2023年
8月
21日
月
警察庁交通局交通企画課はこのほど、全国の警察本部に通達を発し、アルコール検知器を用意していないため安全運転管理者が酒気帯びチェックをできなかったり、管理者に必要な権限を与えていないことが判明した事業所の使用者に対して発する、「是正措置命令」の基準を明確に定めました。
2022年の道路交通法改正により、社有車を5台以上使用する自家用自動車の使用者に対する罰則が大幅に強化されましたが、今年12月1日から、安全運転管理事業所におけるアルコール検知器の使用が義務化されることに伴い、管理が形骸化している事業所に対する摘発と指導を厳しくする狙いがあります。
是正措置命令を発する基準として、以下のような具体例を挙げています。
なお、「是正措置命令」が発せられても改善しないなどの違反をした場合、自動車の使用者には50万円以下の罰金が科せられます。
※警察庁丁交企発第202号(2023.8.15/警察庁交通局交通企画課長)
また、今回の通達では、各都道府県警察本部が安全運転管理者の解任命令を行う場合の基準についても、具体的に明確化しています。
たとえば、
自家用自動車の運行であっても、居眠運転や飲酒運転、無理な運行スケジュールにより速度超過運転を行って事故が発生した場合、運転者の責任だけでなく事業所における安全運転管理の実態が厳しく問われるということです。
【是正措置命令を行う基準】
1 是正措置命令は、次のいずれかに該当することとなった場合に行うことを原則とする。
(1) 自動車の使用者が、安全運転管理者に対し、必要な権限を与えていないため自動車の安全な運転が確保されていない場合
→ 具体的には、夜間又は長距離の運転時における交替運転者を配置する権限を安全運転管理者に与えていないことにより、運転者が過労による居眠り運転に起因する交通事故を起こした場合等が該当する。
(2) 自動車の使用者が、安全運転管理者が法第74条の3第2項の業務を行うため必要な機材を整備していないため自動車の安全な運転が確保されていない場合
→ 具体的には、運転者に対する酒気帯びの有無の確認を行うために必要な数のアルコール検知器を用意していないことにより、当該確認が適切に行われず、運転者が酒気帯び運転を行った場合等が該当する。
2 是正措置命令を行う場合には、是正措置命令を行うに至った原因に応じ、自動車の安全運転を確保するために自動車の使用者が実施すべき内容を適切に示すこと。
→ 具体的には、
・ 安全運転管理者の業務の実施状況を点検し、必要に応じてその改善のために必要な措置をとること。
・ 安全運転管理者による自動車の運転者への指示等が当該運転者に確実に伝わっているか点検し、必要に応じてその改善のために必要な措置をとること。
・ アルコール検知器等の機材が適切に作動する状態にあることを確認し、不具合がある場合等には、その改善のために必要な措置をとること。
・ 運転者の数に対してアルコール検知器等の機材が不足していないかなどを確認し、不足している場合等にはその改善のために必要な措置をとること。
が想定される。
【解任命令を行う基準】
1 解任命令は、次のいずれかに該当することとなった場合に行うことを原則とする。
⑴ 安全運転管理者等が法第74条の3第1項又は第4項の府令で定める要件(以下、単に「要件」という。)を備えないこととなった場合
具体的には、
・ 安全運転管理者等が自ら酒気帯び運転等の違反行為をした場合
・ 30歳未満で安全運転管理者に選任された者について、その後、当該事業所において副安全運転管理者が選任され、要件を備えないこととなった場合等が該当する。
⑵ 安全運転管理者が法第74条の3第2項の規定を遵守していないため自動車の安全な運転が確保されていない場合
具体的には、
・ 安全運転管理者が、最高速度を超過する速度による運転をしなければ、目的地に期限までに到達できないような運行計画を漫然と作成し、当該計画に従って、運転者に自動車を運転させたため、当該運転者が最高速度違反に起因する交通事故を起こした場合
・ 安全運転管理者が、必要な権限が与えられているにもかかわらず、夜間又は長距離の運転時における交替運転者を配置せず、運転者が過労による居眠り運転に起因する交通事故を起こした場合
・ 安全運転管理者が、運転後の運転者に対する酒気帯びの有無の確認を日常的に実施せず、業務中の飲酒に対する抑止効果が失われたことにより、運転者が酒気帯び運転を行った場合
等が該当する。
【通達のポイント】
1・運転者の適性等の把握──運転者の適性、技能及び知識並びに運転者が法令の規定等を遵守しているか把握するための措置をとる
2・運行計画の作成──最高速度違反、過積載、過労運転、放置車両等の行為の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成する
3・交替運転者の配置──長距離運転又は夜間運転となって、疲労等により安全な運転が継続できないおそれがあるときは交替するための運転者を配置する
4・異常気象時等の措置──異常な気象、天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、運転者に安全確保に必要な指示その他安全な運転の確保を図るための措置を講ずる
5・点呼、日常点検、運転者の状態把握──運転しようとする運転者に対して点呼を行う等して、日常点検整備の実施及び過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与える
6・酒気帯び有無の確認──運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器を用いて確認を行うこと(*)
7・酒気帯び確認の記録と保存──前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。(*)
8・運転日誌の備付、記録──運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転した距離その他運転状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させる
