危険防止措置、安全教育は万全ですか?

■自動車やフォークリフト等に関連する労働災害を防ごう

 4月から新入社員や転勤で新たに配属される従業員を迎えます。労災事故を防ぐために、各事業者では雇入れ時における安全衛生教育の準備を進めていると思います。

 

 労働災害というと、建設業での転落事故や工場での爆発事故などが思い起こされますが、構内で自動車や運搬機械に関連して事故が発生したり通勤時に交通災害にあう場合も労災となります。

 通勤災害では通常は事業者の過失がない場合がほとんどですが、今回は、自動車に関連した労働災害のなかで、事業者がしっかりと安全衛生教育や危険防止措置をしていなかったケースを考えてみましょう。

 

 こうした事故では、労働安全衛生法違反で事業者や管理者が書類送検されたり、安全配慮義務違反を認定されて損害賠償義務を負う場合があります。

■トラックの荷降ろし作業で災害が発生しやすい

安全教育の不徹底が影響している

 物流業や産業廃棄物運搬業など、あるいは製造業であっても、重たい製品・原材料などを従業員が扱う場合、事故が発生しやすいのはトラックからの荷卸し・荷積み時の作業です。

 

 こうした作業現場では、建設現場と同様に作業を監督する人を現場に配置し、作業計画に沿って事故防止の配慮をすべきですが、実際には運転者や助手などが独断で作業を進めてしまうことが少なくありません。

 安全教育が不徹底なために、事故が発生するケースがみられます。

 以下のポイントを指導しましょう。 

  • 荷台に上がって作業する場合は、必ずヘルメットを着用させる
  • 飼料搬出入や液体搭載のための高所作業時は転落防止措置とハーネス安全帯着用を徹底
  • 重量物の運び入れにはパワーリフトなどの使用をルール化する
  • テールゲートリフターを安全に使用するための指導を行う
  • 玉掛けによる重量物積載等では、事前に技能講習を実施する

■こんな事故が起こっています

トラックから落ちた廃材で圧死

古紙廃材で作業者が圧死

 

 2022年1月22日午前9時50分ごろ、埼玉県川越市にあるリサイクルセンターで大型トラックから廃材を荷下ろしするためトラック後部扉を開けたところ、重さ440㎏の古紙塊1個が落下し、作業員の男性(63歳)が下敷きになって死亡しました。

 

 同僚の従業員が事故に気付いて119番しましたが、男性は搬送先の病院で約1時間半後に死亡が確認されました。

 

 警察署によると、落下したのは古紙を圧縮した塊で、大きさは縦1.7m、横0.9m、高さ約1mありました。

トラックからの鉄骨下敷き

運転者が1.5トンの鉄骨の下敷きに

 

 2022年10月24日午後3時7分ごろ、石川県白山市の鉄工所で鉄骨をトラックの荷台に載せる作業をしていた50代の男性が、落ちてきた鉄骨の下敷きになり、外傷性ショックにより死亡しました。

 

 当時は複数の作業員でクレーンを使って重さおよそ1.5トンの鉄骨をトラックに載せる作業をしていました。

 

 作業員の男性が荷台に乗せ終わった鉄骨にくくりつけられたワイヤーを外し、別の作業員がクレーンを引き上げたところ、外しきれなかったワイヤーが引っかかり、鉄骨が落ちたとみられています。

■フォークリフトの事故も死亡災害に結びつきやすい

フォークリフト災害防止

 フォークリフトはあらゆる現場で活用されていますが、非常に車両重要が重たい機械です。

 積載量1トンのバッテーリーフォークリフトで2.5トンの車両重量があり、3トン積みであれば4.7トンと予想外に重いのです。

 

 この重さの車両が人に当たると、低速でも少し足などに接触しただけで、骨折など重傷を負うことがあります。また、旋回中に巻き込まれたりバックで衝突されると死亡事故に結びつきます。

 

 ですから、フォークリフトの運転者に対しては所定の運転技能講習が重要になってきますが、運転しない従業員に対しても作業中のリフトとの事故に遭わないように、安全教育と事故防止措置が非常に重要です。 

■こんな事故が起こっています

構内フォークリフトで女性従業員が死亡

構内フォークリフト事故で

工場長を書類送検

 2023年1月23日、埼玉県の春日部労働基準監督署は、労働安全衛生法違反の疑いで東京都港区の塗装等製造業と同社越谷工場の50代の工場長をさいたま地検に書類送検しました。

 送検の容疑は、2022年2月3日に越谷市の工場内で、フォークリフトと労働者の接触防止措置を怠った疑いです。

 

 同労基署によると、従業員の男性が運転するフォークリフトが右折後、左側から歩いてきた60代の女性従業員と接触し、転倒した女性をひきました。女性は搬送先の病院で死亡が確認されました。

 フォークリフトは塗料を入れるための空き容器を運んでいたところでした。

 労働安全衛生法では、フォークリフトを運行する場合は誘導者を配置したり、フォークリフトと労働者の通路を分けたりする接触防止措置が義務づけられていますが、同工場では接触防止措置が不十分だったことが違反の理由です。

 

■カゴ車などによる貨物移動時の事故にも注意

ロールボックスパレット災害

 構内での移送作業等で、「ロールボックスパレット」を活用している事業所が多いと思われます。

 カゴ車(しゃ)とも呼ばれる人力運搬機で、広く使用されています。

 

 便利なロールボックスパレットですが、傾斜になった場所でパレットが転倒して運転者が下敷きになったり、パレットの車輪に足をひかれる、持ち手がないのでヘリを持っていて狭い通路等で壁との間で手をはさまれるといった労働災害が多く発生しています。

