「トラドック」を通じた適正化指導の実践

■岐阜県トラック協会の取り組みが事故防止効果をあげる

トラドック2022岐阜
冊子版トラドック(岐阜県トラック協会ホームページより)

 

 各都道府県トラック協会は、適正化事業実施機関を設置して貨物自動車運送事業所に巡回指導や事故防止のための指導を実施しています。

 

 ここ2年間は、コロナ禍で十分な巡回指導ができなかった機関もあったようです。

 岐阜県では、診断ツールを配布して自主的なチェックを促す独自の活動「トラドック」を6年前から導入し、コロナ禍の中でも十分な適正化指導などの事業が継続でき、事故防止効果も上がっていると高く評価されています。今回はその概要を紹介します。

 

■事業者に予習してもらってから訪問する

 岐阜県トラック協会の臼井靖彦専務理事によると、2018年度に「トラドック」を導入する数年前から、県下の事業所全体に「事業者(所)概要書」という名前で、適正化のポイントを自主点検できる資料を送付する取り組みを始めたそうです。

 「いきなり適正化指導員が訪問して、事業者の問題点をチェックする方法は、抜き打ちテストをするようなものです。これでは事業者にとっても大変ですし、準備も難しい。

 事業者の立場に立って考えると、事前に試験勉強というか資料で予習をしてもらってから訪問するべきですし、指導効果も高いはずです。そこで、巡回指導前に資料をきちんと配布し、その資料をもとに訪問時に指導したり、相談を受けるという考え方を導入したのです」(臼井専務)

■管理状態の「見える化」を図る点検ツール

トラドック2022 岐阜県トラック協会
トラドック年間チェック表(岐阜ト協ホームページより)

 「トラドック」は事業者(所)概要書からさらに発展したもので、その名の通り人間ドックのトラック事業版として、事業者の管理状態の把握を人間の健康状態に見立てたものです。

 年に1回自己診断してもらうために、対象となる事業所に「冊子版トラドック」と「年間チェック表」を毎年春に配布します。

 

 資料を受け取った事業所は、まず巡回指導項目(38項目)にそって資料に基づき自主点検を行い、年間チェック表(B2サイズ)に自己チェックした内容を記入します。

 

 チェック表には毎月のチェック欄が設けられていますので、点呼の実施や健康状態の把握など、毎月チェックする11項目について記入していきます。

 

 さらに、運転手やトラックの数など社内体制に変更があった場合にチェックする14項目、事故や法改正があった場合にチェックする4項目、一定の時期(年1回)にチェックする4項目について、それぞれの時期に合わせてチェックを行い、結果を記入していきます。

 

 こうすることにより、管理状況の「見える化」が図られ、事業所も運行管理上でどんな課題があるかが一目で把握でき、巡回指導前には準備が整います。

 また、チェック表とセットで配布される「冊子版トラドック」は指導項目に関連する最新資料が50ページ以上に及んで印刷されています。

 この資料を参照しながら事業所が自己チェックを行いますが、直近で改正された法令など新たな資料が入っていることがあり、当然、事業所にとって初めて触れる内容でわからないことも多くあります。そこで、具体的な疑問点を持って巡回指導の際に聞くといったことができ、受動的にチェックを受ける巡回指導から能動的に学ぶといった姿勢が生まれているそうです。

■コロナ禍でも、適正化指導が途切れず実施できた

トラドックを実践する事業者
取材を基に編集部で作図しました

 岐阜県の場合、適正化実施機関の指導員が1年間で実際に事業所巡回指導をできるのは、対象事業所の3分の1くらいということで、実際に全事業所と顔を合わせるのは3年に1回程の頻度となります。

 

 しかし、トラドックの実践が始まってからは、対象事業所に年1回、最新の資料が届き、事業所毎で程度差はあるものの、毎月自主点検が行われることになりました。

 

 この実践が、コロナ禍でも指導が途切れないということに結び付いたのです。

 他の都道府県では、感染の拡大を受けてなかなか訪問指導ができずに、巡回指導がストップしたという実施機関もあったようですが、岐阜県ではそうしたマイナスはほとんど感じなかったそうです。

 

 毎年、資料をもとに自主点検してもらっているので、行動規制があって訪問できなかった時期でも適正化の指導員と事業所はメールや電話でコミュニケーションが取れました。

 リモート研修なども展開して指導員が多くの事業所とつながりを維持でき、今まで巡回以外の部分にも力を入れてきた成果が、コロナ禍でかえって実感できたということです。 

 

  巡回指導総合評価がB~Eの事業所、およびトラドックを配布希望のA評価事業所

 このトラドックの実践は、全日本トラック協会にも注目され、トラック輸送において優れた業績を挙げた個人、事業者を顕彰する「鈴木賞」を受賞しています。

 

 今後、同県ではさらに適正化指導のコミュニケーション深化を図りたいということです。

 「トラドックを基盤としたアプリケーションなどがあれば、もっとスピーディで事業所の方々の実情に応じた適正なアドバイスや助力ができるのではないかと思います。そうしたIT化を目指していきたいと考えています」(臼井専務)

取材・構成/シンク出版(株) 編集部

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