60歳以上の運転者に配慮していますか

■中高年の交通事故・労働災害を防止しましょう

中高年運転者の事故防止

 最近、高齢運転者の事故が多発していると報道され、75歳以上の高齢運転免許の見直しなどが話題になっています。

 高齢者の事故が発生すると物損事故でも大げさに取り上げられる風潮にありますので、慎重に考えるべき問題と思われますが、事業所でも中高年者について運転管理上の課題はないか考える機会としましょう。

 

 定年の年齢が延長されたことなどで、60歳以上の就労者数が増加しています。

 定年後の再雇用も盛んですので、今後ますます中高年の運転者が占める割合も増えることから、とくに60歳以上の従業員の交通事故防止や通勤時の災害防止をはじめとした安全管理が重要になっています。

 

 体力に応じた運転業務の指導を実施し、交通事故の防止対策を進めましょう。

■労働災害の発生件数では60歳代がトップ

労働災害年齢層別発生件数

 労働者が就業中に災害にあった労働災害の発生件数を年齢層別にみると、全産業では60歳以上の件数がもっとも多く、次いで50歳代となっています(2018年中)。

 業種別にみると交通運輸事業(バス・タクシー・鉄道等)では60歳以上の災害が33.1%を占めて、3人に1人と目立っています。

 このほか社会福祉施設が30.6%、商業が29.1%、建設業では25.9%等となっています。

 

 陸上貨物運送事業では、40歳代がトップで30.8%、50歳代が28.9%、60歳以上は15.6%で第3位です。トラックは40歳台からの災害防止が課題となっています。

 また、件数は少ないものの60歳以上の割合が目立つのは、警備業の47.2%、清掃・屠畜業の45.1%などです。

 

 交通労働災害だけの統計ではないので、災害原因は業種によってさまざまですが、中高年齢者が災害にあいやすいという事実を重く見て、年齢とともに心身機能が変化することを踏まえそれに対応した対策を取る必要があります。

 

年齢別労働災害発生状況2018年

■身体機能への自覚を高めさせる

 厚生労働省の依頼をうけて、陸上貨物運送事業労働災害防止協会が作成した「高年齢者に配慮した交通労働災害防止のすすめ方」という資料があります。

 この資料を参考に、以下のような中高齢運転者への対策をまとめてみました。

 

視野、視力変化への配慮

 視機能の低下は50代から現れ、とくに動体視力の低下が目立ちます。動くものを捉える機能は運転にとっても重要ですので、軽視は禁物です。

  1. 50代以上の運転者に定期的に目の機能検査を受けさせ、自身の目の状態を自覚させる
  2. 年齢とともに視野が徐々に狭まり、横からの自動車や人が見えにくくなるので、左右の確認は顔をその方向に向ける等必要な指導をする
  3. 広い道に出る時はより安全を確認することも配慮し、手前で一度停止し、ゆっくり出て停止して顔を左右に動かす
  4. 水晶体の黄濁化がすすみ(白内障)、薄暮・夜間の見えにくさがすすむので、夜間の減速を徹底させる
  5. 白内障予防の紫外線対策として薄い色のサングラスの着用を指導する
年齢と動体視力

関節組織、筋力変化への配慮

 中高年運転者は関節組織などの老化から、腰痛や荷役作業時の災害にあいやすくなっています。

以下の点の指導に配慮しましょう。

  1. 中高年者には、腰痛防止の作業方法を季節に1回ずつなど継続的に指導する
  2. 持ち運びの荷役作業では、重量、作業量を事前に確認する
  3. 長時間連続運転とならない走行計画を作成するとともに、多めに休憩を取らせる
  4. 加齢による筋力低下で反応が遅れるため、車間距離をあけて走行することを指導する
  5. 長時間運転後は、次のことに配慮する
  • 運転席から降りる際は長時間運転の影響が考えられるので、慎重に降りるよう注意喚起する
  • 運転席での運動や降りたあとの軽いストレッチ体操やウオーキングなどで縮まった関節、筋肉の回復を行うよう指導する
  • 運転後すぐには荷役等負担の大きな作業を行わせないこと

 このほか、年齢ともに股関節周りの筋肉が低下するので、日常的にウオーキングや体操を行うよう指導しておきましょう。

60歳以上の高年齢ドライバー

疲労回復と睡眠の確保への配慮

 

 年齢とともに疲労回復に時間を要するようになるので、以下のことに配慮しましょう。

  1. 走行計画の作成時には十分な休息期間、休憩時間を確保する
  2. 正常な体内時計となるように起床時間等も配慮する
  3. 点呼等での睡眠状況の確認「睡眠不足はないか」をより徹底する
  4.  SAS(睡眠時無呼吸症候群)のスクリーニング検査の実施も配慮する
  5.  「疲労蓄積度自己診断チェックリスト」などの活用をうながす
  6. 疲労蓄積と睡眠不足は特に中高年者の熱中症リスクを高めるので夏場の作業に配慮する

 

※疲労蓄積度自己診断チェックリストについては、厚生労働省のWEBサイトを参照してください。

■中高年のプライドに配慮する姿勢も必要

マイルール

■心理的な変化への配慮

 ベテランはプライドが高く、それが他の運転者の運転ぶりが悪いという態度に現れることもあります。

 また、忙しい時は若い者に気を使い、自分が一肌脱ごうと無理をする傾向になることにも配慮が必要です。

 

  1. 加齢に伴う影響を十分理解させ、安全な運転行動がとれるよう指導する
  2. 長年の経験があるので、自分はこれでよいとする「マイルール」とならないように配慮する
  3. プライドに配慮し、自分自身で気づいて行動修正できるようなアプローチで行う。強制的な指導では納得しない点に注意する
  4. 中高年者は、急な休業者の運転を率先して引き受ける等、無理をしがちなので、業務に過渡の負担がないか十分検討する
急ブレーキの増加

記憶力、認知力の変化への配慮

 

 加齢による心身機能の変化が以下のような症状として現れていないかチェックしておくことも重要です。 

  • 危険な交差点であったことに後から気づくことがある
  • 最近、前の車に追突しそうになったことがある
  • 最近デジタルタコグラフの分析で急ブレーキが目立つ

 これらの状態は記憶力や認知力の低下と関係している可能性があります。

 事故多発地点のことを忘れて漫然と通過しようとしたり、他車の事故などにとっさに対応できず、多重事故などに巻き込まれる危険を意識させてください。また、事業者として以下のような体側をとっておきましょう。

脳トレーニング
  1. 経路別に交通安全情報マップ(危険マップ)を作成し、走行計画作成時に危険箇所を明示し注意を喚起する
  2. ヒヤリハット、KYT(危険予知訓練)等により危険感受性の向上を図る
  3. 脳トレーニング等で脳の活性化を図ることも配慮する
  4. 車間距離をあけること、速度超過にならないことを徹底する
  5. デジタルタコグラフ装備の場合、運転分析を運転者に示して、運転の傾向を自覚させ、安全運転を指導する
  6. GPS等による動態管理をしている場合、健康を含め異常状態を把握した場合の迅速対応ができる体制を整備する 

 老化は、誰にも不可避な変化ですが、個人差が大きいので自覚のない運転者も多いと思われます。高齢になっても元気に活き活きと働くことができるように職場環境を整備しましょう。

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4月25日(木)

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