改正後の改善基準告示に違反している事業所に罰則は?

改正後の改善基準告示に違反,清水伸賢,WILL法律事務所

2024年より貨物運送事業者に対する改善基準告示が改正され、弊社ではしっかりと遵守しています。しかしながら事業者の中には運転者の労働時間が大幅に減少し、収入も低下してしまうため、不満をもつドライバーもいると聞きました。また、事業所も売上が低下するため事業継続が困難とも耳にします。しかし改善基準告示に違反をすることは許されないと思うのですが、違反をすると、どのようなペナルティがありますか?

■改善基準告示の改正

 いわゆる改善基準告示は、正式には自動車運転者の労働時間等の改善のための基準という厚生労働大臣告示であり、令和4年厚生労働省告示第367号「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準の一部を改正する件」により、令和4年12月23日に改正され、令和6年(2024年)4月1日から適用されています。

 

 

 その主な改正内容は、以前(2023年4月)述べましたが、貨物自動車運送事業に関する改正点をあらためて簡単に確認しておきます。

■改善基準告示の改正内容

清水伸賢,WILL法律事務所

改善基準告示の改正内容

 改善基準告示の改正は、いわゆる働き方改革に伴い、労働者の労働条件についての基準を定めるものであり、自動車運転者の長時間労働を防ぐ趣旨のものです。

 

(1)使用者等の留意事項(第1条3項)

 労働者の労働時間を臨時に延長し、あるいは休日労働させる場合には、労使当事者ともに必要最小限にすべく努め、また労働基準法の限度時間の規定等について十分留意しなければならないとされています。

 

(2)拘束時間(第4条1項1号、2号)

 労働者の拘束時間を短縮し1ヶ月284時間を超えず、かつ1年について3300時間を超えないものとするとされました(労使協定があれば年6ヶ月まで、月310時間まで、かつ年3400時間まで延長できるとされていますが、月284時間の拘束時間を超える月が3ヶ月を超えて連続してはならず、かつ月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が100時間未満となるよう務めるとされています)。

 

(3)1日の拘束時間(第4条1項3号、4号)

 1日の拘束時間は、13時間を超えないものとし、延長する場合最大15時間が原則とされます。

 なお運転者の週の運行が全て長距離貨物運送で、1運行における休息期間が運転者の住所地以外の場所の場合、週2回に限り最大拘束時間を16時間とすることができるとされています(ただしその場合でも、1日14時間を超える回数を出来るだけ少なくするよう努めるものとされます)。

改善基準告示の改正内容

(4)休息時間(第4条1項5号)

 休息時間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう務めることを基本とし、継続9時間を下回らないとされました(ただし前項の週運送が全て長距離貨物運送等の場合、週2回に限り継続8時間とすることができ、その代わり、1つの運行が終わったら、継続12時間以上の休息時間を与えることになっています)。

 

(5)運転時間(第4条1項6号、7号、8号)

 運転時間自体については、2日を平均し1日当たり9時間、2週間を平均し1週間当たり44時間、連続運転時間は4時間を超えないものとされるのは変わりません。

 

 しかし、高速道路等のサービスエリアやパーキングエリア等に駐車できないためやむをえず連続運転時間が4時間を超える場合には、4時間30分まで延長することができるとされています。

 

(6)その他の時間に関する改定、例外規定

 上記の他、予期し得ない事象への対応時間を拘束時間や運転時間から除くことができる旨が定められました(第4条3項)。

 

 また拘束時間や休息時間について、改定前には厚生労働省労働基準局長の定めるところにより例外が認められていたところを、具体的に告示に記載されています(第4条4項)。

 

※改正前と改正後の改善基準告示の比較はこちら(トラック運転者の改善基準告示<厚生労働省>)

https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice

■違反行為に対するペナルティ

改善基準告示違反に対するペナルティ,違反

 このように改善基準告示の改正はさらに労働者の労働条件の改善を図ったものですが、元々運送業界については長時間労働や残業等、過酷ともいえる労働条件によって成り立ってきていた面もあります。

 

 同改正により、勤務時間の減少に伴いドライバー自身の収入が減ったり、運送コストの増大により事業所の利益も低下したりするような状況が生じているといわれることもあります。

 

 そのため、事業主等によっては、未だに改正された改善基準告示に沿わない業務形態が継続していることもあるかもしれません。

 

 この点、改善基準告示は法律ではなく、その規定自体具体的義務を負わすものではない言い回しがされている点もあり、また罰則が定められているものではありません。

 

 そのため、違反した場合に直ちに刑事処罰の対象になることはないといえます。

 

 しかし、その違反態様が労働基準法等の定めに反するような場合には、当然同法違反になりますので、労働基準監督署から是正勧告や指導を受ける可能性はありますし、これらに従わなかった場合には、罰則が科される可能性もあります。

 

 また、同告示は厚生労働省告示だけではなく、国土交通省告示にもなっており、違反する場合には、行政処分として車両停止や事業停止などの行政処分を受けることがあります。

 

 そして、その態様が貨物自動車運送事業法等の罰則規定などに反するような場合には、その点で罰則が適用される可能性があります。

 

 さらに、事実上のペナルティとして、企業の社会的信用ないし評価の低下が考えられます。そうなると取引や人材確保に具体的な悪影響が生じるおそれも否定できません。

 

 加えて、交通事故やその他の労働災害が生じないようにするためには、同告示を遵守して事業を継続出来るような体制を整えることが必要であるといえます。すなわち、改善基準告示に違反すること自体がリスクであると言えるでしょう。

改善基準告示を遵守するメリット

執筆 清水伸賢弁護士

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