過積載が死亡事故に結びついたと認定 - 人と車の安全な移動をデザインするシンク出版株式会社

過積載が死亡事故に結びついたと認定された裁判例

過積載車両が後退して死亡事故

 コンビニエンスストアの駐車場でバックしていたトラックがアルバイトの学生を店舗の壁との間に挟んで死亡させる事故が発生しました。

 

 この事故について、トラックが過積載であったため衝突エネルギーが大きくなり死亡事故につながったと認定した裁判例を紹介します。

 

【事故の状況】

 平成24年3月29日午前5時38分ごろ、京都府綴喜郡にあるコンビニ店の駐車場で、運転者のAは中型トラックに最大積載量を3.4倍を超える荷物を積んで駐車スペースにバックで入ろうとしました。

 

 ところが、トラックは車止めを超えて進行してしまい後方で清掃をしていたアルバイト学生(19歳)と衝突、学生はトラックと店舗壁との間に挟まれて、多発外傷、肝損傷、肺挫傷の傷害を負い死亡しました。

 

 亡くなった学生の父親は、Aが最大積載量 2.4トンの車両に8トンを超える荷物を積んでいたため、後退スピードが速まり衝突エネルギーも大きくなっており、過積載でなければ死亡していなかった可能性があると主張しました。

 

 これに対して、裁判所は次のように述べて、トラックの過積載と被害者の死亡との相当因果関係を認めました。 

過積載は死亡事故になりやすい

【裁判所の判断】

「衝突により受ける衝撃は質量に比例するところ、この事故により被害者には過積載でなかった場合に比べて1.55倍の衝撃が加わったとすることができる」

 

「証拠によれば、過積載でなかった場合に比べて1.55倍の衝撃を受けてなお、胸部に明らかな多発肋骨骨折は認められず、腹部に明らかな骨盤骨折は認められず、即死状態でなかったことが認められる」

 

「したがって、過積載でなければ実際より肝損害や肺挫傷が軽度にとどまり、外科的に止血が可能となり、死亡を回避できた可能性を否定できない」

として、過積載と死亡との間に相当因果関係がある認定しました。

 

 さらに、運転者Aに過積載運行を指示していた会社と会社代表者についても連帯責任を認め、約8,800万円の損害賠償を命じました。

 

(京都地裁 平成27年3月9日判決)

 ※判決文等は「交通事故民事裁判例集 第48巻 第2号」346~357頁より引用しました。

この裁判例は、事故防止メルマガ「Think」/Vol.150にも掲載しました。

【教 訓】

過積載のため様々なリスクが増大する

  

 自動車の重量が重くなると、運動エネルギーが増加し様々な影響が現れます。

 

 カーブでの遠心力なども重量に比例し、路外逸脱や横転の原因となります。

 

 下り坂ではスピードが出やすくなり、制動距離も長くなり、坂道の先の交差点などで止まれずに追突する事故が起こります。

 

 また、衝突した時の衝撃力も重量に比例しますので、事例のような死亡・重大事故に結びつきやすくなります。

 

トラックの過積載の反則金等

過積載の割合が5割未満(中・大型トラック)
違反点数

2点(酒気帯び14点)  

反則金 3万円
過積載の割合が5~10割(中・大型トラック)
違反点数

3点(酒気帯び15点)  

反則金 4万円
過積載の割合が10割以上(中・大型トラック)
違反点数

6点(酒気帯び16点)

反則金 なし(罰則のみ)
罰 則

6月以下の懲役または10万円

以下の罰金


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