飛び石事故によるフロントガラス破損の責任は?

先日、高速道路を走行していたところ、突然フロントガラスに小石が当たりひびが入りガラス交換になりました。恐らく前車が小石を跳ねたと考えられますので、ナンバーなどは控えているのですが、本当に前車が小石を跳ねたのか確証がありません。このような場合、前車に損害賠償請求はできるのでしょうか?

■飛び石事故は損害賠償請求が困難

 自動車の走行中、道路上に偶然落ちている小石がタイヤに挟まったり、跳ね上げられたりなどして飛散し、他車にぶつかってしまう、いわゆる飛び石事故が発生することがあり、とくに高速道路などで起きることがあります。

 

 飛び石事故は偶然の要素が非常に大きく、通常は意図的に行うことも困難であり、一般的な交通事故や自動車の積載物が落下して生じた事故の場合などに比べると、原因や責任の所在が判明しにくく、損害賠償請求をすることは難しいといえます。

 

 飛び石事故において損害賠償請求が困難な理由は、運転者の過失が認められない場合が多く(A・過失の有無の問題)、また事故の原因を証明することが難しいため(B・立証の困難性の問題)です。

■過失の有無の問題(A)

(1) 過失とは

 損害賠償責任が生じるためには、原則として故意または過失によって他人の権利等を侵害したことが必要です。

 

 そもそも、ここでいう「過失」はどのような行為をいうのかについては種々の見解がありますが、一般的には注意義務違反の行為があった場合に過失が認められるとされます。

 

 そして、一般的に注意義務違反があるとされるのは、その人に危険な事象を予見する義務(予見義務)があり、かつ同事象の発生を回避する義務(結果回避義務)があるのに、いずれかの義務を果たさずに危険な事象が生じてしまった場合と解されています。

 

 ただし、当時の状況からみて予見出来なくても仕方がないような場合にまで予見義務を認め、また予見は出来たとしても、結果を回避することができないような状況であった場合にまで結果回避義務を認めてしまうと、責任を問われる人にとっては非常に酷な結論になります。

 

 そのため過失の判断においては、予見義務の前提として、「予見可能性(危険な事象の発生を事前に予想することができたかどうか)」があることが必要であり、結果回避義務の前提として、「結果回避可能性(結果の発生を回避することができたかどうか)」があることが必要と解されます。

 

 なお「予見可能性」については、実際に危険な事象が発生している以上、純粋に事後的に客観的科学的な見地からみてしまうと、結局全ての事故において結果を予見することが可能になってしまいます。

 

 そのため、当時の状況において一般人の立場から、当該行為から結果が生じることを予想できたかどうかという観点で評価されることが一般的です。

 

  この点、判例は過失を「予見可能性」を前提とした「結果回避義務違反」として捉えていると解されており、概ね同様の考え方をしていると考えられ、ある程度、抽象化された因果関係でも「予見可能性」を認めています。

(2)飛び石事故の場合

 以上を飛び石事故の場合で検討すると、飛び石事故は通常の走行に伴って生じうるものではあります。

 

 しかし、どこでどのような拍子に生じるかは予測できないことが一般であり、通常は予見可能性自体が認められない場合が多いといえます。

 

 また、通常の運転で飛び石が生じること自体、運転者が思うようにコントロールできるものでもありませんので、結果が回避できない場合も多く、結果回避可能性も認められない場合が多いでしょう。

 

 そのため、飛び石事故では、通常は石を飛ばした運転者の過失が認められないことになります。

 

■立証の困難性の問題(B)

 また、不法行為に基づく損害賠償責任については、賠償請求する方が過失や損害を立証しなければならないことが原則です。

 

 飛び石事故は、非常に偶然的要素が大きい上に、瞬間的に生じるものであり、いつ、どの車の、どのような走行が原因で、どこから飛んできたかなど、事実経緯自体がはっきりせず、原因が不明であることがほとんどであるといえます。

 

 昨今はドライブレコーダーの普及で、映像を解析することである程度は判明することもありますが、通常は難しい場合が多いでしょう。

 

 そのため、飛び石事故においては、事実の立証自体が非常に困難であるといえ、石を飛ばした運転者に対する損害賠償請求が認められない事例がほとんどです。

■損害賠償請求が認められる場合

 以上のように、過失の有無の問題(A)、及び立証の困難性の問題(B)から、飛び石事故では運転者に対する責任追及ができないことが一般的であり、飛び石事故について裁判等になった事例のほとんどは車両保険の適用について被害車の運転者と保険会社との争いです。

 

 ただし、実際に損害賠償請求が出来る事案は非常に少ないと考えられるものの、逆に言えば当時の状況からみて、石を飛ばした自動車の運転者に過失が認められ(A)、立証が可能である(B)というのであれば、自動車の運転者に対する損害賠償請求は可能であると言えます。

 

 裁判例でも、高速道路において時速約140kmで路肩を走行してきた加害車両が、第一車線を走行していた被害車両を追い抜いた際に飛び石によって被害車両に損傷が生じたとして、損害賠償請求がされた事案(東京地方裁判所平成30年9月21日判決)で、請求額の一部が認められた事例があります。

 

 同裁判例では、Aの点については、高速道路の路側帯には走行車線から弾き飛ばされた小石などが堆積しがちであること、そこを走行した場合に、小石などを弾き飛ばし、飛び石により周囲の車両に損傷を与えることは予見可能であるとしました。

 

 第1車線すれすれの路肩を時速約140kmの高速で被害車両を追い越したことにつき、速度や他の車両との間隔等の方法を確保すべき義務に違反したとして過失が認められています。

 

 またBの点については、加害車両が被害車両を追い越して前方に出た際に、微少な物体が飛散し、被害車両の左フロントフェンダー付近に物が当たる音声が発生している状況を記録したドライブレコーダーの映像の記録がありました。

 

 また、被害車両に生じていた傷痕などから、少なくとも左フロントフェンダー付近の傷は本件事故によって生じたものと認定し、損害賠償請求の一部を認めました。

■飛び石事故に逢わない対策を

 このように飛び石事故でも、飛び石が生じて他車に被害が生じることを予見でき、また回避することができたにもかかわらず、義務を怠ったような場合には、過失が認められて損害賠償請求が認められる可能性はあります。

 

 ただ、一般的には請求が困難な場合が多いため、飛び石事故に逢わない対策が必要です。運転者は、とくに高速道路において、前方を走行する車が飛び石を飛ばしても当たらないよう、十分な車間距離をキープすると良いでしょう。

 

 事業者としては、ドライブレコーダーの導入や、運行経路の見直しをするなどの対策を取り、車両保険等に未加入の場合には、加入を検討する必要があります。

(執筆 清水伸賢弁護士)

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