緊急車両に進路を譲ろうとして事故を起こした場合の責任

先日、後方からサイレンを鳴らした救急車が接近してきたので、進路を譲ろうとした際に、隣の車線を走行していた一般車両と接触事故を起こしました。このような場合、事故の原因は接近してきた緊急車両にあると思うのですが、事故の責任を問うことはできるのでしょうか?

■緊急自動車とは

 パトカーや消防車、救急車などのいわゆる緊急車両は、道路交通法や同法施行令で通常の自動車と異なる扱いを受けています。

 

 パトカーや救急車等の外観があれば何でもよいわけではなく、通常の自動車と異なる扱いを受けるのは道路交通法上の「緊急自動車」に該当する場合です。

 

 緊急自動車は、「消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車で、当該緊急用務のため、政令で定めるところにより、運転中のものをいう」(同法39条1項)とされており、緊急自動車として緊急の用務のため運転するときは、サイレンを鳴らし、かつ、赤色の警光灯をつけなければならない(同法施行令14条)とされています。

 

 このような緊急自動車については特別な規定があり、通行禁止の道路でも通行可能ですし、転回禁止や追い越し禁止場所でも必要な場合に転回や追い越しをすることができます(同法41条等)。

 

 また信号など、法令の規定により停止しなければならない場合においても、停止することを要しないとされています(同法39条2項)。 ただしこの場合、緊急自動車は他の交通に注意して徐行をしなければなりません(同法同条但書)。

■緊急自動車接近時の他車の義務

 一方、同法には、緊急自動車が接近してきた場合に他の自動車が負うべき義務も定められています。

 

 すなわち、まず交差点又はその付近において緊急自動車が接近してきたときは、車両は交差点を避け、かつ、道路の左側(一方通行となっている道路においてその左側に寄ることが緊急自動車の通行を妨げることとなる場合にあっては、道路の右側。)に寄って一時停止しなければならないとされ(同法40条1項)、これ以外の場所において緊急自動車が接近してきたときは、車両は道路の左側に寄って進路を譲らなければならないと規定されています(同法同条2項)。

 

 これらの規定の違反に対しては罰則も定められています(同法120条1項2号)。

■緊急自動車の責任

 このように、緊急自動車の走行については例外等が規定されていますが、緊急自動車とはいえ、どのような場合でも事故の責任を負わないとされるわけではありません。

 

 緊急自動車の運転態様に事故の原因となるべき過失があった場合には、緊急自動車の責任、すなわち国や地方公共団体の損害賠償責任が認められます。

 

 緊急自動車は、赤信号で交差点に進入することはできますが、同法39条2項但書で他の通行に注意して徐行しなければならないとされています。

 

 また交差点に進入する際の義務(車両等は、交差点に入ろうとし、及び交差点内を通行するときは、当該交差点の状況に応じ、交差道路を通行する車両等、反対方向から進行してきて右折する車両等及び当該交差点又はその直近で道路を横断する歩行者に特に注意し、かつ、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない<同法36条4項>)や、運転時の安全運転義務(車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない<同法70条>)という義務までもが免除されているわけではありません。

 

 そのため、交差点の状況に注意せずに漫然と進入したり、徐行せずスピードを出しすぎたり、ことさらに前方の自動車を煽るような危険な運転を行ったりしたような過失が事故の原因となっていれば、緊急自動車といえども当然責任が問われることになりますし、少なくとも過失相殺の対象にはなるといえます。

 

 実際の裁判例においても、緊急自動車の過失を認めた例があります。

■今回の事故の責任

 一方で、同法70条の安全運転義務は、緊急自動車の接近によって、進路を開ける他車の運転者にも当然適用があります。

 

 同条により、運転者はその時の状況に応じて他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければいけないという義務を負っています。

 

 そして、緊急自動車の優先の規定は、他人に危害を及ぼすような態様で進路を譲ることまでも強制するものではないと考えられますので、緊急自動車の進路を開けるための場合であっても、進路変更等の際には安全確認をした上で行う必要があります。

 

 今回の質問は、緊急自動車のために進路を開けようとして進路変更したところ、隣を走行していた一般車両と接触事故を起こしたというものですが、この場合の運転者の義務としては、緊急自動車を優先させなければいけないという状況をふまえつつ、その状況に応じて他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならないということになります。

 

 緊急自動車の進路を開けるための進路変更でも、進路変更する車は安全確認をした上で行わなければならないのであり、また、隣の車線を走行している車も、緊急自動車の進路を開けるために隣車線の車が進路変更してくるかもしれないことを予測すべきであるといえるでしょう。

 

 それらのいずれか、あるいは両方の義務を怠った過失によって、接触事故が生じた場合には、やはり基本的には進路を開けようとした車の運転者か、接触した他車の運転者、あるいは両者に責任があるといえます。

 

 質問の場合に、直接接触等をしていない緊急自動車の責任を問うためには、例えば緊急自動車が正当な理由もなく猛スピードで走行してきたり、過度に幅寄せや煽り行為とみられるような態様で走行をしたりするなど、他車が安全確認等をすることを許さないほどの態様で運転されていたような事情が必要だと考えられます。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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