道路交通法に違反した場合、交通反則通告制度に基づいて反則金を支払うなどの処分をうけますが、反則金なしに刑罰を科される違反があると聞きました。一体どういった交通違反が該当するのでしょうか?
軽微な道路交通法違反の場合に、その全てを捜査して刑事事件として立件することは事実上、非常に困難です。
そのため、軽微な道路交通法違反の場合について、交通反則告知書(いわゆる青切符)により反則行為を告知し、行為者が同処分を受けることを選択して反則金を納付する場合には、刑事訴追をしないという制度を設けており、これを交通反則通告制度といいます。
同制度の下、決められた反則金を納めれば、運転者は刑事責任を負わないことになりますので、道路交通法違反だけを犯している場合には、同制度によって処理されることが多くなっています。
反則行為は、道路交通法125条1項、及び政令に定められており、たとえば、速度超過(30km/時オーバー程度まで)、放置駐車違反、積載物重量制限違反、信号無視、通行区分違反、追越し違反、踏切不停止等、交差点安全振興義務違反、横断歩行者妨害等、整備不良、安全運転義務違反、携帯電話使用で交通の危険を生じさせた場合など、多岐にわたります。
同制度に基づく反則金は、刑罰ではなく行政上の処分ですので、反則金を納めれば刑事責任が生じることはなく、前科にもなりません。
以上のような交通反則通告制度は、比較的軽微な道路交通法違反について、行政上の手続によって処理するというものです。そのため、軽微とはいえない違反行為については、同制度の適用がなく、罰則の適用があります。
道路交通法125条2項は、反則行為を犯した反則者に該当しない場合を定めており、無免許運転、無資格運転の場合、酒酔い運転、麻薬等運転、酒気帯び運転の場合、そして交通事故(道路交通法67条2項:車両等の交通に起因する人の死傷又は物の損壊)を犯した場合には、反則行為に該当したような場合でも、同制度の適用がありません。
また、歩行者や自転車の道路交通法違反は、反則行為として定められておらず、重度の速度超過などの場合にも、適用はありません。
さらに、同制度の適用がある場合でも、自らいわゆる青切符の受領を拒否したり、反則金を納めなかったり、異義を述べたりした場合には、同制度の適用はなく、違反行為が事実であれば、最終的にはその罪に応じて裁判によって罰金刑等が科されることになります。
交通反則通告制度は、大量の事件の処理ができないという事実上の必要性から認められているものであって、自動車を運転する場合には、本来道路交通法違反は違法な犯罪行為であることをきちんと理解して、違反行為を犯さないようにしなければなりません。
(執筆 清水伸賢弁護士)