交通事故の被害者の対応に困っています2

◆不当要求への対処法

 では、設問のような強硬な態度の被害者に対しては、具体的にどのように対処すべきでしょうか。

1・まずは対応できる者に任せる

  こう言ってしまうと身も蓋もないかもしれませんが、まず設問のような請求を行ってくるような相手に対しては、可能な限り、保険会社や弁護士といった第三者を入れて、交渉は任せるべきです。

 

 このような第三者の方が、相手方の請求内容の精査や、損害の算定、法的解釈等について正確な判断ができますし、いちいち対応しなければならない煩わしさから逃れることができます。

2・自分で対応する場合

 そうはいっても、保険会社や弁護士に頼めない事情があったり、依頼しようとする前に被害者が押し掛けてきたりするなど、自分で対応しなければならない場合があるかもしれません。そのような場合は、少なくとも以下のような点に注意して対応すべきです。

1・ 請求内容・根拠の明確化
  まずは相手の請求内容をしっかり把握する必要があります。また、その請求を行う根拠についても、明確にするように求めるべきです。


  今回のように、「5千万円の商談が破談した」と主張される場合には、こちらからの回答をする前に、そもそも相手が5千万円全額を支払えという請求をしているのかどうかも含め、請求金額を明らかにさせて確認すべきですし、損害が実際に発生したと確認できる根拠資料の交付をしてもらったり、事故と同損害との間に相当因果関係があることについても主張・根拠を出してもらったりすることを求め、できれば書面等によって明確にしてもらうべきです。


 また、「誠意を見せろ」などと言われるような場合には特に、具体的に何を要求しているのかを相手に明確にしてもらうべきです。場合によっては、どうすれば誠意を見せられるかは自分で考えろ、などと言ってこちらから金銭の支払い等を申し出させようとする相手もいることがありますが、請求が明確ではない状態でこちらから金額や条件を出すことは避けるべきであり、相手に明確にさせるべきです。

 

 このような相手方の場合には、少なくとも相手の請求内容・根拠が明確にならない限り、こちらから対応をすべきではありません。

 

2・できないことはできないと明確にする
  相手方の請求内容・根拠が明確になった場合、その請求内容が正当なものであれば、対応を検討する必要があります。また、請求内容が不当であったり、根拠がなかったりして、応じることができない場合には、できないことを明確に告げる必要があります。


 回答を理由なく引き延ばしたり曖昧にしたりしてしまうと、さらに請求等の内容や方法がエスカレートすることも考えられますので、応じられる場合にはその方法等を明確に伝え、応じられない場合にはその旨を明確伝えるべきです。

 

 その場合、相手方がどんな態度をとったとしても、こちらの態度は冷静かつ毅然として対応しなければなりません。必要以上に恐れたり、逆に喧嘩腰で対応したりすることは、さらに相手につけ込まれる原因になるなど、こちらにとって不利にしかならず、事件をさらに複雑にすることにもなるため、避けるべきです。

 

3・経過の記録
 交渉においては、相手方の請求内容や方法、当方の対応などの交渉経緯については、必ず記録等をしておく必要があります。録音や録画、議事録や書面の作成、複数人での対応など、後日第三者に対しても正確に交渉の経緯等を説明できるようにすべきです。
 

 特に、刑事告訴や裁判所を介した手続に移行しようとする場合には,これらの証拠の有無によって関係機関の対応や、手続の進行具合が変わってくるといえますので、正確な記録を残しておくように心がけるべきです。

 

 なお、特に録音や録画をしている場合に、こちらが不当な対応をしてしまうと、それが記録に残ってしまって逆に当方に不利な証拠になることがあるので、その点は注意が必要です。

 

4・法的手続等
 要求を拒否しても、執拗に訪問や電話等で長時間の対応を強いられるような場合には、警察への相談も検討すべきです。例え相手の請求内容が正当なものだった場合でも、請求の仕方によっては、相手に犯罪が成立することがあります。

 

 こちらを怖がらせて金銭を要求するような場合には恐喝罪、義務のないことを行わせようとする場合には強要罪が成立することがありますし、毎日のように会社に訪問し、あるいは執拗に電話をかけてきて、会社の業務に支障が生じる場合には、業務妨害罪が成立する可能性があり、また、会社などに対する誹謗中傷を第三者に広めるようなことがあれば、名誉毀損罪や信用毀損罪などが成立することもあります。

 

 事故の責任自体が会社の従業員にあったとしても、犯罪が成立するような行為は許されませんので、刑事告訴によって対応することも考えられるでしょう。

 

 さらに、裁判所に対して申し立てを行う方法もあります。この場合には、やはり弁護士に依頼した方がスムーズに手続は進むと思われますが、会社や個人で申し立てることも可能です。
 具体的には、裁判所から相手方に対して、会社や関係者への面談等を求めることを禁止してもらうような決定(面談等強要禁止の仮処分等)を出してもらうよう求めることが考えられます。

 

 また、裁判所において話し合いをするため、民事調停を申し立てたり、あるいは相手方が法外な請求を行うような場合には、そこまでの債務は存在しないことを判決で認めてもらう訴え(債務不存在確認訴訟)を提起する方が、事態が早く収束することもあります。

(執筆 弁護士 清水伸賢)

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