会社支給の車をプライベートで運転していた際の責任は?

私の友人は最近「会社の社長が車を買ってくれた」といって、通勤や業務はもちろん、プライベートにおいても買ってもらった車を利用しています。このような場合、万が一、事故を起こしたときには会社に運行供用者責任が問われるのでしょうか?本人や会社はどのような対処をしておくべきでしょうか?

■回答(清水伸賢弁護士──WILL法律事務所)

◆会社名義の自動車を従業員に使用させる問題点

 

 会社名義で購入された自動車について、事実上従業員が自由に使用し、プライベートでも利用されることがあります。親族経営の会社において、親族である従業員が会社名義の自動車を自由に使用することなどは特に珍しくありません。

 

 このような場合でも、自動車の所有者は会社です。そのため、特に従業員がプライベートで自動車を利用し、交通事故を起こした場合、会社が運行供用者責任を負うのかが問題になることがあります。

◆運行供用者責任は誰が負うのか

1・運行供用者とは

 運行供用者とは、「自己のために自動車を運行の用に供する者」を運行供用者といい、具体的には「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用によって享受する利益が自己に属する者」(最判昭和43年9月24日)です。

 

 自動車の運行の支配権(運行支配)と運行によって享受する利益(運行利益)の帰属するものということになりますが、ここにいう運行支配、あるいは運行利益は、広く捉えられています。

 

 この点まず運行支配とは、当該自動車の運行を支配する地位や権限を有しているものといえますが、その具体的内容や程度については、事案により様々な場合があります。

 

 裁判例には、運行を指示、あるいは制御すべき立場にある場合や、害悪をもたらすような運行をさせないように監視・監督すべき立場にある場合などに運行支配があったとされたものがあり、会社が運行を容認していたことをもって運行支配を認めるものもあります。

 

 また運行利益とは、必ずしも金銭等の目に見えるような利益を得ている場合だけではなく、事実上の利益や関連性があれば認められる傾向にあります。例えば自動車を、顧客の送迎や、従業員の旅行等の福利厚生に利用する場合などの利益も含まれます。

2・会社名義の自動車を自由に使用させている場合の運行供用者

 質問のように、会社名義の自動車を従業員に自由に使用させている場合、そもそも会社は従業員が会社の車を業務や通勤のみならず、プライベートでも使用することを認めていると解されることになるでしょう。

 

 会社の責任の有無は、自動車の使用状況についての客観的事情や、使用を認めた経営者や,実際に使用している従業員などの当事者の意思を検討して判断されます。

 

 運行支配や運行利益を広く解する判例等の傾向からすれば、質問のように会社名義の自動車を自由に使用させている場合、会社の業務そのものにおける使用や、通勤に使用していた際の交通事故はもちろん、従業員がプライベートで自動車を利用している際に生じた交通事故の場合でも、会社に運行支配、及び運行利益が認められ、運行供用者責任を負うとされる可能性は十分あります。

◆事業所が行うべき対策

 会社として行うべき対策として、まずは会社名義の自動車を従業員にプライベートでも自由な使用を認めるか否かを検討するべきです。使用を認める場合には、事故が生じた場合に会社が運行供用者責任を負わなければならない場合があることは理解しておかなければなりません。

 

 また、プライベートでの使用を認めないとする場合でも、暗黙のルールとするのではなく、当該自動車を特定し、就業規則や車両管理規程等で、会社として使用を認める範囲等を具体的かつ明確に定めておき、従業員に対しても十分に周知しておくべきです。

 

 明確な規程がない場合には、いざ事故が起きた場合に会社の運行供用者責任は免れないと考えるべきですし、規程等があっても、事実上自由に使用されており、会社も黙認していたとされれば、結局会社が運行供用者責任を免れることは難しいため、規程を作るだけではなく、従業員にきちんと遵守させなければなりません。

 

 また、会社としては、従業員に対する交通安全教育を徹底し、交通事故を起こさないように日々注意させるべきです。

 

 さらに、会社として当該自動車を対象とした損害保険に加入することも必要でしょう。今回の質問のような状態で事故が起これば、業務ではなく、従業員がプライベートで自動車を利用していたとしても、少なくとも会社の運行供用者責任が問われる可能性が高いです。

 

 会社所有の自動車を従業員に自由に使用させる場合には、このようなリスクを考慮し、上述のような相応の対策を採っておく必要があります。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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