日本交通心理学会第77回大会

日本交通心理学会第77回大会

 平成24年6月9日(土)~10日(日)、早稲田大学東伏見校舎において日本交通心理学会第77回大会が開催されました。


 会期中はシンポジウム「企業研修をどう進化させるか」、特別講演「子どもを対象にした交通安全教育の実践と理論」、「交通心理学の方法論」が開催されたほか、「総合交通」「高齢者・交通事故対策関連」「自転車交通関連」「実験研究関連」の4セッションに分類された研究発表などが行われました。

 

今回は多彩な研究発表の中から

「日本の飲酒運転検挙経験者における飲酒運転回数と刺激要求傾向」

「保育者における交通安全教育の認識と実際Ⅱ」

を取り上げて紹介します。

日本交通心理学会とは…
 日本交通心理学会は1975年日本交通心理学研究会として創立しました。交通に関わる諸問題について心理学を中心とした研究を行うことにより、交通事故の抑止とよき交通環境の建設に寄与することを目的としています。学会の認定資格である交通心理士は、地域や企業の交通安全のリーダーとしての役割を担っており、今後ますますの活躍が期待されています。                                【学会のWEBサイトへ】

◆日本の飲酒運転検挙経験者における飲酒運転回数と刺激要求傾向

「日本の飲酒運転検挙経験者における飲酒運転回数と刺激要求傾向」として独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの杉浦 久美子さんが発表を行いました。

 近年、飲酒運転は減少傾向にあるが、未だ根絶には至っていない。
 その一因として、飲酒運転を繰り返す常習犯の存在が指摘されており、諸外国の報告では常習犯の刺激要求傾向の高さが指摘されているが、日本でも同様の結果が得られるかは未だに確かめられていない。
 そこで、神奈川県警察の協力のもと、飲酒運転検挙経験者の刺激要求傾向についての調査を行った。

飲酒運転検挙経験者は「脱抑制」の要求が強い

 調査は飲酒運転により運転免許取消しとなり、神奈川県警察が管轄している運転免許取消処分者講習会に参加した男性226名と、インターネットで募集したアルコール関連に問題のない一般成人男性55名(健常群)対象とし、面接や質問紙によって調査を行った。

 

 それぞれの刺激要求傾向をはかる尺度として、以下の項目についての質問を行った。

  • TAS…スピードや危険を含むスポーツや活動に携わろうという要求
  • ES…新しい体験や変わった経験をしてみようという要求
  • BS…刺激に対する慣れやすさと同じことの繰り返しに対する嫌悪
  • Dis…社会的な抑制を解除させることへの要求


 その結果、飲酒運転検挙経験者は健常者と比較して、以下のような結果が見られた

  • 健常者に比べ、Disの得点が高い。
  • 20代において、総得点(TAS、ES、BS、Disの合計)、ES、Disの得点が高い。
  • 40代において、Disの得点が高い。
  • 20代では飲酒運転の回数と、Disとの間に強い相関が認められたが、他の年代ではあまり強い相関は認められなかった

飲酒運転の原因に性格が果たす役割が世代によって異なる

 今回得られた結果から以下のようなことが考えられる。

 

  • 若い世代と中年以降では飲酒運転の原因に性格が果たす役割が異なる
  • 先行研究の指摘と同様に、20代では社会的な抑制を解除させることへの要求が飲酒運転のリスク要因の一部となっている
  • 30代以上の世代では、飲酒運転への刺激要求の影響はあまり見いだせない


 以上のことから、若い世代ではDisに対して適切な介入や対策を行うことがその後の飲酒運転の予防につながり、中年以降の世代ではDisと飲酒運転があまり関与しないことが推測されるので、それ以外の要因(アルコール依存や乱用などの病気等)についても更なる調査が必要である。

 

・共同研究者

 中山寿一、松下幸生、樋口進(国立病院機構久里浜医療センター)

