「ルート最適化」ソフトの落とし穴に注意しよう

■経路設計を自動化することで安全上の問題はないかを考える

ルート最適化の危険要因

 最近、人工知能(AI)ソフトを活用して配達や配送ルートの最適化に取り組む事業者が増えています。

 

 たとえば食品製造メーカーが、大規模店舗や小売店に自社トラックで食品を配送する場合、どうすれば無駄のない燃費のよい走行ルートを選択できるか、配達の優先順位をどうするかなどはベテランの配車担当者と配達担当運転者が知恵を絞っています。

 しかし、効果的なルート設計をする労力は大変なもので、新人が担当すると四苦八苦するのが実情です。

 

 そこで、クラウド上の道路情報サービスなどを活用して短時間で経路を設計できる人工知能ソフトが登場し、人気を呼んでいるのです。

 自社の走行データを学習させてルート検索に活かせるタイプやドライブレコーダーの画像と連動して、走行記録のチェックができるものがあります。

 ソフトは年々進化していますが、管理者としては、こうした自動化に安全上の落とし穴があることに気づいておく必要があります。

■ルートを適正化する前に特定事情を考慮する必要がある

配送ルートの適正化

★小学生等と遭遇するルートが自動で

 組まれる危険性はないか

 AIによるルート設計が便利であると言っても、業務で利用する場合は様々な条件をチェックしておく必要があります。

 

 たとえば、小学生などの登下校時間帯には登下校道路を走行するのは危険なので、ベテランの配車担当者は、配送の順番を変えたり迂回経路を選択して対処しています。

 その配慮がないと、AIソフトは効率化を優先して登下校の子どもと接近遭遇するような配送ルートを自動的に組むおそれがあります。

 

★配送先の入場ルールなどが重要

 また、工場入口への最短ルートがあったとして、その道は幅員が狭い生活道路で大型車の走行は危険であるため、工場ではトラックに関して別ルートからの入場を指定しているような場合があります。ソフトに頼ると交通違反にはならなくても、工場の入場ルール違反になるおそれがあります。

 

 経験を積んだ配車担当者であれば、個々の配達先を考慮して的確に条件付きの指示をすることができますが、AIにもそうした情報をあらかじめ学習させておき、特定の配送先の条件検索ができるようにしておく必要があります。

■自動ルートは安全を担保しない

配送ルートの適正化

★正確な位置情報を入力する

 相手先に条件のない場所であっても、その他の要素のため適正化ルートでは安全が保障されないケースがあります。

 

 ルート設計ソフトに大雑把な位置情報を入れると、目的地の前までは行けても反対車線に着いてしまってUターンして入り口に入る、あるいは右折横断して入り口に向かうなどの危険な行動を求められる可能性があります。

 その道がUターン禁止場所である場合は違反となり、中央分離帯があれば横断はできないので、迂回するためかえって時間がかかります。

 

 なお、逆に目的地情報が正確な場合、場所によっては、ソフトが狭い行き止まりの荷受け先に入るルートを指定することが考えられます。

 ベテランの安全運転者であれば行き止まり場所を指定されたとき、自分で判断し、そこに入る手前で停車して歩いて配達するでしょうが、運転者によっては行き止まりまで車を入れてしまい、バックで戻るという危険な行動をする可能性があります。

 ルート指示時に、バックする場所へは入らないことを徹底するよう指導しておきましょう。

 

★中高生の自転車などとの遭遇を避ける 

 また、安全重視の配車担当者は、駅前や住宅街の近くなど午後の時間帯に中学・高校生の自転車が多い場所を走行するのを避けるため、そうした地域は、午前中の学校が授業をしている時間帯に配送を済ませるといった工夫をすることがあります。

 団地内への食品配送なども子どもの少ない午前中がよく、小学校低学年の下校時間帯や保育園・幼稚園からの帰宅時間帯は避けるといった配慮が重要です。

 AIに果たしてそうした配慮ができるか、ソフトにかける費用を増やせば可能になるのか、情報付加を検討する必要があります。  

AIによる配送の適正化ルート

★坂道の燃費等を考慮してルート検索を

 することも重要

 