9・安全運転指導──運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行う
(改正道路交通法施行規則 2021年11月10日改正/2022年4月1日施行/*2023年12月1日施行)
安全運転管理者が行わなければならない9つの業務については、
小冊子「やる気を持って管理業務を進めよう」にて詳しく紹介しております。
■道路交通法に基づく自動車の使用者に対する是正措置命令等の基準について──警察庁通達
■道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令の施行に伴うアルコール検知器を用いた酒気帯び
の有無の確認等について──警察庁通達
■「安管選任義務違反」等の罰則を強化──道路交通法改正(最近の法令改正)
■酒気帯びチェック体制は万全ですか(危機管理意識を高めよう)
2022年4月に道路交通法施行規則が改正され、安全運転管理者が行うべき業務が7つから9つに増えました。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、酒気帯び確認が重要な業務として位置づけられています。
本冊子は改訂新版として、9つそれぞれの根拠法令に基いて、やる気のない管理者、やる気のある管理者それぞれの業務に対する姿勢をイラストで比較し、わかりやすく解説しています。管理者がやる気を持って業務に臨むことの重要性を実感していただくことができます。
安全運転管理者の業務として、運転前・運転後の「酒気帯び有無」の確認とその記録、記録の保存、並びにアルコール検知器を使用したチェックが義務づけられました(アルコール検知器によるチェック義務の施行は2023年12月1日)。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、飲酒運転根絶に向けた取組みとして位置づけられたものです。
管理者が行うべき運転者の酒気帯び確認方法についてイラスト入りでわかりやすく解説しています(詳細なパワーポイント資料付)。
2023年
8月
15日
火
警察庁はこのほど、一定台数以上の自家用自動車(白ナンバー)を業務などで使用する企業に対するアルコール検知器の使用義務化を令和5年12月1日から施行することを決めました。
世界的な半導体不足などの理由から、検知器の使用義務化を延期していたものですが、全国の安全運転管理事業所に十分行き渡る検知器確保のめどがたったと判断しました。
道路交通法施行規則を再び改正し、今年8月15日に公布しています。
安全運転管理者による酒気帯び有無の確認については、2021年(令和3年)11月10日に道路交通法施行規則が改正され、運転の前および運転後の目視によるチェックと記録の保存が義務化され、2022年(令和4年)4月1日からすでに施行されています。
安全運転管理者を選任する事業所では、運転前後における点呼等の実践化に取り組むとともに、記録の明確化やアルコール検知器の導入に向けて準備をすすめる必要があります 。
なお、8月15日に警察庁から「アルコール検知器を用いた酒気帯び確認についての留意事項」を解説した通達が、都道府県警察本部宛に発せられています。一部は過去の通達と重複する内容ですが、個人で購入したアルコール検知器の取り扱いに関する事項など、検知に関する細かい情報が記載され、安全運転管理者にとっても参考になります。
また、弊社からは小冊子「安全運転管理者のための酒気帯び確認の手引き」を発行していますので、参考にしてください。
チェック義務化の端緒となったのは、2021年6月に千葉県八街市(やちまたし)で白ナンバートラックによる飲酒運転事故が発生し、小学生5人が死傷する惨事となったことです。
事故の車両は建設資材を運ぶ自家用自動車(白ナンバー)であったため、アルコール検知器によるチェックの義務はありませんでした。
この事故を踏まえ、政府は安全運転管理者を選任する事業所に対しても、出発前と帰社時の酒気帯びチェックを強化する方針をとりました。
道路交通法施行規則には以前から安全運転管理者が点呼等により「飲酒、過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができない恐れがないか確認する」ことは義務づけられていました。
しかし、実態として毎日しっかりと点呼業務を行ってきた安全運転管理事業所は少ないと思われます。
自家用自動車の運行であっても、運転業務を専従的に行う従業員は少なくないので、施行規則の改正に踏み切って、アルコールチェックと記録を具体的に規定したものです。
●酒気帯びチェック
酒気帯びの有無を目視等で確認する
●確認の内容を保存
確認の記録を1年間保存する
施行規則 第9条の10(安全運転管理者の業務) に以下の条文が追加される
第6号[号を追加]
運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認すること。
第7号[号を追加]
前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存すること。
※改正前の第6号・第7号は → 第8号・第9号に
公布日:2021年11月10日
施行日:2022年4月1日
【注意ポイント】
●アルコール検知
目視だけでなく、アルコール検知器で確認する
●検知記録の保存
検知による確認の記録を1年間保存する
●常時有効に保持
検知器を常に有効に機能するよう管理する
施行規則 第9条の10(安全運転管理者の業務)
第6号
運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。
第7号
前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。
施行日:2023年12月1日
【注意ポイント】
■スマートフォンなどを活用
