日本交通心理学会第90回記念千葉大会

 令和7年8月1日(金)~3日(日)にかけて、千葉県の京成ホテルミラマーレにて、日本交通心理学会創立50周年・第90回記念千葉大会が開催されました。

 

 本記念大会は、(一社)運転と作業療法学会との共催で、特別講演や歴代交通心理学会会長による座談会などが催され、また、交通心理士をはじめとした24名の学会員等がポスター発表を行いました。

 

 今回はその中から、日本交通心理学会優秀研究賞を受賞した今野瑛太氏<山形県立酒田西高等学校>の「歩道上で電動キックボードと歩行者がすれ違う際の適正な離隔距離に関する研究」を取り上げて紹介します。

日本交通心理学会とは…

 日本交通心理学会は1975年日本交通心理学研究会として創立しました。交通に関わる諸問題について心理学を中心とした研究を行うことにより、交通事故の抑止とよき交通環境の建設に寄与することを目的としています。学会の認定資格である交通心理士は、地域や企業の交通安全のリーダーとしての役割を担っており、今後ますますの活躍が期待されています。

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■急速に普及する「電動キックボード」が歩道を走行する課題とは

 2023年7月の道路交通法の改正施行により、「特定小型原動機付自転車」の車両区分が新設され、同区分に該当する電動キックボードは6km/h以下で歩道を走行することが認められました。

 

 都市部を中心に利用者が急増する電動キックボードの歩道走行が認められた以上、歩行者とのすれ違い時の距離関係は今後大きな課題になると考えられます。

 

 今野氏は、この課題を研究するにあたって、実際に大学構内に実験コースをつくり、電動キックボードと静止している歩行者がすれ違う状況を再現する実験を10名に対して行いました。

 

 実験参加者の10名はそれぞれ、電動キックボードに乗車するグループと歩行者役を交代して計24回の走行を行いました。

■「電動キックボード」と歩行者が安心してすれ違える距離は?

日本交通心理学会・第90回記念千葉大会発表論文集より
日本交通心理学会・第90回記念千葉大会発表論文集より

 電動キックボードの走行後、電動キックボードと歩行者双方に「すれ違い時の不安」、「電動キックボードのふらつき」、「電動キックボード(歩行者)との距離」について、質問用紙に回答してもらいました。

 

 回答用紙の内容ですが、「すれ違いの不安」では「非常に不安、やや不安、どちらでもない、あまり不安ではない、まったく不安ではない」の5段階で質問用紙に回答を求めました。

 

 その結果をロジットモデル(複数の選択肢から確率的に選択対象を決定する行動をモデル化する手法)に当てはめると、お互いに不安を感じる確率が50%の距離は、電動キックボードが85.43cm、歩行者が95.09cmとなりました。

 

 お互いに不安を感じない距離(5%以下)となると、電動キックボードが131.95cm、歩行者が133.23cmとほぼ同様の距離になりました。

■今回の研究を経ての考察

  • すれ違い時に不安に感じる確率が50%の点を見ると、歩行者の方が電動キックボードより10cm距離のある状態で不安を感じている
  • 電動キックボードの運転者は、自分か思うよりも遠方で歩行者が不安を感じていることを理解する必要がある
  • 電動キックボードと歩行者が対面通行でのすれ違う際、約130cm程度の離隔距離が取れない場合は、停止すると不安を感じずにすれ違える

■今後の抱負

日本交通心理学会第90回大会データ  

  

・日時 令和7年8月1日(金)~3日(日)

・会場 京成ホテルミラマーレ

・主催 日本交通心理学会(第90回千葉大会準備委員会)

・共催 (一社)運転と作業療法学会

・後援 内閣府・警察庁/(一社)全日本指定自動車教習所協会連合会/(一社)千葉県指定自動車教習所協会/(一社)千葉県トラック協会/(一社)千葉県作業療法士会

 

・プログラム 

<特別講演> 
講演Ⅰ 

・高齢ドライバーの運転行動分析ならびに自動運転時代のドライバ―課題検討

 志堂寺 和則(九州大学大学院教授・日本交通心理学会副会長) 

 

講演Ⅱ

・高齢運転者と認知機能

 三村 將(慶応義塾大学医学部名誉教授)

 

<座談会>

テーマ「歴代会長、交通心理学を語る」

 

<シンポジウム> 

未来に貢献する交通心理学~様々な分野とともに

 

<部会合同シンポジウム>

交通形成者育成のための取組み

 

<研究発表(ポスター発表)> 

・事故回避不能状況における完全自動運転車の行動判断に関する研究

・乗合バスにおける車内事故発生状況と対策の検討

・現象学的アプローチに基づく親子の手つなぎ不成立と不安全行動の理解

・怒りによるクラクションを抑制する実験研究

・高齢者の運転事故調節行動に及ぼす属性要因とQOLとの関連

・自転車と自動車の運転行動に共通する心理要因に関する縦断的研究

・原動機付自転車におけるブレーキあそびと停止距離との関連性

・乗用車が右折する際に他車の発見が遅れたときのドライバによる緊急危険回避行動

・ヘッドアップディスプレイの情報量が交差点右折時の運転行動に与える影響

・鉄道車内非常ボタン使用の判断に影響する認知と責任意識

・左アクセルペダルを使用する運転者に対する指導の実態調査

・歩行中と自転車運転中の交通行動は一貫するのか?

・確率情報が与えられたトロッコ問題における判断の一貫性

・運転技能検査を受けた高齢ドライバーの運転状況に対する自覚

・親子の安全な歩行行動を促す小集団討議を活用した教育的介入の効果検証

・高齢ドライバーの先進運転支援システムの評価に対する実験的検討

・インターネット調査における高齢運転者モニタの回答の特徴について

・自転車用ヘルメット着用の努力義務化を受けた動向

・速度超過運転行動の規定因に関する総合モデルの構築

・高齢ドライバにおける自己認識と実態のギャップが安全運転に及ぼす影響

・運転技能検査を受けた高齢ドライバーの特徴と受検結果

・運転適性診断の開発:タッチパネル式TMTによる運転能力予測の検討

・パーソナリティの各場面が運転態度に及ぼす影響

・歩道上で電動キックボードと歩行者がすれ違う際の適正な離隔距離に関する研究

今日の安全スローガン
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8月7日(木)

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