疲労・居眠運転に注意しましょう

■事故の約2割に居眠りが関係しているという研究もあります

 警察庁のデータによると、居眠運転による事故として統計上で明らかな数は、年間1.2%程度となっています。

 2022年の死亡・重傷事故の分析によると、飲酒運転を除く事故のうち居眠運転が原因とされるものは285件で、全体の約1.2%とされています(令和4年中における交通事故の発生状況について)。

 

 ただし、運転者死亡で居眠りが実証できない場合や、居眠運転をしていた運転者が「わき見をしていた」と供述する例も少なくありません。居眠運転は過労運転が疑われ、事業者が追及されるため、わき見などの過失を装うという心理があります。

 

 そこで、実態として欧米並に2割程度は居眠運転による事故ではないかと推測する研究もあります(※)。

居眠運転事故

※[高速道路での居眠り運転防止に向けた 効果的な対策に関する調査研究」(公益財団法人高速道路調査会)

 

■こんな事故が起こっています

●居眠運転の送迎車が電柱に激突!

 さる1月25日早朝、福岡県粕屋町の県道で、20人が乗ったマイクロバスが電柱に衝突する事故がありました。

 この車は、食品加工工場の送迎用マイクロバスで、乗員はペルー人やフィリピン人などの外国人労働者でした。

 全員が搬送され、男女3人が骨折などの重傷を負いましたが、命に別条ないということです。

 

 64歳の日本人運転者が「体調不良で意識が飛び、居眠りをした」と供述しています。事故直前に対向車のミラーにも接触していて、コンビニエンスストアに入ろうとした他の車を避けようとして、道路脇の電柱に衝突しています。


●大型トラックに追突し運転者が死亡

 さる1月29日午前4時25分ごろ、広島県福山市の国道2号で、70歳の会社員が運転する中型トラックが、信号待ちで停車していた大型トラックに追突し、中型トラックの運転者は全身を強く打ち死亡しました。

 現場は見通しのよい片側2車線の交差点で、居眠運転の疑いもあります。

 

■インペアード・パフォーマンスという言葉を知っていますか?

 インペアード・パフォーマンスとは、主に医師や薬剤師が使う言葉で、抗ヒスタミン剤などを含む風邪薬、花粉症薬などを処方したとき、患者が感じる集中力・判断力の低下、あるいは作業効率が低下する現象をさします。

 

 眠気を自覚するとまではいかないのですが、薬の副作用が働いて、100%のパフォーマンスを発揮できない状況に陥り、ミスを起こしやすい状態で、車やフォークリフト等の運転には非常に大きな問題が生じます。

 

 風邪薬や花粉症薬などを服用したときは、眠気を感じていないと思っても、実は、居眠り一歩手前であることが少なくないわけです。

 

 本人は、以前に薬を飲んだとき「運転に問題はなかった」と感じているかもしれませんが、運転時間が長くなったり、風邪の症状などがひどいときは注意が必要です。 


 

■風邪薬だけでなくワクチン接種などにも注意させよう

 また風邪薬・鼻炎薬の服用だでけでなく、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスのワクチン、肺炎球菌ワクチンなどの接種を受けた人も、接種の翌日から2日程度は、眠気や体調悪化を覚えたりすることがあります。

 

 これもまた、一種のインペアード・パフォーマンスですから、軽視すると運転に支障をきたすことがあります。

 

 安全運転管理者、あるいは運送事業の運行管理者は、朝の点呼時に健康観察を行う際に、服薬の有無、前日にワクチン接種などをしていないかなども尋ねて、いつもと違う不調や眠気を感じたときは、すぐに休憩して様子をみるように指導してください。


 ただし、風邪や花粉症の症状がひどい場合も眠気などに襲われる危険がありますので、治療薬の服用は意味があります。

 体調不良の人は運転を避けることがベストですが、薬を服用して業務運転につく場合は、眠気の副作用が弱い薬を処方してもらうとともに、なるべく昼休みの服用は避けるようにさせましょう。

