ペットと交通事故を起こしたら?

先日弊社の従業員が住宅街で散歩中だった犬を轢いてしまいました。犬は動物病院に運ばれて数日治療を受けた後、死亡しました。飼い主は大変な愛犬家で、治療費や慰謝料を請求してきているのですが、ペットとの交通事故における責任や損害賠償について教えてください。

■損害賠償請求におけるペットの扱いについての原則

 動物の愛護及び管理に関する法律は、その第2条1項で、動物が命あるものであることに鑑み、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならないとしており、法律には、同法のように、動物が、他の物品等の無生物と異なり生命を持つ存在であることを前提に規程をしているものもあります。

 

 しかし、交通事故においては、不法行為に基づく損害賠償請求が問題となりますが、動物であるペットに生じた被害について損害賠償請求を請求する場合、その損害の算定に当たっては、原則としてペットは物と同様に扱われます。

 

 すなわち、生き物であるペットであっても、車や衣服等の物的損害の請求と同様に、修理するために必要な費用や、当時の時価などを基に損害が算定されることが原則となるのです。

 

 ちなみにペットが他人に損害を生じさせた場合には、その動物の占有者が責任を負わなければなりません(民法第718条)

■ペットの被害に関して認められる請求

 ペットは法律上、物と同様に扱われることが原則といいましたが、車や衣服と違って生き物ですので、主な損害としては修理費ではなく治療費が生じます。交通事故の場合、同治療費は、不法行為によって生じた損害であるということができますので、ペットが後に死亡したとしても、原則として損害の範囲に含まれることになります。

 

 ペットが事故にあった場合にかかる費用の多くはこの治療費ですが、その他にも、治療やリハビリのために特別な器具やオムツ等が必要となった場合など、不法行為によって実際に生じた損害については、相当因果関係が認められる範囲で損害賠償請求が認められます。

 

 なお、ペットが死亡した場合には、その当時の時価相当額が損害額として算定される場合があります。

■ペットが死傷した場合の精神的損害に対する慰謝料

 まず原則として、物的損害に対する慰謝料請求は、認められません。

 

 そして上記のようにペットが物として扱われる以上、本来であればペットに生じた被害に関し、飼い主に生じた精神的損害の請求、すなわち慰謝料請求はできないことが原則といえます。

 

 ただし、ペットは飼い主が家族の一員として扱っていることも多く、飼い主にとってかけがえのない存在になっていることが少なくありません。通常の物に比べると、ペットに対する持ち主(飼い主)の思い入れも強く、特に死亡などした場合を考えると、通常の物と異なり、代替性も低いということもできます。

 

 そのため、物と同様に扱われることを原則としながらも、ペットが不法行為により死亡したり、あるいは重い傷害により死亡した場合に近い精神的苦痛を負ったりした場合には、社会通念に照らして損害賠償を認めるべき精神的損害とされることがあり、同様の理由から一定額の慰謝料請求を認めた裁判例も存在します。

■慰謝料を認めた裁判例

 名古屋地裁平成20年4月25日判決は、交通事故で重い後遺症を負った飼い犬について、飼い主の夫婦にそれぞれ慰謝料30万円、50万円を認めました。同裁判は控訴されましたが、控訴審である名古屋高裁平成20年9月30日判決でも、減額はされましたが、それぞれ20万円の慰謝料請求が認められています。

 

 他にも、交通事故ではありませんが、動物病院や獣医師の過失によりペットに後遺症が残ったり、死亡したりする事案が裁判となる事例で、ペットの被害についての飼い主の慰謝料が認められているものがあります。

 

 例えばペットが死亡した事案では、東京高裁平成19年9月27日判決は、飼い主三名にそれぞれ金35万円ずつの慰謝料を認めていますし、同高裁平成20年9月26日判決は、慰謝料40万円を認めています。

 

 東京地裁平成16年5月10日判決は、同じく獣医師の過失による飼い犬の死亡について、飼い主二名に金30万円ずつの慰謝料を認めていますし、名古屋高裁金沢支部平成17年5月30日判決は、飼い主二名に、金15万円ずつの慰謝料を認めています。

 

 他人のペットにより、自分のペットが被害を受けた事案でも、例えば大阪地裁平成21年2月12日判決は、他人所有の犬が咬んで飼い猫が死亡した事案で金20万円の慰謝料を認め、同地裁平成27年2月6日判決は、同じく死亡した飼い犬の死亡について金18万円の慰謝料を認めています。

 

 また、上記のように、ペットが死亡した場合には、一定程度の慰謝料が認められることがありますが、死亡までしていない場合でも、後遺症等が残るなどした場合は、慰謝料が認められることもあります。

 

 例えば東京地裁平成20年6月18日判決は、動物病院の過失で飼い猫が後遺症を負った事案で慰謝料5万円を認めました。

 

 なお、以上のとおりペットの被害に関する慰謝料を認めた裁判例は多くあり、通常の物と比べると、ある程度認められやすくなっている面はあります。しかし一方で、ペットの傷害等がそれほど重くない場合や、飼い主との関係性がそれほど深くなかったような場合などには、原則どおり慰謝料請求が棄却されている裁判例もあります。

 

 そのため、慰謝料請求が必ず認められるというものではないことは注意しておくべきです。

■最後に

 以上のとおり、質問の事案でも、治療費は支払を行わなければなりません。慰謝料請求については、飼い主とペットの関係性などによりますが、一定程度の慰謝料請求が認められる可能性があります。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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