2015年

10月

15日

点呼が不十分なままドライバーが事故を起こすと…

弊社は小規模の貨物運送事業所です。正直なところ、ドライバーの出発時や帰着時の点呼が十分にできているとは言えません。点呼の実施が不十分な状態でドライバーが事故をおこすと、事業所にはどういったリスクがあるのでしょうか?

■回答(清水伸賢弁護士──WILL法律事務所)

◆点呼は貨物運送事業者の義務

 貨物運送事業者等に対しては、点呼を行うことが義務とされています(貨物自動車運送事業法17条、貨物自動車運送事業輸送安全規則7条)。


 点呼の内容や記録事項も定められており、原則として、乗務前点呼と乗務終了後点呼を行わなければならず、またやむを得ない場合を除き対面により行わなければなりません。


 点呼においては、特に運転者の疾病や疲労、飲酒あるいはアルコールの残存の有無等について、しっかりと確認することが求められています。


 しかし、事業者の業務形態によっては、現実に乗務前と乗務終了後に全ての点呼を行うことが困難である場合があり、点呼が不十分となってしまうことが考えられます。


 ただこの点、上記法律や規則(運輸省令)の点呼に関する規定には、点呼が不十分な場合について、直接罰則が定められているわけではありません。もちろん、運行管理者の選任等、点呼に関係する内容で定められた規定に違反すると罰則の適用がある規定はありますが、単に点呼が不十分であったというだけでは、直ちに会社が直接の罰則に問われるわけではありません。

◆点呼の必要性

 しかし、罰則がないといっても、法令に違反していることは確かですので、点呼の不十分な実施が常態化しているような場合、行政処分として文書警告や事業停止の命令が下されたり、場合によっては営業許可の取消処分がされたりする可能性もあります。


 罰則がなくとも規定を遵守する必要があることは当然であり、特に点呼は、貨物自動車の運送にあたり、会社が個々の運送業務について、それぞれのドライバーと直接対面して、安全確認や必要な指導等する機会です。


 また特に乗務前点呼では、その手続をきっちりと履行することにより、運転するべきではない運転者を判別することができ、交通事故を未然に防ぐことが可能です。


 そのため、点呼業務は、会社の安全管理業務の中核をなすべき一つと言っても過言ではないと考えておくべきです。


 実際に事故が発生した場合、点呼の有無や内容等は、会社の使用者責任や運行供用者責任を裏付ける、あるいは否定する根拠となるべき事実の一つといえます。特に点呼がきちんと行われていたのであれば、事故が防げたという関係が認められたような場合には、会社の責任を否定することは困難です。


 点呼の適正な実施は、具体的事故等が発生した場合、会社の責任を問われないようにするための最低限の条件であるといえます。

◆裁判例での検討内容

 貨物自動車による運送の際の交通事故に関する判例では、会社の対応を検討する場合、点呼の実施の有無、及びその内容はほぼ必ず検討することになります。


 点呼をきちんと行っていれば、会社側からその適正な実施を主張することになりますし、不十分な場合は、被害者側から、会社の責任を主張する際にその不十分さが指摘されることになります。


 もちろん実際の紛争では、事故の態様や過失内容が主に争われ、会社に関しても業務内容や勤務体制等の根本的な部分から争われることが多く、点呼の内容のみが争われるような事例は見当たりません。


 しかし、会社の責任(過失の有無)が検討された事例では、ほとんどの裁判例が、会社の業務体制等の検討において、点呼の実施の有無や内容を判断していると言って良いと思います。

◆会社として採るべき対策

 以上のように、点呼が不十分な状態でドライバーが事故を起こすと、会社の責任はより容易に認められやすくなるといえますので、会社としては、点呼の適正な実施を心がけなければなりません。


 もちろん形式的に点呼を行うだけではなく、安全確保のため実質的なものである必要があります。点呼によってドライバーが体調不良であることが判明したが、納期も迫り代替のドライバーや傭車の目処もつかないため、そのまま送り出した、というようなことでは、会社の責任がより重いものとなってしまいます。


 そのため会社としては、点呼の実施だけではなく、点呼により運転をさせるべきではないと判断された場合の対応や業務についても、検討しておかなければなりません。


 現実的に実施が困難であるからと放置するのではなく、会社としては、従前までの業務形態の見直しや、運行管理者以外の補助者の選任、乗務途中点呼、他社への委任(共同点呼)の利用なども検討し、適正な実施を図るべきです。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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