 昼食後の生理的な眠気と薬の副作用が重なると、強い眠気を感じるおそれがあります。

■睡眠は6時間以上が一つの目安

 眠気の原因は体調不良だけでなく、睡眠不足も大きな影響があります。

 全日本トラック協会が作成した「ドライバー睡眠マニュアル」(※)によると、理想の睡眠時間は7時間~8時間とされていますが、睡眠時間は個人差があることも認めていますので、運転者に毎日7時間以上眠りなさいとは、なかなか指導しにくいと思われます。

 

 一方で、5時間以下の睡眠が続けば、過労死になるリスクが高まることが知られていますので、少なくとも6時間以上の睡眠を週に2日以上取りましょう、と推奨しています。

 

 また、3日以上連続して睡眠時間が短い日が続いていると、動作の俊敏性などで顕著な低下という影響が見られます。さらに、睡眠不足を解消しようとして脳の自衛機能が瞬間的な居眠り(マイクロスリープ)を起こすおそれがあり、事故の危険が急速に高まると危険性を指摘しています。


■まず、15分くらいの「短い仮眠」を推奨する

 運転中に眠気が生じたときには、仮眠がとても有効ですが、とりあえず20分以下の短い仮眠をするように指導しましょう。

 20分であれば、実質15分程度の睡眠となりますが、眠気解消効果があります。

 

 これは、「深い眠り」を避けて「浅い眠り」の状態で起きることを示しています。

 20分以上の長い仮眠をしていると、徐々に眠りが深くなり、たとえば40分程度仮眠した後に目覚めると、ぼんやりしてしまいます。

 このまま運転を再開した後、また強い眠気がおそってくることがあり(これは「睡眠慣性」といわれます)、かえって居眠運転を誘発してしまうことがあります。

 

 眠りの姿勢も、完全にベッドで横になるような姿勢ではなく、リクライニング椅子を少し倒して仮眠する方法のほうが、浅い眠りで目覚めやすくなります。 


■疲れが取れない場合は2時間以上の休憩を

 ただし、15分程度の仮眠でスッキリと眠気が解消できる場合はいいのですが、疲労が大きくてとても運転を続けるのは無理だと感じる場合は、思い切って2時間、あるいは3時間以上の仮眠休憩をとることが大切です。

 

 2時間の休憩でも、実質90分~100分くらいの睡眠となりますが、90分以上の睡眠をとると深い眠りが訪れるので、疲労回復効果があります。

 なお、トラックやバスの運転者の場合、3時間以上休むのであれば、分割休息にカウントすることもできます。

 

 つまり、

  • 一時的な眠気解消 → 15分の浅い眠り
  • 疲労の回復 → 90分以上の深い眠り

とわけて考え、上手な休憩をとるように指導しましょう。


■衝突直前の居眠りの実態はマイクロスリープ

 広島大学大学院の塩見利明教授らの研究によると、トラックドライバーの居眠り運転事故直前のドライブレコーダー映像の分析から、衝突直前の運転中の居眠りの実態がマイクロスリープであることを突き止め、その特徴を明らかにしています。

 

 マイクロスリープとは15秒未満の短い睡眠で、すぐに目を開けるため、本人が「眠気がある」とは感じていても、実際に居眠りをしていることに気づいていないケースがほとんどです。このため、マイクロスリープが繰り返される中で、悲惨な追突死亡事故などが発生していると推察されます。

 塩見教授らの研究では、ドライブレコーダー映像からドライバーの行動と車両挙動を同時に1秒ごとに分析したところ、マイクロスリープは居眠り運転事故直前に頻発していました。

 

 眠気に抗う行動として身体を無意識に触ったり叩く行動が見られたり、半眼状態でしばらく走行するような兆候が頻繁に見られます。

 運転中に身体を叩いていたり、目がショボショボして焦点が合わない感じ、標識が意外に速く近づくような自覚があったら、すでにこうしたマイクロスリープ状況に陥っているおそれがあります。


ホーム 運転管理のヒント危機管理意識を高めよう >疲労・居眠運転に注意しましょう

【参考ページ】

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