線に戻ろうとしたところ、後ろから来た乗用車と衝突し乗用車に乗っていた女性1人が意識不明の重体となる事故が発生しました。
トラック運転者の男性は「相手の車をよく見ていなかった」と話していて、後方の安全確認が不足していたようです。また、走行車線の乗用車も危険認識が甘かった可能性があります。
日本では遅い車が進路変更して車線をゆずる道路が多いため、戻る時に双方の速度差から衝突や追突の危険が発生しやすくなっています。欧米の高速道路では登坂車線等でも遅い車がそのまま真っ直ぐ走行し、速度の速い車が追越車線に進路変更して追い抜いていく構造をとる場所が多いので、こうした事故は起こりにくくなっています。
ゆずり車線や登坂車線がある場所では、確認不足で衝突事故が起こりやすい構造にあることを意識して、双方が安全確認を徹底しましょう(※)。
(シンク出版株式会社 2022.4.11更新)
本書は金光義弘氏(川崎医療福祉大学名誉教授・NPO法人安全と安心 心のまなびば理事長)が長年の研究と実践で培った知識と経験をもとに、現在の交通問題について50の提言をまとめた1冊です。
提言は、リスクマネジメントや危機管理体制の基本、ストレスや健康管理ミスが交通事故の原因になる仕組み、これからの交通社会を担う子どもの安全教育まで、幅広いジャンルを紹介しています。
交通問題解決の指針に触れることができ、朝礼話題のネタ探しにも活用できる一冊です。
※道路交通法上は本線車道側が優先です。ゆずり車線や登坂車線の車が戻る際に本線(走行車線)の車を妨げないことが義務づけられていますが、あくまで本線の車に急ブレーキや急ハンドル操作をさせないという範囲です。実際には本線側で減速して流入させるほうが安全な場合が多くあることを意識しましょう。