貨物運送事業の働き方改革とは?

近年、働き方改革が叫ばれ「働き方改革関連法」が施行されましたが、貨物運送事業者は2024年まで同法導入の猶予があると聞いています。

そこで質問ですが、貨物運送事業の働き方改革とはどういった制度なのでしょうか?また、働き方改革を放置しているとどのような罰則がありますか?

■働き方改革とは

 2018年6月に成立したいわゆる「働き方改革関連法」は、2019年4月から順次施行されています。

 

 法律自体の正式名称は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」といい、労働基準法や労働安全衛生法等、関連する種々の法律を改正する内容になっています。

 

 働き方改革の骨子は大きく3つと言われており、第1は働き方改革の総合的かつ継続的な推進、第2は長時間労働の是正、多岐で柔軟な働き方の実現等のための労働時間法制の見直し、第3は雇用形態に関わらない公正な待遇の確保です。

 

 このうち、第1は働き方改革の基本的考え方を示すものです。第2の内容としては、

 

<1> 時間外労働の上限規制

<2> 年5日間の年次有給休暇付与の義務づけ

<3> 高度プロフェッショナル制度の創設

<4> フレックスタイム制の拡充

<5> 勤務間インターバル制度の導入

<6> 労働時間の客観的な把握の義務づけ

<7> 産業医・産業保健機能の強化

<8> 月60時間超の割増賃金率の引上げ

があります。

 

また第3の内容としては、

<9> 不合理な知遇差をなくすための規定の整備(同一労働同一賃金の実現)

<10> 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

<11> 行政による助言・指導等や行政ADR(※)の規定の整備

 

とされています。

 

(※)ADR・・・労働者と事業主との間の紛争を裁判以外の方法で解決する手続き(都道府県労働局がトラブル解決の援助を行う)

■罰則が伴う規定の内容

 上記のうち、会社に対する罰則規定が定められているのは<1>と<2>の項目です。

 

 <1>の時間外労働の上限については、以前は月45時間、年360時間がいわゆる36協定(あらかじめ労働組合などの労働者代表と会社との間で「時間外労働・休日に関する協定」を結び、労働基準監督署に提出するもの)を締結した場合の時間外労働の上限とされていました。

 

 しかし、臨時的な事情がある場合には、1年のうち6ヶ月を超えない範囲であれば、この上限を超えることができる「特別条項」を定めることができたのです。

 

 今般の働き方改革では、この「特別条項」について、以下の制限が定められました。

 

  • 時間外労働は年720時間以内とする。
  • 時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満とする。
  • 時間外労働と休日労働の合計について、2ヶ月平均、3ヶ月平均、4ヶ月平均 、5ヶ月平均、6ヶ月平均のいずれを計算しても、全て1ヶ月あたり80時間以内とする。
  • 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月を限度とする。

 また、以上の時間外労働の上限規制に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が定められました。

 

 なお、<1>の時間外労働の上限についての施行の時期は、大企業は2019年4月1日から、中小企業については2020年4月1日からとなっています。

 

 上記<2>については、有給休暇をいつ取得するかは労働者が決めることが原則ですが、年間10日以上の有給休暇を付与されている労働者には、会社が年間最低5日の有給休暇を取得させなければならないとされました。 

 

この有給休暇を取得させる義務に違反した場合には、30万円以下の罰金とされています。

■貨物運送事業者の残業時間上限規制

 制度の概要は以上のとおりですが、上記<1>については、自動車運転業務や建設事業、医師などについては、猶予期間を設けた上で規制を適用するなどの措置が採られています。

 

 貨物運送事業者の業務は主に自動車運転業務ですが、同業務については、改正法施行5年後に、時間外労働の上限規制を適用するとされました。

また適用後の上限時間は、年960時間とされています。

 

 ただし、総拘束時間の改善については、将来的な一般則の適用について引き続き検討する旨が附則に規定されています。

 

 これは、自動車運転業務については、現実に長時間労働の実態があることに留意し、猶予期間を設けられたものであり、2024年4月1日から適用されることになります。

■業務体制の見直しの必要性

 貨物運送事業者の働き方改革の概要は以上のとおりです。

 

 働き方改革の内容は多岐に渡り、それぞれの制度の施行時期も異なりますが、事業者としては早期に対応できるよう、業務の効率化を図ったり、従業員の労働時間をしっかりと記録する習慣をつけるなど、準備しておく必要があります。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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