刑事責任を問われない交通事故

先日、交通事故防止セミナーに参加したときに、交通事故を起こしても刑事責任を問われない場合があると耳にしました。それは具体的にどのようなケースなのでしょうか?

■交通事故と刑事責任

 交通事故を起こした場合に生じる責任の一つとして、刑事責任があります。

 

 交通事故が生じた場合、その運転者に、道路交通法、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転死傷処罰法)、刑法などの規定に違反する行為で、罰則が定められている行為があった場合に、その運転者には刑事責任が生じます。

 

 ただし、犯罪が成立するためには、交通事故の当時に罰則のある規定が存在する必要があります。また、その行為が違法であることも必要です。さらに、行為者に故意、または過失があることが必要ですし、さらに精神の障害等の事由により事の是非善悪を弁識する能力(事理弁識能力)又はそれに従って行動する能力(行動制御能力)があることが必要です(責任能力といいます)。

 

 そのため、違法性がない場合や、故意も過失もない場合、あるいは運転者に責任能力がない場合には犯罪が成立せず、刑事責任は負わないことになります。

 

 また、たとえ犯罪が成立したとしても、交通反則通告制度の適用を受けた場合や、警察官や検察官が裁量によって訴追しなかった場合には、刑事責任を負わないことになります。

■犯罪自体が成立しない場合

 まずそもそも、交通事故があったとしても、その当時にその行為について罰則を伴う法律の規定が存在しなければ、刑事責任は生じません。法改正で後から法律の規定ができたり、罰則が付されたりしても、基本的に行為の当時に犯罪ではない行為は罰せられません。

 

 また、例えば反対車線から飛び出してきた対向車を避けるために、やむを得ず急ハンドルで進路変更をして、交通事故が生じたような場合などには、緊急避難(刑法37条1項本文。「自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため、やむを得ずにした行為は、之によって生じた害が避けようとした害の程度を超えなかった場合に限り、罰しない。」と規定しています。)として違法ではないとされ、刑事責任が生じない場合があります。

 

 さらに、運転者が十分注意義務の履行を果たしていたにもかかわらず、交通事故が起きてしまったような場合、運転者に過失が認められないとされ、刑事責任を負わないことがあります。

 

 また、事故当時に上記のような責任能力が備わっていなかった場合、刑事責任が問われないことになります。例えば、予想もしなかった事情で運転中に意識を失い、事故が生じたような場合、行為の責任を問うことは難しい場合があります。ただし、酒酔い運転や、持病等で安全運転ができないことが予想できたにもかかわらず運転し、事故が生じた場合には、刑事責任は免れません。

■訴追がされない場合

・交通反則通知制度

 軽微な道路交通法違反の場合でも、道路交通法違反という犯罪が成立しています。

 

 しかし、これらの犯罪数は膨大であり、これらを全て捜査し、起訴することは現実的に不可能です。そのため、軽微な道路交通法違反の場合、交通反則告知書(いわゆる青切符)により反則行為を告知し、行為者が同処分を受けることを選択して反則金を納付することで、刑事訴追をしないという制度です。

 

 この場合の責任は行政上の責任ですので、同制度の下、決められた反則金を納めれば、運転者は刑事責任を負わないことになります。

・微罪処分・不起訴処分

 刑事訴訟法246条本文は、「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければ


ならない。」としています。

 

 そのため、原則として犯罪が生じた場合、捜査した警察は事件に関する書類等を検察官に送らなければならず(いわゆる書類送検というものです。)、訴追の是非等は検察官が判断することになります。

 

 ただし、同法同条但し書きには、上記の本文に続いて「但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。」と規定されており、これを微罪処分といいます。微罪処分とは、事前に検察官が指定した一定の軽微な事件については、警察官の裁量によって、厳重注意等を行う一方で、書類送検はせずに(なお、微罪処分は月に一度、まとめて検察官に報告されます。)事件を処理するものです。この場合にも、前歴にはなりますが、刑事責任を負わないといえます。

 

 さらに検察官に送致された事件でも、その全てが裁判となるわけではありません。検察官が嫌疑や証拠が足りないと考えた場合には、起訴をしないという判断をすることもありますし、犯罪が成立すると考えられる場合でも、事件の内容や行為態様、被害の内容、示談や反省の状況等を総合的に考慮して、その裁量で、当該事件の起訴を猶予する処分をすることがあります。

 

 これらは不起訴処分と言われますが、このような処分がなされた場合にも、刑事責任を負わないことになります。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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