安全運転管理者による酒気帯びチェックを義務化

■運転の前後に確認し、1年間記録を保存──2022年4月1日施行

安全運転管理者のアルコール検知義務化
警察庁作成の啓蒙リーフレットより

 

 2021年(令和3年)11月10日に道路交通法施行規則が改正され、今まで、安全運転管理者の業務としては簡単にしか触れられていなかった、運転者の酒気帯びの有無についての確認が明文化され、運転の前および運転後のチェックが義務化されました。

 2022年(令和4年)4月1日から施行されます。

 

 なお、改正に伴い事業用自動車と同様にアルコール検知器によるチェックも導入されることになりましたが、機器の手配が間に合わない恐れがあるため、検知器によるチェック義務づけは10月1日施行となります()。

 

 施行規則に定められた「安全運転管理者が実施すべき業務」の項目が改正されたもので、酒気帯び運転有無の確認記録を1年間保存することも定められました。

 

 安全運転管理者を選任する事業所では、運転前後における点呼等の実践化に取り組むとともに、記録の明確化やアルコール検知器の導入に向けて準備をすすめる必要があります(警察庁作成のリーフレットは警察庁webサイトからダウンロードできます) 。

※続報/半導体不足が続いているため、10月1日までに市場が求める台数の確保は不可能であること

 がわかり、警察庁は7月14日に検知器使用の義務化時期をさらに延長することを決めました。義務

 化の時期は未定で、今後のアルコール検知器の供給状況をみて判断されます。事業所では、いつ施

 行されても対応できるように、検知器使用の準備を進めましょう(2022.7.15更新)。

■白ナンバートラックの飲酒事故が発生

事業用自動車では検知器チェックが義務化されている
事業用自動車では検知器チェックが義務化されている

 改正の端緒となったのは、2021年6月に千葉県八街市(やちまたし)で白ナンバートラックによる飲酒運転事故が発生し、小学生5人が死傷する惨事となったことです。

 

 事故の報道では運送事業をしているトラックにみえましたが、実際は建設資材を運ぶ自家用自動車(白ナンバー)であったため、アルコール検知器によるチェックの義務はありませんでした。

 

 この事故を踏まえ、政府は安全運転管理者を選任する事業所に対しても、出発前と帰社時の酒気帯びチェックを強化する方針をとりました。

 

 道路交通法施行規則には、安全運転管理者が点呼等により「飲酒、過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれがないか確認する」ことが義務づけられています。しかし、実態として毎日しっかりと点呼業務を行ってきた安全運転管理事業所は少ないと思われます。

 自家用自動車の運行であっても、運転業務を専従的に行う従業員は少なくないので、今回、施行規則の改正に踏み切って、アルコールチェックと記録を具体的に規定したものです。

■運転前と運転後にダブルチェック──道路交通法施行規則の改正概要

●酒気帯びチェック

 

酒気帯びの有無を目視等で確認する

●確認の内容を保存

 

確認の記録を1年間保存する


施行規則 第9条の10(安全運転管理者の業務) に以下の条文が追加される

 

第6号[号を追加]

 運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認すること。

 

第7号[号を追加]

 前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存すること。

 

※改正前の第6号・第7号は → 第8号・第9号になる

 

公布日:令和3年11月10日 

施行日:令和4年4月1日

 【注意ポイント】

  • 目視等で確認とは、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等で確認することを示す。
  • 安全運転管理者の不在時など管理者本人による確認が困難な場合は、安全運転管理者が副安全運転管理者または安全運転管理者を補助する者に、酒気帯びの確認を行わせることは差し支えない。
  • 酒気帯びの確認は運転を含む業務開始前や出勤時および業務終了後や退勤時に行うことで足る。

■記録の保持は運転日誌が妥当か

 安全運転管理者の業務の中で、運転者管理面の帳票といえば、「運転日誌の備付、記録」が定められていますので、運転日誌に酒気帯びの有無の確認記録やアルコール検知器を使用した場合の記録欄を設けることが、現実的な対処と言えます。

 

 運転日誌とは別に、運行管理者のように点呼記録簿をつけるという方法もありますが、そこまですると業務が煩雑になりますので、運転日誌の中に、運転前と運転後の酒気帯び確認欄を設けておくとよいでしょう。

 

 なお、下は、事業用自動車が使用している点呼記録簿の雛形例です。運行管理者用ですので「睡眠不足等の状況」「交替運転者に対する連絡」などのチェック欄がありますが、記録をとる際の参考になります。

■携帯型の検知器を用意し出先でもアルコール検知点呼を

 自宅や出先から現場に直行する運転者などに対しては、対面での酒気帯びチェックが難しくなりますが、警察庁では、直行直帰する運転者に対して、携帯型アルコール検知器を携行させるなどして、

  1. カメラ、モニター等によって、管理者が顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
  2. 電話等によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法

で実施すれば、改正後の施行規則第9条の10第6号の業務に該当すると認めています。

■2022年10月1日以降、アルコール検知器によるチェックを義務づけ

●アルコール検知

 

目視だけでなく、アルコール検知器で確認する

●検知記録の保存

 

検知による確認の記録を1年間保存する

●常時有効に保持

 

検知器を常に有効に機能するよう管理する


施行規則 第9条の10(安全運転管理者の業務) が以下のように改正される

 

第6号

 運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと

 

第7号

 前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。

 

施行期日:令和4年10月1日(延期

【注意ポイント】

  • 国家公安委員会が定めるアルコール検知器については、酒気帯びの有無を音、色、数値等により確認できるものであれば足り、特段の性能上の要件は問わない。

【アルコール検知器が原因となる新型コロナ感染に注意

 2022年3月10日、鳥取県は県内で「アルコール検知器が原因とみられる新型コロナウイルスの感染クラスター」が郵便局など複数で発生したと公表し、注意を呼びかけています。

 同県では事業所などに対して、アルコール検知器を使用するたびに消毒することや使用時の環境の換気を徹底し、検知器に息を吹き込むときは他の人との距離の確保が必要であることなど注意喚起をしています。

【参考】安全運転管理者の業務(改正道路交通法施行規則 第9条の10)

1・運転者の適性等の把握──運転者の適性、技能及び知識並びに運転者が法令の規定等を遵守しているか把握するための措置をとる

2・運行計画の作成──最高速度違反、過積載、過労運転、放置車両等の行為の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成する

3・交替運転者の配置──長距離運転又は夜間運転となって、疲労等により安全な運転が継続できないおそれがあるときは交替するための運転者を配置する

4・異常気象時等の措置──異常な気象、天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、運転者に安全確保に必要な指示その他安全な運転の確保を図るための措置を講ずる

5・点呼、日常点検、運転者の状態把握──運転しようとする運転者に対して点呼を行う等して、日常点検整備の実施及び過労、病気その他の理由により正常な運転をすることができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与える

6・酒気帯び有無の確認──運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認する(新設*)

7・酒気帯び確認の記録と保存──前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を1年間保存する(新設*)

8・運転日誌の備付、記録──運転者名、運転の開始及び終了の日時、運転した距離その他運転状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させる

9・安全運転指導──運転者に対し、自動車の運転に関する技能、知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行う 

(改正道路交通法施行規則 *2021年11月10日改正/2022年4月1日施行)

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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、安全講習も多数の運転者を一堂に集めて行う形式を控えることが求められています。

 このため、次善の策として運転者個々に「自己診断テスト」や「飲酒運転防止のセルフチェックツール」などを送付して自己チェックを促し、管理者へはメールによって報告しそれに対して個別指導を行うなどの形態で教育活動を実施している事業所が少なくありません。

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