このように、ドライブレコーダーの記録は具体的事件において重要な証拠となります。
刑事事件の場合、捜査機関は、事故車(加害車両、被害車両共に)はもちろん、目撃者の車を始めとする周囲の車のドライブレコーダーの記録の有無を確認して収集することを考えます。この場合、ドライブレコーダーの記録は、押収、あるいは任意提出されて、捜査機関の資料として事故態様を証明する証拠となります。
通常の民事事件の場合も、ドライブレコーダーの映像は事故態様を示す客観的証拠となりますが、民事事件の場合、放っておいてもドライブレコーダーの記録が証拠とされるというわけではありません。
それが自分に不利な内容であれば、自ら提出等を見合わせることもありますし、また相手方や目撃者の車のドライブレコーダーの記録は、任意の提出が受けられないこともあり、少なくとも収集のために裁判上の手続等を行う必要があったり、収集できなかったりすることもあります。保険会社の調査でも、まずドライブレコーダーの記録の有無が確認されるものといえます。
民事事件においては、収集したドライブレコーダーの記録は損害賠償請求を行うための証拠として使用します。
まず同記録を基に、事故態様、原因、責任の所在を確認し、過失の有無や割合を確認します。なお、ドライブレコーダーの記録は客観的なものであり、同記録で事故態様が明らかに判明することも多く、そのような場合には、事故態様自体は争いにならないことが多いといえます。
もちろん上記のとおり、必ずしも同記録だけに映っていなければ十分ではないこともありますが、映像から判明する事情に、事故当事者の認識や記憶している内容、その他の証拠も併せて検討すれば、ドライブレコーダーがない場合よりも確実に事故態様の争いを減らすことができます。
証拠として利用する方法は具体的事件によって異なり、ドライブレコーダーの記録が一方にとって不利な証拠であれば、積極的な利用を差し控える場合もありえます。
しかし通常は一方が主張する事故態様の根拠となる証拠として、早ければ交渉段階で相手方に呈示します。裁判ではなく、交渉段階で示すのは、事故態様についての争いをなくし、示談が成立しやすくするような場合が多いといえるでしょう。
交渉が調わず裁判になった場合には、ドライブレコーダーの記録を証拠として提出し、裁判官に見せた上で、事故態様の認定をしてもらうことになります。昨今では、ドライブレコーダーの記録が事故態様の認定に使用された例は多数あります。
ドライブレコーダーの記録は、やはり機械的客観的な映像記録であるため、人の記憶に比べて事実認定に資するものであって、その証拠価値は高いといえます。質問のように、相手方との主張が食い違っても、事故態様が映し出されていればどちらが誤っているのかは容易に判明することになり、事実上争いはなくなることが多いでしょう。
また、ドライブレコーダーの記録などから、当方の主張が誤っていると客観的に判断される場合には、いたずらに争うべきでないという判断をすることも可能となります。このような場合、当方の責任は認められるものの、不要な紛争自体を回避できるという面があるため、やはり有用であるといえます。
よって、加害者側、被害者側のどちらの立場からでも、ドライブレコーダーなどの客観的判断が可能となるツールは、交通事故紛争をなくし、あるいは紛争を最小化するために有用であるといえるでしょう。
(執筆 清水伸賢弁護士)