 さらに燃費を考慮する配車担当者は、坂道を登る経路は荷が軽くなる帰社途上に組み、出発直後の荷を満載した状態ではフラットな道、あるいは下り坂の多い配達経路を選択します。

 重い荷物を多量に配達する飲料配達のトラックなどでは走行距離とともに道路の傾斜も重要なポイントです。こうした要素をAIソフトに学習させることができるか確認し、無理なら手動で修正することを検討してください。

 

 また、車種に対する配慮がもっとも重要です。

 AIが指定してくれた適正化ルートを行くとき、狭い道では大型トラックや大型バスの場合は、すれ違い時に看板に接触したり、屋根の軒に接触するおそれがあります。

 さらに、車両総重量が20トンを超えるなど特殊車両の場合は、重さ・高さ指定道路など通行できる経路が限られていることがネックになります。 

 

 車の高さや重量、長さなども考慮して、運転者が安心して走行できる危険のないルートを指示しているか事前に確認する必要があるでしょう。

■経路ミスによる大事故の事例

京急踏切事故2019.9.5
運輸安全委員会の鉄道事故調査報告書より

★大型トラックが通行不能な

 道路に入り、踏切事故に

 

 道路の高さ規制などは、物流事業者やバス会社などの経路設計にとっては非常に重要です。

 

 さる2019年9月5日、神奈川県京急電車の踏切で、立ち往生した大型トラックに快速特急列車が衝突、トラックの運転者が死亡したほか、72人が重軽傷を負う事故が発生したのを覚えている方は多いと思います。

 

 この事故の大きな原因の一つは、運転者が経路を間違ってトラックが通り抜けできない高さ制限(2.8m)のある道路に迷い込み、国道に戻ろうとして狭い道路から踏切に入らざるを得なくなり、曲がりきれずに踏切で立ち往生したことにあります。経路案内ソフトのせいではないと思われますが、経路ミスが命取りとなりました。

 

 亡くなったトラック運転者がなぜ経路を間違ったのかは、国土交通省の報告書を読んでも不明ですが、大型トラックが狭い道路に迷い込むことの恐ろしさを実証した事故です。

京急踏切事故
運輸安全委員会の鉄道事故調査報告書より

★高さ制限などを無視した経路

 では、危険が大きい

 

 担当者が経路設計ソフトにトラックの高さ制限等の条件を入力し忘れて小型車しか走行できない経路を選んだり、ソフトの道路情報が最新でないことから、現実の道路状況に適さない経路を選んだ場合、運転者がそれに気づかないと危険な状況に陥ります。

 

 なお、京急踏切事故ではトラックが右折して狭い道路に入る直前の国道に高さ制限の案内標識があり、気をつけて見ていれば運転者が確認できたはずであることが指摘されています。

トラックが右折した国道交差点の手前にあった道路案内標識

京急踏切衝突事故

運輸安全委員会の鉄道事故調査報告書より

★運転者が自動ルートを過信しすぎると、標識などを見落とす危険も考えられる

 

 運転者自身が常にミスをする可能性があり、ソフトだけの責任にはできません。また、適正化ルートで運転者の負担が軽減し、効率化から利益が出てそれが運転者の労働環境の改善に結びつくなら、こうしたソフトが安全運転に資する部分も大きいと言えます。

 しかし、自動の経路案内に頼りすぎてしまうと、運転者本人の交差点などにおける判断や標識などの確認が疎かになる危険性があることを考慮しましょう。

 

 ソフトを過信しないで、「最後は自分自身の判断と確実な確認で安全な経路を保つ」ことを運転者にしっかりと指導しておく必要があると思われます。 

■外部サイト、参考ページ

■当サイト・参考記事

 ・ 運転経路の指導は万全ですか危機管理意識を高めよう 

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