あおり運転の取締りが強化されています

■他車を恐怖に陥れる運転として、厳罰化もすすむ見込みです

自転車の「ながら運転」が危険

 

 このほど警察庁が公表した2019年中の交通違反取締り状況によると、1年間に道路交通法違反で摘発された案件のうち、前方の車と距離を詰めすぎるなどの車間距離保持義務違反の摘発件数が、1万5065件(このうち高速道路が1万3787件)にのぼっていることが明らかになりました。

 

 2017年に東名高速道路であおり運転に起因した悲惨な死亡事故が発生して社会問題化したことなどを受けて、警察庁が取締りを強化した結果です。2017年の 6,139件と比べて、2.11倍に増えています。

 

 なお、車間距離保持義務違反などの「あおり運転」で摘発後、危険運転致死傷罪(妨害目的)を適用したケースは全体のうち33件でした(2018年と比べて8件増)。

 また、その他の刑法適用が44件で(同15件増)、内訳は暴行罪34件、傷害罪7件、威力業務妨害2件、強要1件となっています。

 これらの事実に注目し、運転者への指導を強化してください。

■こんなあおり運転の責任が問われています

事故はなくても、「あおり」違反等で懲役刑の判決

スマホながら運転追突事故

 さる2019年4月17日、福島地裁は「あおり運転」をした53歳の男性に対して「被害者の恐怖は計り知れないし、重大な事故を起こしかねない」などとして懲役1年6か月(執行猶予4年)の有罪判決を言い渡しました。

 

 男性は2019年2月に福島市内で酒気帯び運転をしながら刃物を振り回して、前の車を威嚇したとして警察に逮捕され、暴力行為等処罰法違反と道交法違反に問われていました。

 

 酒気帯び運転などの道路交通法違反をした運転者は、実際の交通事故に結びつかなかった場合、主に罰金刑を受けます。

 しかし、あおり運転は他の運転者に与える恐怖感情が大きいとして、検察は厳しい求刑をする傾向にあり、この違反例でも執行猶予がついたとはいえ懲役刑の判決がくだされています。

 

 男性が反省し被害者との示談も済んでいたので執行猶予が加えられたと考えられますが、あおり運転を繰り返す恐れのある危険な運転者とみなされていたら、実刑判決が下っていたかもしれません。 

「あおり運転」行為を道路交通法のなかで明確に規定 → 道路交通法改正案

 現在、あおり運転行為は車間距離不保持などを理由に摘発されていますが、警察庁では、これを悪質な道路交通法違反として明確に規定する方針です。

 現在、道路交通法の改正案が検討されていて、

 

 ●他の車両の通行を妨害する目的で

 ●車間距離を詰める

 ●急ブレーキをかける

 ●割り込む

 

などの一定の違反をする行為を「あおり運転」として、3年以下の懲役または50万円以下の罰金とするなど、通常の道路交通法違反に比べて極めて厳しい罰則を科すことをめざしています。

 

 また、 高速道路の本線上で相手の車を停止させたり、一般道路であっても物損事故を起こさせるなどの著しい危険を生じさせた場合は、より重い5年以下の懲役または100万円以下の罰金とする方向で検討しています。

  最近、あおり運転行為に対して検察がよく適用している刑法の暴行罪(2年以下の懲役など)よりも重くなっています。

 

 また、あおり運転行為が免許の取消し処分の対象に含まれるようになります。

 

(※編集部注/2020年の通常国会で審議されて改正法が成立し、2020年6月30日施行されます)

一部のあおり運転行為は「危険運転致死傷罪」に含まれることに

■「他車の前方で妨害目的で停止する行為」なども危険運転の構成要件となる

自転車交通事故の刑事責任

 なお、現状ではあおり運転で交通事故を起こした場合、過失運転致死傷罪が適用されることが多いため、うっかりミスによる事故と同じような量刑になり、被害者の無念の思いを晴らすことはなかなか難しいのが実態となっています。

 

 そこで法務省も、道路交通法の改正とは別に「危険運転致死傷罪」の構成要件を拡大することを目指しています。

 高速道路などで通行を妨害する目的をもって走行中の他車の前方で停止したり、著しく接近したりして停止・徐行させる行為などが事故を起こした場合は危険運転の類型として規定に加える方針です。

 

 同省では、自動車運転死傷行為処罰法の改正案を国会に提出、衆議院で審議されています。

 

 危険運転の罰則は最高で懲役20年です。この改正刑法案が成立すれば「あおり運転」をする運転者が厳罰で裁かれるようになります。

 運転者に対しては、くれぐれも運転中にイライラしたり他の運転者の行動にカッとすることがあっても、決して感情的にならないように自分をコントロールすることの重要性を指導しましょう。

 

(※編集部注/2020年6月5日に国会で可決して成立。月2日に施行されます)

他車を妨害する目的で前方で停止する

 ●現行は、過失運転致死傷

高速道路で著しく接近したりして停止・徐行させる

 ●現行は、過失運転致死傷

 

 

 →  危険運転致死傷罪に該当


【参考】

 ・改正道交法 「あおり運転」を厳罰化─2020.6.30施行(最近の法令改正)

 ・改正道路交通法が施行されます(自動運転関連)─2020年4月1日施行(最近の法令改正)

 ・あおり運転などの交通トラブルに対する対処は?(安全管理法律相談)

 ・「ながら運転」の厳罰化を周知していますか危機管理意識を高めよう

 ・危険性帯有者の処分について指導していますか危機管理意識を高めよう

 ・あおり運転で「殺人罪」などの判決(交通事故の判例ファイル)

 ・「あおり運転の車に賠償請求権なし」とした裁判例(交通事故の判例ファイル)

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10月16日(水)

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