盗難された社有車で交通事故が起きました

先日弊社の駐車場から車が盗難され、事もあろうに犯人が盗難車で事故を起こしました。このような場合、車の所有者である当社は事故によって生じた損害賠償責任を負わなければならないのでしょうか?

■社有車の盗難と会社の責任

 会社の車が利用されて第三者に損害を与えた場合に、会社が負うべき責任としては、使用者責任(民法715条)と運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)、そして会社自体の不法行為責任(民法709条)が考えられます。

 

 使用者責任とは、ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとするものです。

 

 しかしこれは、主に従業員等の被用者が車の運転をしていた場合の責任であり、質問のような第三者による盗難車の事故の場合には、基本的には認められません。

 

 次に、運行供用者責任は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる。」と規定される責任です。

 

 「自己のために自動車を運行の用に供する者」を運行供用者といいますが、判例は、運行供用者を「自動車の使用についての支配権を有し、かつ、その使用によって享受する利益が自己に属する者」などと定義しており、運行供用者は「運行支配」、及び「運行利益」が認められるかで判断されます。

 

 ただし、判例には、間接的支配ないし支配の可能性で足りるとしたり、客観的・外形的な支配で足りるとしたり、あるいは支配すべき責任があることをもって、運行支配ありとするものもあります。そのため、盗難車によって生じた事故であっても、運行供用者責任が認められる場合もあります。

 

 なお、運行供用者責任は物損には適用されず、人的損害に対する責任です。

 

 また、会社の自動車の管理方法や態様が悪くて車が盗難され、交通事故によって生じた損害と会社の行為(不作為も含む)との間に因果関係が認められるような事情がある場合には、会社の過失によって損害が生じたとして、会社自体の不法行為責任が認められることもありえます。

■責任を免れるケース

 運行供用者責任については、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと、並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、責任を免れるとされています。

 

 会社自体の不法行為責任についても、会社の行為に過失がなければ認められません。

 

 結局、盗難車による事故の場合には、当該会社の自動車の管理方法や態様、特に盗犯防止の措置の有無や程度などについて、個別事案における具体的事情を検討し、会社が注意を怠っていないといえるか、過失がないといえるかが判断されることになります。

 

■盗難車による事故に関する判例等

 令和2年1月21日、最高裁判所第三小法廷は、盗まれた自動車によって追突事故が生じた件について、管理していた会社には過失がなく、交通事故についての責任を負わないとの判断をしました。

 

 同判例も、事案における個別の事情を考慮して、会社に過失等が認められるかどうかを検討したものといえます。

 

 その他の地裁や高裁等の裁判例には、盗難車による事故について、会社の運行供用者責任を認めるものがある一方、逆に会社の管理態様には過失がないとして、会社の責任を認めないものもあります。これらの結論の違いは、具体的な事情が考慮されたことによるといえます。

 

 判例において考慮されていると思われる具体的な事情としては、盗難が行われた時間帯や、その際に駐車されていた場所や道路との位置関係(第三者が容易に侵入等して自動車を持ち出せるかどうか)、自動車の鍵の保管・管理の態様、盗難の態様、盗んだ者と会社との関係性、盗難と交通事故の時間的・場所的近接性、盗難防止装置の設置などの有無、自動車の管理に対する会社内のルールの有無や従業員等への周知の程度、被害届の提出の有無、被害の程度等が挙げられます。

 

 例えば、普段自動車のキーをつけっぱなしで道路際などに駐車しており、鍵の管理の方法や従業員に関する指導等も不十分であるなど、第三者が容易に自動車を持ち出せるような管理の仕方をしていたような場合に、自動車を盗まれて直ぐに交通事故が生じたような場合には、未だに会社の運行支配が及んでいるとして、運行供用者責任が認められやすいといえますし、杜撰な管理方法が会社の過失として、会社自身の不法行為責任が認められる余地もあるでしょう。

 

 会社としては、第三者に盗難された場合でも、責任を負うべき場合があることを理解した上で、普段から適切に自動車を管理する必要があります。下記に社有車の管理について、チェックポイントを整理したので確認してみてください。

■社有車の管理に関するチェックポイント

□ 駐車場に柵やシャッターを設置している

□ 社有車のカギは、キーロッカーなどに入れるなど、厳重に保管している

□ 車両には盗難防止装置を取り付けている

□ 駐車場に監視カメラがある

□ 社有車の使用ルールを従業員に周知している

□ 誰がいつ社有車を利用したかがわかるように、運転日報を活用している

□ 社有車が盗難に遭った場合の通報や、対処について体制が整っている

(執筆 弁護士 清水伸賢)

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