 

 とくに、高さ2メートル以上のパレットに飲料水などを満載すると、総重量が 500~600kgにも達して重心が高くなり、視界が遮られた状態で動かすため危険が大きくなります。 

■こんな事故が起こっています

ロールボックスパレットで足を負傷

ロールボックスパレットの災害隠しで

物流業者を書類送検

 2019年6月17日、富山県の砺波労働基準監督署は、労働安全衛生法違反の疑いで愛知県の物流・倉庫業者と同社の富山営業所所長を富山地検高岡支部に書類送検しました。

 

 同社送検の容疑は、2018年3月ロールボックスパレットの転倒事故を起こしながら、労基署が指導するまで報告を怠っていた疑いです。災害発生からほぼ1年が経過した平成31年=2019年=3月になって、報告書を提出しています。

 

 同労基署によると事故は荷主の庭先で発生し、被災した労働者がロールボックスパレットを使って荷卸し作業をしていた際、パレット車が倒れて左足を挟み負傷、4日以上休業する労働災害が発生していました。

 しかし、事故を軽視した同社が報告をしていなかったものです。

【参考】

ロールボックスパレット使用時の労働災害防止

ロールボックスパレットの

労働災害防止マニュアル

 ロールボックスパレット災害防止に活用するためのリーフレットとして、厚生労働省及び独立行政法人労働安全衛生総合研究所が『ロールボックスパレット使用時の労働災害防止マニュアル 安全に作業するための8つのルール』を作成しています。

 以下のような内容です。 

  • 段差、傾斜のある場所での危険
  • 作業服・靴・保護具など
  • 基本操作「押し」「引き」「よこ押し」
  • 複数人での取扱い
  • 基本的な積み方
  • 折りたたみの危険
  • テールゲートリフターでの取扱い

 このマニュアルは、厚生労働省のwebサイトからダウンロードできます。

 雇入れ時の教育などに活用しましょう。


■ロールボックスパレットの改良提案

 ロールボックスパレット本体としても、安全性を配慮したものが望まれているため、労働安全衛生総合研究所が、ロールボックスパレットを安全なものに改良すべく、一般社団法人日本パレット協会と協力して、安全性向上のための3ポイントに焦点を当てた「ロールボックスパレット改良モデル」を製作しています。

 こうしたモデル提案を参考に、自社でも改良できるポイントは改良して、作業時の安全性を向上させていきましょう。

 詳しくは、同研究所のWEBサイト 「改良しましょうロールボックスパレット3つのポイントを提案します!」を参照してください。

■新入社員や転勤者などへの教育体制を構築しましょう

次の項目をチェックしておきましょう。

2023年度の安全教育体制について はい いいえ
1. 新入社員に対する安全衛生教育のスケジュールが確定している

 ハイ 

 イイエ

2. 転勤の従業員、新たに配置された従業員への教育計画を立てている

 ハイ

イイエ

3. 作業靴は作業に適したものを支給し、定期的に点検している

 ハイ

 イイエ

4. フォークリフトなどを使用する従業員への特別教育計画を立てている

 ハイ

 イイエ

5. 再雇用した高齢者従業員への安全衛生教育の計画を立てている

 ハイ

 イイエ

6. 非正規、臨時採用・アルバイト従業員への安全衛生教育を実施している

 ハイ

 イイエ

7. 転倒防止のための従業員教育計画を立てている

 ハイ

 イイエ

8. 転倒防止の標示、転倒事故が起こりやすい場所のマップを作成している

 ハイ

 イイエ 

9. ヒヤリ・ハット体験に基づき構内事故の起こりやすい状況を示している

 ハイ

 イイエ

10. 労働災害防止のため、昨年度の安全措置の反省をしている

 ハイ

 イイエ

参考/雇入れ時の教育(労働安全衛生規則第35条)

 労働安全衛生法第59条、労働安全衛生規則第35条により、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対してその従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行うことが定められています。

  1. 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
  2. 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。 
  3. 作業手順に関すること。 
  4. 作業開始時の点検に関すること。 
  5. 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。 
  6. 整理、整頓及び清潔の保持に関すること。 
  7. 事故時等における応急措置及び退避に関すること。 
  8. 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項 
  9. パートタイマー及びアルバイトなど短時間労働者に対しても以上の安全衛生教育を実施する必要があります。
 ※事務仕事が中心となる業種などについては 1.~4. は省略してもよいこととなっています。

当サイト参考記事

 

 ◆フォークリフトの用途外使用を見逃していませんか?(危機管理意識を高めよう)

 新入社員への構内事故防止指導を徹底危機管理意識を高めよう

 構内バック事故に注意を促そう危機管理意識を高めよう

 構内事故の過失責任を意識していますか危機管理意識を高めよう

 フォークリフトの用途外使用は危険 (危機管理意識を高めよう

 ◆フォークリフトの路上作業について教えて下さい(安全管理法律相談)

ホーム 運転管理のヒント危機管理意識を高めよう >危険防止措置、安全教育は万全ですか?

■トラック事業者のためのバック事故防止実技講習ノート

 本冊子は、大阪香里自動車教習所で実際に行われているバック事故防止講習を、各事業所でも実施できるように解説した実技講習ノートです。

  管理者が本冊子に沿って講習を実施することで、

 

・運転する車の大きさを正確に知る

・あいまいな車両感覚を正確なものにする

・車は急には止まらない

 

といった運転の基本をドライバーに再確認させることができ、バック事故を始めとしたさまざまなトラックの交通事故防止に役立てていただくことができます。

 

【詳しくはこちら】

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12月10日(火)

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