花粉症の運転者が多く困っています

残念ながら、弊社のドライバーの多くが花粉症です。花粉症と言えばスギやヒノキが有名ですが、従業員の中には、イネやブタクサに反応する者もいて、ほぼ1年中困っています。運転中のくしゃみを抑えるために、該当のドライバーには服薬をすすめていますが、眠気がでる薬もあり、対応に苦慮しております。万が一、花粉症のくしゃみや、薬による眠気で事故を起こした場合の事業所の責任と、普段の対応策を教えてください。

■花粉症と運転行為

 道路交通法66条は、「過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない。」と定めており、同法違反については罰則も定められています(同法117条の2第3号、117条の2の2第7号)。

 

 花粉症の症状は、その程度によっては運転に支障をきたす場合があります。涙や鼻水によって、運転に集中できず、あるいは視界が遮られるなどして危険な場合がありますし、くしゃみも、時には肋骨を骨折するほど大きな衝撃がかかることもあり、特に何度も繰り返すような場合には、ハンドルの誤操作に繋がる可能性があります。

 

 時速60キロで走行している場合、くしゃみで目を瞑って1秒間視界が遮られると、その間に約16メートル進む計算になりますので、花粉症の症状自体が非常に酷いときには、上記の道路交通法違反に該当することもありえます。

 

 また、花粉症の薬として、抗ヒスタミン薬を服用する場合がありますが、同薬は鎮静作用があり、神経の伝達が鈍くなり、眠気を引き起こしたり、集中力や判断力が低下したりする場合もあります。

 

 その程度にはよりますが、服薬でこのような症状が生じることが分かっていて、正常な運転ができないおそれがあるのに運転したような場合には、上記の道路交通法違反になりえます。

 

 また、同条違反にまではならないとしても、花粉症の症状や服薬による症状が原因で運転に支障が生じるようなおそれがある場合には、症状が治まるまで運転を中止しなければなりません。

■花粉症に関連する裁判例

 花粉症と交通事故に関する裁判例として、2017年4月に花粉症のくしゃみなどの症状で追突事故を起こし、3人が死傷した件について、当時の自動車運転過失致死傷罪の成立を認めたものがあります(松山地裁今治支部平成31年2月2日判決)。

 

 同裁判で検察官は、運転者の過失を「花粉症の症状のくしゃみや目のかゆみがひどくなり、前方注視が困難な状態になることが予想されたのであるから、直ちに運転を中止すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、直ちに運転を中止せず、速度を維持したまま運転を継続した」としています。

 

 これについて裁判所も、「過失の態様について見ると、被告人は、花粉症のためくしゃみや目のかゆみがひどくなってきていたところ、容易に駐車できる場所もあったのに、そのまま運転を続けたことで、前方注視が困難になり、自車を対向車線上にはみ出させて被害車両に衝突させたものである。たとえ、事前に花粉症対策の薬を服用していても、上記のとおり現に症状が出てしまった以上、速やかに運転を中止しなければならないことに変わりはないのであり、過失は軽いとはいえない」としています。

 

 このように、花粉症がきっかけでも死傷等の重大な結果が生じ、刑事責任が認められることもありますので、注意が必要です。

■事業所の責任

 一般に交通事故が生じた場合には、そもそも事業者は免責される事由がなければ使用者責任や運行供用者責任を負います。

 

 また事業所としては、各ドライバーの健康状態を把握しておくべき必要があります。上記のような花粉症の症状があったり、服薬により正常な運転ができないおそれがあったりすることも確認しておかなければならず、それを怠って交通事故が生じた場合には、事業者の責任の程度が重くなり、ドライバーへの求償(※)の割合が減じられる可能性があります。

 

 また、例えば明らかにドライバーが上記の道路交通法66条に違反するような状態であったにもかかわらず、事業者がそれを知りながらあえて運転させて交通事故が生じ、死傷者が出た場合には、事業者自身も同様に刑事罰が課される可能性もあるといえます。

 

(※)求償とは…弁済をした一定の者が、他人に対し賠償または償還を求めること

■普段の対応策

 普段の対策としては、まずはマスクの着用や、衣服や車内の清掃、換気など、一般的な花粉症対策を万全にしておくことが必要です。ドライバー自身の花粉症の症状の程度を把握し、また服薬による影響がないかどうかを確認しておくことも大事です。

 

 また、上記の裁判例からすれば、運転者としては、花粉症の症状が生じ、運転に危険が生じると予想される場合には、そのまま運転を続けず、運転を中断することも考えるべきといえます。

 

 事業者としては、日頃から運転者の健康状態等を把握し、また危険が予測される場合に運転を中断することなど、交通安全教育を徹底しておくべきです。

執筆 清水伸賢弁護士

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