島崎 敢の安全辞典ー項目14「共助(きょうじょ)」

■はじめに

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 防災の分野では、「自助・共助・公助」という3つの枠組みがよく使われます。

 

 自助は自分で自分を守ること、公助は行政や消防・警察などの公的機関による支援、そして共助は地域やコミュニティで互いに助け合うことを指します。

 

 近年、大規模災害への備えとして共助が特に注目されるようになってきました。その背景には、公助の限界という現実があります。

 

 今回は、なぜ共助が重要なのか、そしてどのように共助の力を育てていけばよいのかについて考えてみたいと思います。

 

■共助とは

 共助とは、地域やコミュニティの中で、住民同士が互いに協力し合い、助け合うことを指します。

 

 災害時においては、近隣住民同士での安否確認や救助活動、避難支援、物資の共有などが共助にあたります。自助が個人や家族単位での対応であるのに対し、共助は地域という少し広い範囲での相互支援です。

 

 そして公助は、行政や消防、警察、自衛隊などの公的機関による組織的な支援を指します。

■安全との関わり

避難所で助け合う住民(共助)
避難所では協力しあう共助が大切

 なぜ共助が必要なのでしょうか。それは、公助のリソースには限界があるからです。

 

 自然災害のエネルギーは非常に大きく、人間の予想をはるかに超えてきます。予想できていたとしても、災害は発生頻度が低いため、その低頻度の事態に対して公助の体制を完璧に整えようとすると、コストがかかりすぎてしまう問題があります。

 

 例えば救急車は、普段の交通事故などコンスタントに発生する事態には対応できますが、災害時には対応しきれません。

 

 これは重要な点で、平時に交通事故で怪我をした人は適切な医療を受けられますが、災害時に怪我をした人はなかなか適切な医療を受けられないという状況が生じるのです。これが公助の限界です。

 

 阪神淡路大震災のデータがこれを明確に示しています。実際に救助隊によって助けられた人はわずか数パーセントで、それ以外の人は自力で脱出したか、近所の人や家族によって救出されています。

 

 つまり、自助と共助の力がかなり使われているのです。したがって、災害時には自分で助かる必要があり、そして自分だけでは限界があるので、共助、つまり地域の力を使わざるを得ません。

 

 共助が素晴らしいという理想論ではなく、そうしなければ私たちは生き延びられないという現実的な話なのです。

 

 特にこれから予想される南海トラフ地震のような広域災害では、局地的な災害のように周囲から公助が入ってくることが期待しにくくなります。

 

 あまりにも被害が広範囲に及ぶため、公助がさらに不足する可能性が高いのです。だからこそ、共助がしっかり機能する必要があります。

 

 共助が力を発揮するのは、救助活動の場面だけではありません。避難所生活が始まると、共助はさらに重要になってきます。避難所では他人同士が共同生活を営むことになりますから、共助がうまくできていないと、その生活はなかなか大変なものになります。

 

 さらに、復興の段階でもコミュニティは大きな意味を持ちます。研究によれば、コミュニティをそのまま維持したまま復興住宅を作った場合と、バラバラにして復興住宅に入居させた場合とでは、住民の健康状態に明らかな差が出ることが示されています。

 

 コミュニティを維持しない場合、住民の健康状態が悪化するのです。

 

 個人差はあると思いますが、人間はもともと共同生活を営んできた動物です。普段の平和なときは一人でも問題ないかもしれませんが、極限状態に陥ったときには、人とのつながりが意外と大事になってきます。

■事例と実践

イザという時の共助には普段の地域住民の交流が重要
地域のコミュニケーションで共助の輪が広がる

 共助が機能するためには、コミュニティの強さ、つまり日頃からの信頼関係が大切です。しかし、ここで「防災、防災」と言いすぎないほうがよいかもしれません。

 

 というのも、防災は人によっては面倒なことと感じられがちです。しかし、共助の力を育てるには、防災だけに特化する必要はないのです。

 

 単に地域の人が顔見知りで、「ここにこういう人が住んでいるな」とわかっていたり、助け合おうという気持ちがあれば十分です。お祭りをやってもいいし、飲み会を開いてもいい。とにかく仲良くなっておくことが、実はとても大切なのです。

 

 実際に、地方での事例ですが、地震で倒壊があったとき、どのおばあちゃんがどこの部屋で寝ているかという情報があったため、屋根を切って迅速に救出できたという事例もあります。

 

 防災というものは、普段使いのものでないとうまく機能しない問題があります。普段使っていない、災害時のためだけに置いてある食料や発電機は、いざというときに期限が切れていたり、エンジンがかからなかったりすることが起きがちです。

 

 防災訓練を企画として行うことも悪くはありませんが、防災防災とあえて言いすぎなくても、普段からの挨拶や交流が実は防災につながっているのだという気持ちを持ってもらえると、割と気軽に取り組めるのではないでしょうか。

 

 ただし、時代の流れで社会はだんだん個別化しています。個人情報保護という考え方も必要ではありますが、これと共助は実は相性が悪い面があります。

 

 あまり個人情報を知られることに抵抗がある人が増えていますが、共助というのは割と個人情報がある程度共有されている世界です。

 

 個人情報が漏れすぎると、災害以外の平時における犯罪の問題なども出てきます。このバランスをどう取るかに正解があるわけではありませんが、それぞれの人が自分のリスクをどちらに置くか、よく考えて適切に判断していく必要があるでしょう。

 

 とにかく、自助・共助・公助という3つの力がバランスよく機能することが必要です。

 

 公助が届くまでの間を共助で、という言い方もありますが、広域災害ではその公助自体が十分に届かない可能性もあります。だからこそ、信頼関係に基づいた共助がしっかり機能する必要があるのです。

 

 面倒だなと思う人もいるかもしれませんが、少しだけ挨拶をしてみるとか、ちょっとした一歩ずつでもいいのです。

 

 地域でつながりたい人同士でつながっておく、行きつけの店を作る、そんなことでもいいのです。いろいろなところでいろいろな人と仲良くなっておくことが、実は防災につながっていく。

 

 ぜひそんな意識を持って、日常の関わりを大切にしていただければと思います。

 

執筆:島崎 敢 近畿大学准教授

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