信号のない横断歩道に差し掛かったら…

信号のない横断歩道で、歩行者が渡ろうとしていたら、自動車は横断歩道手前で停止しなければなりません。しかしながら、多くの都道府県で停止率は低迷しています。万が一、横断歩道を横断する歩行者に衝突したら、どのような交通違反に問われ、事業所はどういった責任を問われますか?

■横断歩道に関する規制

 横断歩道は、文字通り歩行者が道路を横断するために設けられた区域であり、歩道と車道が交差する場所であるため、当然歩行者と自動車の事故が生じる可能性も高くなります。

 

 信号機が設置されていない横断歩道も多く存在し、そのような場所ではさらに事故の可能性が高まるといえます。

 

 そのため、道路交通法では、横断歩道における歩行者の安全を確保するための規制が設けられています。

 

 道路交通法38条1項は、車両等は、横断歩道等に接近する場合には、横断歩道を横断しようとする歩行者等がないことが明らかな場合を除き、横断歩道の直前(停止線があるときはその直前)で停止することができるような速度で進行しなければならないと定めています。

 

 またこの場合、横断歩道を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、その横断歩道等の直前で一時停止し、かつその通行を妨げないようにしなければならないとされています。

 次に同法同条2項は、車両等は、信号機等のない横断歩道やその手前の直前で停止している車両等がある場合に、停止車両等の側方を通過して前に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならないと定めています。

 

 そして同法同条3項は、車両等は、信号機のない横断歩道等、及びその手前30m以内の道路においては、軽車両を除く前方を進行している他の車両等の側方を通過してその前方に出てはならないと定めています。

 

 なお、これらの規程には罰則の適用もあり、故意に同条違反を起こした場合には3月以下の懲役、又は5万円以下の罰金(同法119条1項2号)という刑が定められており、過失によって上記の38条の各規程に違反した場合でも、10万円以下の罰金(同法119条2項)の刑が定められています。

 

 これらは交通反則通告制度(いわゆる青切符)の対象ではありますが、遵守しなければなりません。

■交通安全教育の必要性

 当然のことですが、これらの横断歩道前での減速や一時停止、一定の場合の追い越し禁止などの規程は、具体的に事故が生じていない場合であっても適用されますので、運転者はこれらの規程を遵守する必要があります。

 

 日本自動車連盟(JAF)の調査では、信号機のない横断歩道での一時停止率を調査して都道府県別にランキング形式で出しており、2020年の調査で1位の長野県の停止率は、72.4%と群を抜いています。

 

 これは、同県の交通安全教育の成果ではないかと思われますが、他方、同年の調査の下位の県では、一時停止率が10%にも満たないところもいくつかあります。

 

 この点、2018年の調査で0.8%となり最下位であった栃木県は、同調査結果を受けてキャンペーンと取締りの強化を行い、周知に努めたところ、2020年の調査では14.2%まで上がっていますので、やはり運転者に対する周知や交通安全教育は重要であるといえるでしょう。

■横断歩道上における歩行者との事故の過失割合

 上記のように、横断歩道を通過する車には重い注意義務が課され、歩行者は横断歩道上ではほぼ絶対的に保護されるため、信号機のない横断歩道上の事故においては、原則として歩行者の過失を問題とすることはできないとされることが一般です。

 

 すなわち過失割合は、基本的には歩行者側に過失が認められる場合はなく、例外的に夜間や幹線道路の場合5%程度、歩行者が車の直前直後で道路を横断したり、突然飛び出したり、後退したりするなどの行為があった場合には5~15%程度が歩行者の過失とされる場合があります。

 

 夜間は車からは歩いている歩行者を見つけにくい一方、歩行者からはライトを付けていれば自動車を見つけやすいということから、歩行者にも若干の過失を認められる場合があります。

 

 幹線道路を横断する際には、歩行者もある程度左右の安全確認をするなど、慎重に横断しなければならず、怠った場合には歩行者にも過失が認められることがあります。

 

 また飛び出しや後退など、歩行者側に原因がある場合も、その程度によって歩行者の過失は認められます。

 

 他方、場所が住宅街や商店街の場合や、歩行者が児童や高齢者の場合、集団で横断している場合などの場合には、車両側により注意する義務があるため、車両の過失割合は5%程度高くなります。

 

 歩行者が幼児や身体障がい者の場合や、その他車両に著しい過失があった場合には10%程度車両側の過失が高くなることもあり、重過失があるとされる場合には、20%程度高くなることもあります。

■信号のない横断歩道上での交通事故における事業所の責任

 従業員が業務における運転中に横断歩道上の歩行者と事故を起こした場合、従業員を雇用している会社ないし事業所が運行供用者責任や使用者責任を負う場合の被害者との間の過失割合は、運転者の過失割合と同様になります。

 

 このように、横断歩道上の歩行者との間の事故では、事業者の責任も重くなるといえますので、普段から従業員に対する安全教育等を行うなどの対応を採ることが必要です。

執筆 清水伸賢弁護士)

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