◆保育者における交通安全教育の認識と実際Ⅱ

「保育者における交通安全教育の認識と実際Ⅱ」として奈良佐保短期大学地域こども学科の山口直範准教授が発表を行いました。

 2012年の交通事故による15才以下の子どもの死者数(30日以内)は134人であった。不慮の事故で亡くなる子どもの割合を見ても、交通事故による死亡原因は高い傾向にある。
 このような現状がある中で、幼稚園や保育所に勤務する保育者の交通安全教育に関する認識と実践を調査した。


 調査は公立の幼稚園と幼児園に勤務する保育者(46名)と私立保育所に勤務する保育者66人を対象にアンケートを行ない、交通安全に関する考え方と実際の取り組みについての傾向を分析した。

交通安全教育の必要を感じているが実践できていない

 幼稚園と保育所では交通安全教育の実践に差が見られ、すべての項目において、保育所は幼稚園よりも実践できていない。


 とくに「幼児の家族と交通安全に関する情報交換をする」、「交通安全のための研究会や研修会に参加する」、「周辺のハザードマップ(危険地図)を作る」といった項目では幼稚園と保育所の間で大きな差が見られた。

 

  要因として、幼稚園は文部科学省の管轄であり、幼稚園教育要領により交通安全教育が制度化されているが、厚生労働省の管轄する保育所では、保育所保育指針 があるが交通安全教育に関する文言はなく、教育の実施は各所長(園長)の判断に委ねられおり、こういった制度の影響が考えられる。

保育者に交通安全の知識や技術を持たせることが必要

 交通安全教育の必要性はわかっていても、実践できていないのは以下のような要因があげられる。


 保育者養成校では、手遊び、ピアノ、制作などの保育スキルは学ぶが交通安全教育は必須に含まれていない。このため、いざ子供たちに交通安全教育を行おうとしても、保育者に知識や技術がないために実践できない。
 また、保育の現場は大変忙しく、新たに交通安全教育の時間を設けることが難しいこともあげられる。

 

 幼児に対する交通安全教育を推進していくためには、保育者自身に交通安全の知識を身に付けさせることが必要である。また、幼稚園で教えなければならない「人との関わり」や、「自己表現」といったことは、交通安全教育を通しても学ぶことができるので、交通安全教育の時間をつくらなくても教育は可能であると考える。

 

・共同研究者

金光義弘、三野節子(川崎医療福祉大学・医療福祉学部)

日本交通心理学会第77回大会データ

 

・日時 平成24年6月9日(土)~10日(日)

・会場 早稲田大学 東伏見校舎

・主催 日本交通心理学会

・共催 日本交通心理士会

・後援 社団法人全日本指定自動車教習所協会連合会

・プログラム

<シンポジウム>

「企業研修をどう進化させるか」

<特別講演>

「子どもを対象にした交通安全教育の実践と理論」

「交通心理学の方法論」

<研究発表>

・日本の飲酒運転検挙経験者における飲酒運転回数と刺激要求傾向

・ドライバーの外的ハザードと内的ハザードに関する予備的研究

・電車内の迷惑行為に関する観察的検討:女性専用車両との比較

・違反型踏切事故のエラーパターンの研究

・保育者における交通安全教育の認識と実際II

・アフォーダンス理論の注意力向上策としての応用検討(1)

・高齢者の運転回避行動に影響する認知:場面別の検討

・場面別に見た運転技能の年代差

・高齢者の安全性測定法に関する一つのアプローチ

・横断歩道横断中事故の特徴と分類

・最近までの約40年間の交通事故発生原因の分析と対策のあり方

・1970年代と1990年代以降の死者減少期の死者と負傷者の年齢別推移

・自転車運転行動を規定する心理要因の分析:中高生を対象とした質問紙調査データから

・小学校における自転車安全運転教育の有用性検討:児童の態度および認知の変化について

・欧州における自転車利用促進政策と走行環境の整備:ロンドンとパリの事例について

・北欧都市部における自転車道

・見通し条件が異なる交差点におけるドライバの主観評価および運転行動

・バス運転者の運転行動特性と急発進の心理的背景

・ドライバーの歩行者に対するリスク感受性

・ドライブレコーダを用いた運転評価の実用可能性

・事故映像とタブレット端末を用いたハザード出現予測の訓練とその効果

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