安全運転管理者選任事業所のアルコールチェック義務化

本年4月より、5台以上の社有車を所有する安全運転管理者選任事業所に、アルコールチェックが課されることとなりました。また、10月には機器を使用しての検査が求められると聞いています。万が一、アルコールチェックを実施しなかった場合に、事業所に科せられる罰則などを教えてください。

■アルコールチェックに伴う道路交通法施行規則の改正

 令和3年11月10日「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令」が公布され、安全運転管理者の義務や管理方法についての規程を拡充する規則の改正が行われました。

 

 以前から、一定の事業者が配置しなければならない安全運転管理者には、運転前の運転者に対するアルコールチェック等が義務づけられていましたが、運転後における酒気帯びの有無の確認や、確認の内容を記録することは義務づけられておらず、またアルコールの確認方法についても具体的に定められてはいませんでした。

 

 今回の改改正では、これらの点について改正し、安全運転管理者が行う業務として、運転前後のアルコール検知器を用いた酒気帯びの有無の確認等を義務づけることになっています。

 

 同改正は、同年6月に千葉県八街市で発生した飲酒運転による交通死亡事故を受けて、交通安全対策に関する関係閣僚会議で同年8月4日に決定された「通学路等における交通安全の確保及び飲酒運転の根絶に係る緊急対策」に基づく改正です。

 今回の法改正で、これまで貨物自動車運送事業法の一般貨物自動車運送事業(他人の需要に応じ有償で自動車を使用して貨物を運送する事業者・いわゆる緑ナンバー)の事業者に課せられていたアルコールチェック等の規制を、一定の白ナンバー(自社の荷物等を運ぶために自動車を使用する)事業者にも適用するもので、改正の対象となる事業者は、乗車定員11名以上の白ナンバー車1台以上を保持しているか、または白ナンバー車5台以上を保持している事業者となります。

 

 道路交通法等が改正される契機には、今回の改正のように凄惨な交通事故が生じて社会的に問題となったことにより従前の規定が見直され、より厳しい制限が課されることがあります。

 

 より厳しい制限は、市民の移動・移転の自由や営業の自由等を制限する面があるため、慎重になされなければなりませんが、他方、社会状況や人々の生活、モータリゼーションのさらなる高度化などの変化に伴い、時代に合った規制内容が検討される必要もあり、社会的に注目を集めるような交通事故が改正の契機となることは、今後もあると考えられます。

■具体的な改正内容

 道路交通法74条の3第2項は、安全運転管理者が内閣府令で定める自動車の安全な運転を確保するために必要な業務を行うべき旨を規定し、道路交通法施行規則9条の10がここにいう内閣府令で定める安全運転管理者の業務を具体的に規定しています。

 

 今回の改正は、2つの段階があり、まず令和4年4月1日からは、運転前後のアルコールチェックと内容の記録、保存が必須となる改正で、同条に6号「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認すること。」という義務と、7号「前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を一年間保存すること。」という義務を加えるものです。

 

 具体的な記録の内容は確認者名、運転者、運転者の業務に係る自動車登録番号又は識別できる記号、番号等、確認の日時、方法、酒気帯びの有無、指示事項、その他必要な事項ですので、各事業所共通のチェックシートなどの定型書式を作成しておくべきといえます。

 

 そして、同年10月1日からは、同6号が「運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であって、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。」となり、同7号が「前号の規定による確認の内容を記録し、及びその記録を一年間保存し、並びにアルコール検知器を常時有効に保持すること。」と改正されます。

 つまり同年4月1日からは、アルコールチェックと記録及び保存が必須となり、同年10月1日からは、その方法としてアルコール検知器を用いなければならず、同機器を常時有効に保持することも義務とされます(※編集部注)

 

 「常時有効に保持する」とは、機器が正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことであり、保持自体が義務とされているため、機器の故障で酒気帯びを確認出来なかったことは、正当化されない(言い訳にならない)ことになります。

 

 そのため、基本的には毎日機器の状態が正常であるかは確認しなければならないと考えるべきです。

 

 なお、確認結果の記録は1年間保存すると規定されていますが、定期的にどこかに提出する義務などを定めた規定はありません。

 

 ただし、同法75条の2の2は、「公安委員会は、自動車の安全な運転を確保するために必要な交通安全教育その他自動車の安全な運転に必要な業務の推進を図るため必要があると認めるときは、自動車の使用者又は安全運転管理者に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。」と規定しています。

 

 そのため、業務中の従業員が事故等を起こした場合などには、記録の提出を求められることがあるといえますし、確認結果を適切に記録・保存していなかった場合は、安全運転管理者の解任を命じられることがあります(同法74条の3第6項)。

※編集部注世界的な半導体不足が続いているため、10月1日までに市場が求めるアルコール検知器台数の確保は不可能であることがわかり、警察庁は2022年7月14日に検知器使用の義務化時期をさらに延長することを決めました。義務化施行の時期は未定ですが、今後の検知器の供給状況をみて判断されることになります(2022年7月15日更新)。

執筆 清水伸賢弁護士

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