食品配達会社の事故における損害賠償責任は?

最近、コロナウイルスの影響で、外食産業も個別の配達に力を入れ始めています。そこで質問なのですが、配達を請け負った会社の運転者が事故を起こした際に、事故の使用者責任や運行供用者責任は配達を依頼した商店か、配達を請け負った会社かどちらの責任が重いのでしょうか?

■配達を請け負った会社の責任

 昨今の新型コロナウイルスの影響で、外食産業に従事する会社や、飲食店などが個別の配達を他社に依頼することが多くなっています。

 

 このような場合、配達を請け負った会社(以下では「請負会社」といいます)と、配達を依頼した商店(以下では単に「商店」といいます)との契約は、一般的には、請負会社を請負人、商店を注文者とする請負契約であるといえます。

 

 請負契約とは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」(民法632条)という内容の契約です。

 

 質問のような配達は、請負会社が顧客のところまで物を配達することを約束し、商店が配達したことに対する報酬を支払うものですので、請負契約といえます。

 

 請負契約においては、請負会社の運転者が自動車等で交通事故を起こした場合、原則として請負会社が使用者責任や運行供用者責任を負います(なお、運転者が自転車の場合は自動車損害賠償保障法の適用がなく、運行供用者責任は問題になりません)。

 

 通常請負会社は、運転者との間で雇用等の契約を結んで自己の業務に従事させ、業務について指示監督を行うものであり、また自己の業務において自動車を使用するため、運行供用者の地位を負う場合が多いため、運転者が交通事故を起こした場合には、その責任も負うことになります。

■配達を依頼した商店の責任

 以上に対し商店は、原則として交通事故の責任は負いません。

 

 商店は請負契約における注文者の立場ですが、民法は716条本文で、「注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。」とされており、責任を負わないのが原則です。

 

 ただ、同条但書では、「注文または指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。」とされており、商店が具体的に配送の方法や内容に注文または指図を行い、それが原因となって事故が生じたような場合には、商店が注文者として損害賠償責任を負う場合はあります。

 

 また、例えばグループ会社間などで、商店が請負会社に対して一定の指揮命令をするなど、商店が注文者の地位だけではなく、請負会社の事実上の使用者のような地位にあるとされるような場合には、商店に使用者責任や運行供用者責任が認められることがあります。

■配達者と商店、請負会社の関係

 以上からすれば、配達中の交通事故について、商店と請負会社とでは、実際に配達を担当する請負会社の責任が重いということができます。

 

 なお、以上で述べたことは、商店と請負会社の間の契約が請負契約とされた場合についてですが、近年、いわゆるプラットフォーム型のサービスも増えています。

 

 プラットフォーム型のサービスとは、インターネット等を活用して直接利用者と提供者を繋ぐ基盤(プラットフォーム)を提供するサービスであり、例えば弁当の宅配をする場合、弁当を作って売る商店の注文を、配達する運転者(配送者)個人に伝えて、配達させるような場合です。

 

 もちろんこのような場合でも、商店と請負会社の間に請負契約が成立し、交通事故が生じた場合は主として請負会社が使用者責任や運行供用者責任を負うとされることはあります。

 

 しかし、契約によっては、請負会社はあくまでも商店と運転者(配送者)を繋ぐだけであり、請負契約が商店と個人事業主である運転者との間で成立し、自動車等も運転者個人の所有物で配達を行うとされているような場合もあるかもしれません。

 

 もちろん、交通事故の被害者からすれば、内部的な契約関係で損害賠償請求の相手方が左右されるべきではなく、判例も行為の外形を観察して、会社の職務の範囲内の行為に属するとみられる場合に使用者責任を認めています。

 

 また、商店としても単に配達を注文しただけで、運転者に対する使用者責任等を負うとされることは酷ですので、外形的に請負会社の配送業務であれば、原則請負会社が使用者責任を負うとされることが多いと思われます。

 

 しかし、契約内容や、実際の配達形態からみた場合に、請負会社が当然に使用者責任や運行供用者責任を負うとまでいえないような場合もありえますし、少なくとも契約の解釈の違いによって、当事者内部の求償関係に争いが生じるような場合は考えられます。

 

 そのため、商店、請負会社、運転者、いずれの立場からしても、契約内容を確認し、事故が生じた場合に誰がどのような責任を負うのかを確認しておくべきであり、また万一事故等が生じた場合に備え、保険等にも加入しておくべきといえます。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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