交通事故のニュースを見ていると、運転者が「歩行者を見落として、衝突した」と理由を述べていることがあります。
「前を見て運転しているのに、なぜ見落とすのか」と考えがちですが、実は人間の目はそれほど的確に前方の事象をとらえていないので、見落としは日常茶飯事です。
人間の目が対象をほぼ明確に把握できる範囲は「有効視野」などと呼ばれますが、この範囲は目が向いている前方の左右20度~30度程度であり、その外側の周辺視野はただぼんやりと何かある程度しか見えていません(*)。
しかも有効視野の中で、対象の詳細を見て細部が把握できる「中心視」の範囲は、さらに狭い2~3度の範囲であると言われています。
ただしぼんやりとした周辺視野でも、「動くもの」への反応はあります。砂漠の真ん中のような周囲に何もない空間であれば、脇の方から動く他者が現れると、脳が危険に反応して視線移動を促し中心視を行うというわけです。
しかし、運転中は様々に変化する事象に歩行者が埋没し、なかなか視野の中で特定しにくいのが現実です。危険を予測して周囲へ細かく視線移動をしていないと、見落としは当然の結果となります。「見落とし」を意識して呼称運転などをすることが重要です。
*有効視野の範囲には諸説あり、左右60度程度とする研究者もいます
(シンク出版株式会社 2022.10.4更新)
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