安全運転管理者が行う酒気帯び確認は、警察庁交通局の通達によると、
『「目視等で確認」とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することをいう』
としていますから、対面で運転者をじっくり確認することが求められています。
ただし、自宅や出先から現場に直行する運転者などに対しては、対面での酒気帯びチェックが難しくなります。そこで警察庁では、直行直帰などの場合を想定して、以下のように電話による確認やIT機器による点呼を認めています。
『酒気帯び確認の方法は対面が原則であるが、直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよく、例えば、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、
等の対面による確認と同視できるような方法が含まれる。』
■スマホアプリによる代行サービスも利用が可能
これらの措置に対応して、インターネットで酒気帯び確認をする際に利用するアプリなどが作られており、クラウド利用の運行管理システムと連動したサービスを提供している事業者があります。
また、アルコール検知を運転者がリモートで実施したとき、安全運転管理者が不在又は通勤中などで確認が遅れる場合を想定して、クラウド情報を管理する事業者がチェックを代行するサービスなども導入されています。
警察庁の通達では、 安全運転管理者以外の補助者による酒気帯び確認については、業務委託であっても差し支えないとされています。ただし、「運転者が酒気を帯びていることを補助者(委託業者)が確認した場合には、速やかに安全運転管理者の指示を仰ぐことができることとするなど、安全運転を確保するために必要な対応が確実にとられる必要があること」に留意する必要があります。
ネット対応システムを導入すると、対面で確認する場合もアプリが自動記録するので、管理者の業務が効率化できます。 運転者数の多い事業所では、導入を検討してみましょう。
1・運転者の適性等の把握──運転者の適性、技能及び知識並びに運転者が法令の規定等を遵守しているか把握するための措置をとる
2・運行計画の作成──最高速度違反、過積載、過労運転、放置車両等の行為の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成する
3・交替運転者の配置──長距離運転又は夜間運転となって、疲労等により安全な運転が継続できないおそれがあるときは交替するための運転者を配置する
4・異常気象時等の措置──異常な気象、天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、運転者に安全確保に必要な指示その他安全な運転の確保を図るための措置を講ずる
5・点呼、日常点検、運転者の状態把握──運転しようとする運転者に対して点呼を行う等して、日常点検整備の実施及び過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与える
6・酒気帯び有無の確認──運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器を用いて確認を行うこと(*)
7・酒気帯び確認の記録と保存──前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。(*)
8・運転日誌の備付、記録──運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転した距離その他運転状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させる
9・安全運転指導──運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行う
(改正道路交通法施行規則 2021年11月10日改正/2022年4月1日施行/*2023年12月1日施行)
安全運転管理者が行わなければならない9つの業務については、
小冊子「やる気を持って管理業務を進めよう」にて詳しく紹介しております。
2022年4月に道路交通法施行規則が改正され、安全運転管理者が行うべき業務が7つから9つに増えました。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、酒気帯び確認が重要な業務として位置づけられています。
本冊子は改訂新版として、9つそれぞれの根拠法令に基いて、やる気のない管理者、やる気のある管理者それぞれの業務に対する姿勢をイラストで比較し、わかりやすく解説しています。管理者がやる気を持って業務に臨むことの重要性を実感していただくことができます。
安全運転管理者の業務として、運転前・運転後の「酒気帯び有無」の確認とその記録、記録の保存、並びにアルコール検知器を使用したチェックが義務づけられました(検知器チェック義務の施行は2023年12月1日の予定)。
2021年6月の千葉県八街市における白ナンバートラックによる飲酒死傷事故が大きな社会的問題となり、飲酒運転根絶に向けた取組みとして位置づけられたのです。
管理者が行うべき運転者の酒気帯び確認方法についてイラスト入りでわかりやすく解説しています(詳細なパワーポイント資料付)。
※オンライン研修、リモート研修には「自己診断型・教材ツール」の活用を!
コロナ禍を経て、安全講習も多数の運転者を一堂に集めて行う形式が減少し、小グループのオンライン研修やリモート研修を行う事業所が増えています。
このため、運転者個々に「自己診断テスト」や「飲酒運転防止のセルフチェックツール」などを送付して自己チェックを促し、管理者へはメールによって報告しそれに対して個別指導を行うなどの形態で教育活動を実施している事業所が少なくありません。
ぜひ、指導形態を工夫して、安全指導に努めてください。
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