車種に応じた安全指導をしていますか?

 2016年1月に長野県軽井沢町で発生したスキーバス転落事故について、さる6月27日、長野県警察本部は「事故の直接原因については死亡した運転者のギアチェンジ操作ミスにある」と結論づけました。

 

 そして「大型バスの運転に不慣れな運転者への指導を怠った」として、バス会社の社長や運行管理者らを業務上過失致死傷の疑いで書類送検しました。 

 

 この事故はいろいろな教訓を含み、バス事業者が運転者の適性診断結果を把握していなかった事実など、多くの視点から検討すべきですが、今回は運転する車種に応じた指導という面で考えてみたいと思います。

■大型バスに限らず、車種に応じた教育が重要

写真はイメージです。事例とは関係ありません
写真はイメージです。事例とは関係ありません

 バス事故で多数の乗客が死傷したことから、国土交通省は貸切バスに関連して「道路運送法」や「指導・監督の指針」などを改正して、経験の浅い運転者への指導を強化しました(※後述)。

 

 ただし、バス事業者だけでなく自家用自動車を使用する事業者でも車の特性に応じた運転者教育をすることが重要です。

 

 

《こんな事故が起こっています》

★交差点でワゴン車が横転し7人が死傷

 2016年3月14日東京青梅市の都道交差点で、大学生7人が乗るワゴン車が横転し、21歳の男性1人が死亡し6人が重軽傷を負いました。

 交差点の手前は緩やかなカーブで、速度の出しすぎとハンドル操作ミスなどが重なり、横転事故につながったとみられています。

★スリップしたマイクロバスが滑落して横転

 2017年4月17日愛媛県内子町の町道で、デイサービスに向かう高齢者を乗せた社会福祉協議会の所有するマイクロバスが、道路脇の落ち葉でスリップして路外へ逸脱し、斜面を滑落して横転しました。この事故でバスに乗っていた9人が負傷しています。

■重心の高い車は横転しやすい

 ワゴン車やマイクロバスなど、重心が高い車はハンドルやブレーキの操作ミス、速度の出しすぎなどで簡単に車体のバランスを崩して横転する危険があります。

 

 道路の縁石などにタイヤがかかったり、ブレーキ操作とハンドル操作を同時にしたときなども、とくに横転しやすくなります。

 

 こうした車両を運転する上では、車両特性をよく知って慎重な操作を行い横転事故を防ぐ必要があります。

 

 また、ワゴン車などに多数の乗員が乗ったり荷物を満載した場合は、カーブや交差点で普段より遠心力などの影響を強く受けることにも留意しておきましょう。

 

■車種に応じたハンドル操作が必要

 低速度の操作でも、慣れない車では事故を起こしやすくなります。 

 たとえば、普段は乗用車に乗ることが多く、ワゴン車やトラック、マイクロバスに乗った経験が少ない運転者は、左折時などハンドル操作を早めにし過ぎて後輪が側溝に脱輪したり、縁石に接触しやすいので注意してください。

 ワゴン車・小型トラックなどキャブオーバー型の車は、運転席が乗用車より車体の前にあるので左折時などに乗用車の感覚でハンドルを切り始めると早く切りすぎることになり、内輪差の影響で後輪が道路の外に逸脱してしまうのです。

 

 乗用車の左折時の軌跡

 ワゴン車の左折時の軌跡


■車高への意識も働きにくい

 さらに、乗用車主体の運転者はワゴン車などを運転していても、車体の高さに注意が向かないことがあるので、うっかり路肩に寄りすぎて車の上部縁が商店の看板や住宅の軒先と接触したりすることがあります。

 

 高さ制限のある駐車場などに誤って進入し、天井の照明器具と接触するといった事故も起こしやすくなります。

■ボディの死角が増加する

 乗用車と比較して、ボディの作る死角が大きい点も注意しましょう。

 

 乗用車の場合も車両前方などに死角はありますが、子どもがしゃがんでいるような場合を除き、歩行者を発見できます。

 

 しかし、トラックや大きなワゴン車の場合、背の低い歩行者などを見落とすことがあります。

 

 また、乗用車の場合、後部座席の窓から左後側方が確認できますが、トラックなどでは見えにくいため、左折時など停止して何度も確認しないと後方や側方にいる自転車・バイクを見落としやすくなります。

 真後ろの方向も死角が大きく見えにくいため、バック時の衝突事故が多くなります。

■普通免許で運転できても車種別の指導は重要

 ワゴン車や小型トラックの場合、普通免許で運転できる車種も多いので、管理者も「大丈夫だろう」と甘く判断しがちです。

 

 しかし、適切な指導をしないで慣れない車種を運転させることは危険です。

 

 運転者に直接ヒアリングして、運転に自信がないとか、車両特性への理解が浅いことがわかったら、駐車場などで実車を使用して車両感覚を養う指導をするか、自動車教習所などに協力を求めて教育しておきましょう。

  

■バス事業者対策/指導・監督の指針を改正

 軽井沢バス転落事故に関しては、現場手前の下り坂でドライバーがギアチェンジの操作ミスをしたことで、エンジンブレーキなどが利かないニュートラルの状態になった疑いがあり、フットブレーキも十分踏み込めなかったことが事故原因とされています。

 これらの事実も踏まえて、国土交通省は貸切バス事業者対策として、「旅客自動車運送事業者が運転者に対して行う指導及び監督の指針」を平成28年11月17日に改正し、12月に施行しました。

 

 主な改正のポイントは次の4点です。

・直近1年間乗務した車種より大型車種を運転する場合には、初任と同等の指導を義務づけ

★改正前 運転者が大型バスや中型バスなどに、直近1年間乗務していなくても、特別の指導や実技訓練の義務はなし。
★改正後 直近1年間に乗務していた車種より大きな車種区分(大型・中型等)の貸切バスを運転させる場合には、初任運転者に準じた特別指導と20時間以上の実技訓練を義務づける。

・新たに雇い入れた運転者、事故惹起者の指導などに20時間の実技訓練を義務づけ

★改正前 初任運転者、事故惹起者への特別な指導及び監督は合計で6時間以上(このうち、実技訓練の実施は努力義務)。
★改正後 貸切バスの初任運転者・事故惹起運転者への特別な指導及び監督に、20時間以上の実技訓練と、実技訓練以外に6時間以上の指導及び監督を義務づける。

安全性向上装置に関する指導項目を新たに追加

★改正前 バス運転者に対する「指導・監督の指針」は10項目。安全性の向上を図る装置についての指導項目はない。
★改正後 バス運転者に対する「指導及び監督の指針」に『安全性の向上を図るための装置を備える貸切バスの適切な運転方法等』(ACC装置など)を追加

ドライブレコーダーの記録とそれらを活用した指導を義務づけ(平成29年12月1日施行)

★改正前 ドライブレコーダーの記録や指導については、機器導入の呼びかけだけで、利用・指導を義務づけてはいない。
★改正後 貸切バスに対しては、一定の性能を満たすドライブレコーダーを装着し映像の記録・保存を行い、その記録を活用した運転者に対する指導・監督を義務づける。

 

 貸切バスを運行する事業者では、改正の趣旨にそって運転者の経験や車種特性に応じた指導及び監督が求められています。

 

 直近1年間はたとえばマイクロバスの運転などが主で中型バスや大型バスの運転に携わっていなかった運転者、新たに雇い入れた運転者等に対しては、必ず20時間以上の実技訓練を実施するほか、実際に乗務する車種を用いた急制動操作等に関する指導を行いましょう。

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