このコーナーでは、管理者や運転者が知っておきたい交通事故の裁判事例について、わかりやすく紹介しています。
◆速度超過したクルーズコントロール設定は、過失相殺の対象になる(2023年5月16日更新)
◆車両譲渡手続きの不備で、運行供用者責任を問われた例(2023年4月19日更新)
◆スマートフォンの運転中利用事故は重罰(2020年9月1日更新)
◆運転者から企業への事故の逆求償を認める(2020年4月2日更新)
◆あおり運転で「殺人罪」などの判決(2019年4月1日更新)
◆「ながらスマホ」の死亡事故に求刑を上回る判決(2019年2月1日更新)
◆健康起因事故の賠償責任を否定した裁判例(2018年11月1日更新)
◆「あおり運転の車に賠償請求権なし」とした裁判例(2018年9月3日更新)
◆ひき逃げは、重大な犯罪として追及されます!(2018年7月25日更新)
◆運転者に賠償額の求償をした裁判例(2018年7月2日更新)
◆過積載が死亡事故に結びついたと認定された裁判例(2018年5月1日更新)
※当サイトに掲載した交通事故の裁判事例情報は → こちらのページを参照
2023年
5月
16日
火
今回は、高速道路上において、先行していた車の荷台に積まれていた角材が落下し、後続車に向かって飛来してきて衝突した事故についての裁判事例を紹介します。
後続車が制限速度を超える速度でクルーズコントロールを使用していた行為が過失相殺の対象になるかが争われました。
【事故の状況】
平成26年(2014年)7月3日午前9時40分ごろ、埼玉県狭山市の高速道路を走行していた貨物自動車Aの荷台に積まれていた角材が荷台から落下して、後続車両である普通自動車Bに向かって飛来し、角材は道路で一度バウンドしたあとB車の正面付近に衝突しました。
この事故で、Bは角材との衝突を避けるためにブレーキをかけようとした際に、ブレーキペダルに足が接触して右母指末節骨骨折、右足関節捻挫等の傷害を負いました。
Aは、Bがクルーズコントロールを制限速度を超える時速90キロメートルに設定していたことは不適切であり、また、右足を裸足でブレーキペダルの右下付近の床に置いていたことも損害の拡大に影響しているとして、相当割合に従い過失相殺をすべきであると主張しました。
一方Bは、高速道路をA車もB車も時速90キロ程度で走行していたのであるから、クルーズコントロールを時速90キロに設定したことは過失相殺の対象とならないし、また、Bが裸足で運転していたことは事故の発生とは無関係であると反論しました。
【裁判所の判断】
裁判官は、
「運転者は、クルーズコントロールが設置されている車両においてこれを使用する場合には、制限速度を超えない範囲での速度に設定することが求められているというべきである」
「また、Bは裸足であったことが認められるところ、それがBの損害の拡大に影響していることは否定できない」
などとして、20%の過失相殺を行うことが相当であると認めました。
(横浜地裁 令和4年4月28日判決)
【教訓】
オートクルーズコントロール装置を使用する場合も、制限速度を守るということが運転者の義務となりますので、速度超過は過失相殺の対象となります。また安全装置を過信して、裸足などで運転することのないように気をつけましょう。
この裁判例は、事故防止メルマガ「Think」/Vol.277にも掲載しました